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INTERVIEW

Japanese

本棚のモヨコ

2014年11月号掲載

本棚のモヨコ

Member:森 脩平 (Vo/Gt) 今野 (Gt/Cho) みどりちゃん (Dr/Cho) ゆちよ (Vo/Key) 宗詩郎 (Ba/Cho)

Interviewer:天野 史彬

-なるほど。先ほどゆちよさんの口からも少し出ましたけど、今回のアルバムにはコンセプトがあったんですよね。具体的に、どんな物語を描こうと思ったんですか?

森:このアルバムは、朝から夜にいって、また朝に戻ってくるっていうコンセプトで作ったんですけど、それはもともとやりたいなって思ってたんです。"おはよう"で始まって"おやすみ"で終わる――こういう流れを考えてたときに、昔の曲とかも並べていくと、奇跡的に綺麗に12曲ハマッたんですよね。......僕はすごく暗いし、気分的にはどんどん落ちていくタイプなんですけど、何故かポジティヴで。いつかは絶対上手くいくと思ってるんですよ。"今日は最悪だけど、明日はいいことあるよな"っていうポジティヴさでいつも生きてるんですけど、このアルバムも、そういうものになったかと思います。

-実際、最後の「朝色」が終わった瞬間はすごく清々しいというか......ポジティヴなフィーリングを残す終わりかたですよね。

森:落ちて落ちて落ちて、でも最終的に希望を見せたかったんですよね。なので「朝色」は、明るくなる直前の感じというか。僕、朝がすごく好きなんですよ。それは、そこから何があるかわからないからなんですよね。嫌なこともいっぱいあるかもしれないけど、いいこともいっぱいあるかもしれない。だからこのアルバムも、"いいことがあるかもしれないぞ"っていうところで終わらせたかったんです。

-なるほど。アルバム・タイトルの『TOMORROW NEVER KNOWS』にも、"明日はいいことがあるかもしれない"っていう含みがあるわけですね。

森:そうです、はい。

-では、「朝色」に辿り着くまでのアルバムの出発点であるTrack.1「新世界ようこそ」はどのような想いで作った曲なんですか? この曲には、目覚めていくような感覚と夢の中に沈んでいくような感覚の、その両方が描かれていると思うんですよ。

森:「新世界ようこそ」は、僕らの中でも始まりの曲としてあって。この5人のメンバーが集まって最初に作ったのがこの曲なんですね。なので3年前ぐらいの曲なんですけど、そのときには自然と、歌詞の出だしは"おはよう"だったので、いろんな意味で、"この先どうなるかわからない"っていう想いが入ってるのかもしれないですね。この曲は、タイトルにもいろんな考えがあって。これはメンバーにも言ってないんですけど、普通なら"新世界へようこそ"になると思うんですよ。メンバーでさえ、いまだに"新世界へようこそ"って書いたりするんですけど(笑)、でも、この曲はあくまで"新世界ようこそ"で。僕の方から、新世界――つまり、これから何が起こるかわからない世界を迎え入れてやるよっていう気持ちで書いたんです。新世界より上から目線で、「新世界ようこそ」って書きました。

-森さんは一貫してポジティヴというか......何が起こるかわからない世界を楽しむ気持ちと、"自分は人に何かを見せれるんだ"っていう自信があるんですね。

森:あります。絶対成功すると思ってるんで。その分、失敗したときはすごい落ち込むんですけど......でも、最後には全部上手くいくと思ってます。そこに根拠はないんですけど。

-さっきの"夢"という言葉の話もそうですけど、例えばドリーム・ポップやシューゲイザーというジャンルに区分される音楽や、あるいは"ドリーミー"とか"夢見心地"とか、そういう形容をされる音楽っていうのは、往々にして逃避的な側面を持っていると思うんですよ。でも、本棚のモヨコの音楽は"夢"という言葉を多用しながらも、決して逃避的な音楽ではないですよね。森さんはコミュニケーション願望も強いし、どれだけ現実と違う世界を描いても、あくまでそれで現実を突き刺していくというか。

森:はい。地に足は着いていたいというか......逃避はしたくないんですよ。逃げたくない。もちろんシューゲイザーみたいな音楽は好きだし、自分が逃避するためには聴くんですけど(笑)。でも僕が曲を作るなら、生活とも夢ともどっちとも関わっていたいんです。現実と夢と、その間の行き来をしたいなと思ってますね。......それに、寝てみる夢っていうのは、夜を描いた曲に反映されてると思うんですけど、ただそれと同時に僕にとっての夢は朝と同じように希望でもあって。夢を叶えるっていう目標があると、頑張れるんですよね。いつか叶うって、僕は昔から信じ込んでいるので。夢と朝っていうのは、僕の中では同じなのかもしれないです。

-わかりました。最後にみなさんに伺いたいんですけど、本棚のモヨコの音楽は聴き手にとってどんな存在であってほしいですか?

ゆちよ:私はどちらかと言えば朝が苦手で。仕事行くのも学校行くのもだるいっていう気持ちがすごく大きくて。そういうときに、好きな音楽を聴いて頑張ろうって思ったりするので、そういう人にモヨコを聴いてもらえたら嬉しいなって思います。

みどりちゃん:最近はライヴでも何人かでワーって盛り上がるものが多いと思うんですけど、モヨコはひとりで聴く人が多いと思うんです。もちろん、ひとりでライヴに行くのは怖いって思う人もいるかもしれないけど、でも、ひとりの人にいっぱい聴いてもらいたい。たくさんのひとりの人に聴いてもらいたいですね。

今野:このバンドは心にグサッと刺さるというよりは、じわじわとくるタイプだと思うので、何回も繰り返し聴いてほしいです。

-今言ってくださったような、音楽と聴き手が1対1で向かい合いながら心に沁み込むようにコミュニケーションしていく音楽って、最近は、特にロック・バンドでは少なくなってるのかなって思うんですよ。今はみんなでスポーツ的に盛り上がるものが主流になってるから。

宗詩郎:たしかに今はワイワイ系のバンドが流行ってますよね。でもやっぱり、僕らはそういうのはできないんですよね。それこそコピーやってたころはパンク系をやってましたけど、ワイワイできない僕らがそれをやっても伝わらないのは当たり前で。だからこそ、モヨコのお客さんはひとりで来る人が多いんだと思うし。こういう音楽になったのは、必然だったのかなって思います。

森:単純に、僕らはスポーツできないんですよ(笑)。文系なんです......。でも、僕みたいな人っていっぱいいると思うんですよ。こっそりと聴いて、お気に入りに入れてくれたらと思います。気に入ってくれたら嬉しいですね。