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INTERVIEW

Overseas

BLEACHERS

2014年10月号掲載

BLEACHERS

Member:Jack Antonoff

Interviewer:新谷 洋子

-コラボレーターにはずばり元YAZOOのVince Clarkeが含まれていますが、Vinceとのコラボはいかがでしたか?

もう最高だった! だいたい、そもそものインスピレーション源である人とコラボできるなんて滅多にあることじゃない。それが実現したんだから、大変なことだよ。ほら、最初は独りでスタジオで作業をしていて、"ここはVinceみたいなシンセの音に近付けたいな"とか"ここはVinceっぽいドラムが欲しいな"なんて思う瞬間が度々あって、最終的に"なんならいっそ本物のVince Clarkeを呼ぼう!"って思ったんだ(笑)。で、メールを送ってランチの約束をして、音楽の話をして、どんな音を求めているのか彼に説明して、あとはずっとメールのやりとりで進めた。どの曲もほぼ完成した時点で"ここまで作ってみたんだけど"みたいな感じでVinceに送って、彼がそこに自分のアイデアをプラスして送り返してきたのさ。だから曲に色を添えてくれた程度なんだけどね。

-ほかのコラボレーターはポップの先端を行く人たちで、中でもJohn Hillが主に共同プロデュースにあたっています。彼を起用したのはなぜ?

Johnが手掛けた曲はたいがい好きなんだよ。例えばSANTIGOLDとのコラボ作品とかね。でもそれ以上に分かりやすい理由があって、今回は大勢のプロデューサーと会って、例えば1日一緒にスタジオで過ごして、試しに曲を作ってみたんだ。まあ、だいたいいい結果が生まれるんだけど、否定しようがないほどスリリングだと感じるような相手には、なかなか巡り会えなかった。そしてJohnとやってみたら、自分の頭の中で響いていたサウンドがようやく聴こえたんだよ。スピーカーからそれが鳴っていた。そんな経緯で、彼はこのプロジェクトのパートナーになったのさ。

-ふたりのゲスト・シンガーも両極端で興味深いですが、「I'm Ready To Move On / Wild Heart Reprise」でのYoko Onoとのコラボはどう進めたんですか?具体的に求めているものを伝えたんですか?

ものすごく緩いアイデアを伝えたよ。「I'm Ready To Move On / Wild Heart Reprise」がどういう曲で、どういうフィーリングを想定しているか説明したけど、基本的にはYokoらしくやって欲しかった。っていうか、せっかくYoko Onoとコラボするなら、思い切りYokoになってもらわなくちゃ意味がないよね! 限りなく自分を貫いている人なんだから。彼女はスタジオに来て、スポークン・ワード的なことを試したり、ノイズを立てたり、歌を歌ったり、人間の体から発し得るあらゆる音を出してくれたよ(笑)。そのあと僕は音源を持ち帰って聴き直して、編集し、特にスペシャルだと感じる箇所をピックアップして曲を構築したのさ。

-以前から彼女を知ってたんですか?

いいや。この曲にはYokoに参加してもらいたいと思って、音源を送ってみたら気に入ってくれて、快諾してくれたんだ。実に簡単なことだったよ!

-『Take Me Away』に参加したGRIMESは? どこかに接点がありそうですけど。

うん。彼女とは少し前に出会って、一緒に曲を書いたんだ。特定のプロジェクトのためってわけじゃなくて、試しにね。そういうセッションを幾度かやっていた時にこの曲を聴かせたら、すぐさま彼女が歌い始めて、それをレコーディングしたのさ。だからすごくオーガニックに起きたコラボなんだよ。

-「Take Me Away」は、80年代ではなく最近のエレクトロニック音楽に通ずる音ですね。

そうだね。全体的な路線の延長にあるんだけど、中でも一番実験的かもしれない。

-コラボといえば「I Wanna Get Better」のミュージック・ビデオは、あなたと交際中のLena Dunhamが監督しました。実生活のパートナーとのコラボには長所も短所もあるようですが、あなたたちの場合はいかかでした?

いたって楽しい体験だったよ。そもそも僕にとってビデオの撮影って、すごく奇妙な作業なんだ。僕はミュージシャンだし、映像のプロじゃないから、何が起きているのか実はよく分かっていない。果たしていい結果になるのか、そうじゃないのか(笑)。そんなわけで、自分にとってすごく近しい人と作業をすることで、とても安心できたんだよね。

-ジャケットに使った写真について教えて下さい。何かコンセプトがあったんですか?

あれは、ニュージャージーの実家の姉の部屋で撮ったんだよ。友人と一緒に行って、特にジャケット写真を撮影したかったわけでもなく、ただ実家のあちこちで撮った写真の1枚なんだ。姉は自分の持ち物を全て部屋から運び出したばかりで、マットレスを乗せたベッドがあるのみで、部屋は剥き出しで空っぽだった。で、ベッドのひとつには僕が昔プレゼントした人形が置かれていて、僕はふと飛び乗って寝っ転がって、それを友達が撮影したんだよ。写真からは分からないけど、実はJohn F. Kennedyのブロンズ像を手に握っていた。ほんと、狙いがあったわけでも何でもない。でもあとで写真を見ていたら......何だかこう、外の世界から切り離されていて、例えようのない悲しみを湛えていて、アルバムに収めた曲と同じ場所に属しているように感じたのさ。