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INTERVIEW

Japanese

浮遊スル猫

2014年01月号掲載

浮遊スル猫

Member:さはら (Vo/Gt) やがわいちる (Ba/Vo) おみ (Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-個人的には浮遊スル猫の楽曲は、常に何かに思考を巡らしているような、そういう深みがあると思っていて。おふたりのツイン・ヴォーカルがそれをまたしっかり際立たせているというか。

やがわ:曲を作るとき......例えば「好奇の眼」は、TVで事件について放送されていることと、ネットでその事件について言われていることが、違うことがあって。TVでは言えないことがネットでは言える、けどそれが本当なのかどうかはわからない。――そういう風に疑問に思ったことや気になったことを1個題材としてポンと置くと、そういう曲ができたりして。

-それは"真実を知りたい"という感情から生まれた疑問ですか?

やがわ:そうですね。殺人事件があったときも"何で殺されちゃったんだろう?"と思うことはいっぱいあるし。でもTVではそこを深く追求しない。"殺人がありました、犯人が捕まりました、殺害理由は交際のもつれです"とか、ざっくりだから。何で交際していて急にそんなことになっちゃったんだろう?というのをネットで調べるといろいろ載っていたりして。でもその書いている人の視点で書かれたものだから、勿論違う意見を持っている人もいるし。本当に殺された人が悪かったのかな?もしかしたらその逆のパターンもあるかもしれない。殺しちゃった人がものすごく真面目で、不真面目なことが許せなくて殺しちゃったかもしれない。

さはら:与えられた情報に対して鵜呑みにしないで、疑念を持ちつつ自分で考えたり自分なりの解釈を忘れないことが大事かなとわたしは思っています。

-そうですね。最近はクリックひとつで何でも出てくるから、考えることをすっ飛ばすことが多くなっているし、とにかく情報が多いから深く探ることをしなくなっているし。でも浮遊スル猫の歌は、そこを深く探ることで生まれるんですね。

さはら:情報が多いからひとつ何かがあってもどんどん新しいものが来てしまう。そうするとどんどん前のことを忘れちゃって......いまあることだけが全て、ということになっていってしまうことはとても多いですよね。スマホの普及で、自分の欲しい情報だけ手に入れるから、1個答えが出たら"あ、そうなんだ"と思っちゃう人は多いのかもしれない。

やがわ:それが丁度2曲目の「無関心の過失」のテーマにも当たるのかな。1曲目の「好奇の眼」で好奇心に関して歌って、2曲目で無関心を挙げてて。"あ、そうなんだ"程度で終わってしまうことで失うものもたくさんある。知らなくていいこともあるけど、生きていくうえで必要なことも知らないのは良くないことだし。......結局子供のとき知りたいと思っていたことがたくさんあっても、大人になったら簡単に手に入るから、どんどんどんどん、それこそ無関心になっていくというか。知りたいことだけ知っていればいいというか。すぐにネットでニュースが見られるから、若い子たちは新聞とかも読まないだろうし。簡単に見られる状況でも、ニュースを見ない若い子も多いだろうなとも思うし。そういう点では人間が関心を持って生きていることは何もないんだろうなーとは思いますね。

さはら:話は少し違うけど、何でもネットで調べれば出てくるから、人に訊いたりすることが減って、人との関わりが減っちゃってるかなとは思う。逆にその人と話したくて、その人が詳しいことを訊いても"そんなのネットで調べれば出てくるじゃん"と言われちゃうかもしれないし......臆病になっちゃいますね。

-浮遊スル猫の音楽は、とてもコミュニケーションを求めているとも思います。歌っているのは全部人間のことですからね。

さはら:したい気持ちはいっぱいあるけど、人見知りだからなかなかうまくできないその反動で(笑)。やっぱり嫌われるのが怖いから。人と話すときも猫を被ってるなと思っちゃったりして。

おみ:ネットだと顔を見合わせないから、ちょっと勇気を出せば連絡できたりすることも多いと思うんですけど、対面してお話するとなるとネットのときよりももっと勇気が必要で。それで臆病になっちゃうのもあるのかな。

-でも人とは繋がりたい――1曲1曲にそういう強い想いが込められている気がします。近年は考えることが減ることで、何となく楽しい雰囲気でわかりやすいものが受け入れられやすい世の中になっている。それに対しての抵抗なのではとも思ったのですが。

やがわ:まったくその通りです(笑)。ライヴとかもノらせるというよりは"聴け!"と思いますね。お客さんも最近はちょっとずつ増えているんですけど、わたしたちが何も言わないのにみんなスッ......と背筋を伸ばしてまっすぐ前を見て静かに聴いてくれています(笑)。

-(笑)皆さんの思いが音楽を通してお客さんにしっかり届いている証拠ですね。浮遊スル猫の音楽は聴けば聴くほど身体のなかに入っていく感覚があります。やがわさんの語りが入ったインタールードは「over」に繋がる重要なものにもなっているし。

さはら:あのインタールードはやりたい放題(笑)。"いいねいいね!"って褒めあって"それはダサいよ"なんて誰も言わなかったよね。

やがわ:「深い不快な眠りについて」からそのまま「over」へ行くのも悪くないんですけど、もっと「over」が映えるようにしたくて。世界観を引き出したかったから、さはらに"文章考えてきて"って頼んで、それにわたしが日常の音を入れて「over」に持っていく。ちょっと遊び的なものを入れたくて。うちらも自分たちのライヴを"フユネコワールド"と言ったりしているんですけど、自分たちだけじゃなくて会場も一緒にその空気になってほしいというか、自分たちの色に染まってほしいというのはありますね。