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INTERVIEW

Overseas

THE HIVES

 

THE HIVES

Member:Nicholaus Arson (Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

PUNKSPRING 2014、そして単独公演で、じつに5年ぶりとなる来日を果たしたスウェーデンのロックロール5人衆THE HIVES。セルフ・プロデュース作であり、原点回帰的なエネルギーの塊となったアルバム『Lex Hives』(2012)を発表して以降、初めての日本でのライヴ。この日を待ちに待ったファンのボルテージも最高潮の、熱いロックンロール・パーティーとなった。まさにこのライヴ直前の楽屋へお邪魔してのインタビュー......ステージに向け臨戦態勢と思いきや、ものすごくリラックスした、かつサービス精神も満点のNicholaus氏だった。

-前作『Rex Hives』がリリースされてから時間が経っていて、なかなか日本でのライヴの機会もなかったのですが、リリース後はどういう活動をしてきたんですか。

いつも、アルバムを出すと長い間ツアーをするんだけど、今回もほぼノン・ストップでツアーをしてたね。南米では、チリ、ブラジル、アルゼンチンに行ったり、ヨーロッパでは初めてトルコに行ったり。南アフリカにも初めて行ったな。とにかくツアー三昧で。もうライヴにも飽きて、そろそろ新しい曲を作ろうかっていうくらいになるまで、いつもツアーをするんだよ。あとは、今回はアメリカでツアーをしていた時間が長かった。自分たちでのツアーももちろんだけど、いつもと違ったのはP!nkのサポートでアメリカを回ったんだよね。それは大きかったな。

-P!nkとTHE HIVESとは意外な組み合わせですよね。どういうきっかけでツアーに参加したんですか。

すごくよかった、楽しいツアーだったよ。バンドにとってはチャレンジでもあったし、大きなチャンスにもなったからね。P!nkは人気のあるアーティストだから全公演ソールド・アウトだったし、全部で50万人くらいの人の前で演奏することができた。一晩で、1万人以上の人の前で演奏する機会を持てたのも大事だし、それだけの音楽好きの人たちに自分たちの音楽のすばらしさを伝えるのは、やりがいがあったし、THE HIVESを聴いたことがない、THE HIVESを初めて知った人に聴いてもらうってことは、常に感性を研ぎ澄ませてなくてはいけない。バンドにとって、すごくよかったと思うよ。もともとこのツアーは、P!nkからのアイディアで――彼女の旦那さんと娘もTHE HIVESの大ファンらしいんだ。で、最初は8週間のツアーということで受けたんだけど、その後THE HIVESとしての全米ツアーがあって、またその後にもう一度ツアーに参加してくれないかってP!nkからのオファーがあって。結局2回、一緒にツアーをすることになったんだ。

-そういった経験で、自分たちのツアーに還元されたことはありますか。

やっぱり、さっきも言ったけどいつもと違ったオーディエンスの前で演奏することで、自分の感性を研ぎ澄ませておくことは大事だと思った。自分たちのことを好きな人たちの前ばかりでライヴをしてると、慢心してしまったり、なかなか練習をしなくなってしまったりとかもあるかもしれないけど。違うタイプのオーディエンスの前でやることで、謙虚な気持ちになるし、もっと練習しようってなる。あと、今まで自分たちの音楽を知らなかった人が"これがロックンロールなんだ"って、ロックンロールを再発見してくれるのは、最高な気分だね。自分自身も、最高のロックンロールに出会った時は"これがロックンロールだ"って発見して、盛り上がったりする。THE HIVESの音楽に対して、そういう反応をしてくれるのは、ほんと最高な気分だよね。

-『Lex Hives』はセルフ・プロデュースによる作品で、むちゃくちゃエネルギッシュで、原点回帰的なアルバムでもありました。こうした作品を作ったプロセスやモードが、ツアーや演奏する上で活きているっていうことはありますか。

基本的には、どんなアルバムを作ってもライヴに対する姿勢は変わらないんだ。ライヴでは初期衝動というか、ロックンロールを聴いた時のベーシックなリアクションをファンからもらえることを大事にしていて。ただそのなかでも、少しずつ工夫はあるね。例えば、以前に作ったアルバムだと、ロボットとロックンロールの融合とでもいうか、ロボットがロックンロールをやってるようなエレクトロニックなアルバムを作ったこともあったし、『The Black And White Album』(2007)では、トラディショナルな音楽をTHE HIVES風にひねってみたりもして。『Lex Hives』は、初期のアルバムに戻ったようなカミング・ホーム・パーティー、同窓会っていう感覚で。たしかに原点回帰ではあるけど、完全に原点回帰するには自分たちは好奇心がありすぎるから、半分くらい元に戻ったって感じかな。ベーシックな部分はロックロールであり、パンクなんだけど、例えば「Go Right Ahead」はグラム風だったりとか、「Wait A Minute」はポップスに近かったり、「My Time Is Coming」は、もとはカントリーだったんだけど、アルバムに入ったヴァージョンはゴスペルとロックの要素が強かったりとか。そういう今回じゃなきゃ作り得なかった曲っていうのは、自分たちの少なからずの進化じゃないかな。今回のアルバムはいちばん、一貫性があるアルバムではあるよね。

-たくさんのツアーをしてきて、そろそろ新しい曲をという欲求も高まってる頃だと思いますが、どうですか。

じつは今年の1月にシングルを出すつもりだったんだけど、オーストラリアのツアーが入って、その勢いでまた他のツアーが決まったっちゃったりして。しばらくツアーがやめられない状態ではあるんだ(笑)。ただ、そろそろ次の作品を作らないといけないなっていうのはあって。この『Lex Hives』がとてもいいアルバムだから、ツアーもたくさん入ったし、勢いがあって、次にいくタイミングがなかなか見つからないのもあるんだけど、曲はいくつか温めてるよ。リハーサルも少しずつ始めてはいるから、夏くらいには2曲くらい仕上げて、夏のヨーロッパ・ツアーには新曲もいくつか披露したいと思ってる。ツアーが終わってアルバムを作るまでには少し休みも欲しいし、次に何をすればいいかわからないっていうのもあるから、今までは実際にアルバム作りに入るまでには少し時間がかかることもあったけど。今だと、カントリー風の曲がいくつか温めていて、あとはいかにもTHE HIVESっていうエネルギッシュな曲もあって。そのなかから、アルバムをどういうふうにしていくかっていうのを決めていくって感じかな。いろいろとやりたいこともあるし、それが固まるまでには、すこし時間がかかりそうだなと。

-楽しみにしています。先ほどから、カントリーっぽいものっていうのが挙がっていますが、Nicholausさん自身で今興味のある音楽はありますか。

基本的に、MISFITSとかAC/DCとか、子どもの頃から聴いてるものものは変わらないかな。あとは今、地元で――人口が1万2千人くらいの街なんだけど、月に1度ロックンロールのクラブをやるようになったんだ。ビールを飲んだり食事したりしながら、ロックンロールを大音量で聴くっていうイベントで。そこの初のゲストDJをしたんだよね。DJは、前にもPelle(Vo)とストックホルムでやったことはあるぐらいで、本格的にひとりでDJするのは初めてだったんだけど、最高の経験だったんだ。ただ、ロックンロールとかパンクって1曲が2分くらいで短いから、何時間もDJするってなると選曲がとにかく大変で。CDとかアナログ盤とか、PCのなかの音楽とか、とにかくあるだけの音楽を聴き漁って、いろいろと集めてみんなに聴いてもらう感じで。それはすごくやりがいがあったし、楽しかった。じつは、子どもの頃はレコード屋になるのが夢だったんだ。今はレコード店は営業的には難しい時代かもしれないけど、昔はどこにでもレコード屋があって。オーナーは1日中好きな音楽を聴いて、しかもフルタイムの仕事で、それがすごくうらやましくて。いつか、自分もレコード屋になろうって子どもの時には思ってたんだ。今は、もっといい仕事――自分で音楽を作って、演奏してってことをフルタイムでできてるのは、幸せだよね。まあ、隣の芝生はいつも青いっていうか(笑)。いつかレコード屋になりたいって、また思うかもしれないけどね。

-そういうDJ経験もまた、次の曲に活きてきそうですね。

そうだね、そういった素晴らしい音楽がTHE HIVESっていうフィルターにかけられて自分たちなりの解釈で次の曲に活かしていけたらと思うよ。

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