Japanese
PLASTICZOOMS
2013年10月号掲載
Member:SHO ASAKAWA(Vo)
Interviewer:沖 さやこ
-それは前作には全くなかったことだったと。
なかったです。曲に合わせて人を選ぶという方法で今までやってきたので。だから今回でバンドという形に初めてなったイメージです。今まではオーケストラのような感覚で僕がそのフレーズを弾ける人間を選んで、それを弾いてもらってライヴをやる。そういうスタンスでやってたんですけど、今回バンドとしてやれるという、自信みたいなものがあったし、それをやってみたいのもあったし。挑戦というか、感覚的にはひとつ抜けるような感じですね。
-新しい世界を見るような感覚だったのでは?
はい。僕が生まれ変わったんで、僕は別人なんですよ(笑)。そういう世界で生きたことがなかったので。全部に壁を置いて生きてきたので......それがなくなったということは、生きていて楽になったという感覚ですかね。自分の周りを見るようになると、面白いことが増えて。人と関わることが多くなったし......心を許せる人間が増えたので。それはメンバー、スタッフ......あとTHE NOVEMVERSの小林(祐介)くんやLillies and RemainsのKENTくんとかは親友的な存在なので。そういう風に自分が歩み寄れる、信頼できる仲間がいるということは勇気に繋がって、作品に出て。全部にいい連鎖が生まれて、そこからレコーディングを始めて、今回MIXエンジニアをやってくれた中村益久さんが僕の才能をちゃんと引っ張り出してくれてた部分もあって。"ここはクールだからここはこれでいい"とか、僕が音に対してこうしたいああしたいと言ったことに対して迷わずちゃんと着地させてくれる人なので......自分が周りに生かされているんだなと思いましたね。
-心身ともにかなりいい環境で作業が進められたんですね。
僕の家でもレコーディングできる環境があって、ギターやヴォーカルも何曲か僕の家で録っています。そういう環境には恵まれていて。家で録るとまったく声質が違うし、波形も違うし。楽器もそうなんですけれど心の込め方が違いますね。1番最後の「BYE.BYE.(feat. MASUHISA NAKAMURA PIANO VERSION)」という曲は、ベッドで歌っています。部屋を暗くして歌ったり。低い声の曲は大体僕の部屋で録っています。
-曲によって録音方法を変えるのも曲が鮮やかになる要因だと思います。『CRITICAL FACTOR』は"黒"というものが基盤になっていて、そこに様々な色味が滲み出ているような作品だなと感じて。
それは本当にこのジャケットのイメージと一緒で。これは黒い紙に僕が色を塗ったんですけど、本当にこのままというか......。黒の上に色を塗る、僕自身のカラー。僕はやっぱり自分でも色で例えると黒だと思っていて。でもただの黒じゃなくて、ちゃんと喜怒哀楽を持っている人間だから......本能的に生きていたいというか。考えて行動するより、感じたまま何かを表現しないと僕は......駄目になっちゃちゃうんですよね。
-「P A R A D E」や「LIVE IN THE MIDDLE OF SADNESS」はこのアルバムの中でもポップな曲だと思いますが、どちらもシンセが効いていて色味の強い楽曲になっていますね。
僕は80'sサウンドが特に好きなので、シンセの音色などはそういうものを基準に選んでます。80年代はいろんなジャンルがあるじゃないですか。僕はリアルタイムじゃないから、聞いた話や読んだ話なんですけど、あの時代はポスト・パンク、ニュー・ウェイヴ、ゴシック......全部一緒くたにチャート・インしていた時代。本当に気持ちいい音だなと思います。僕の感覚にすごくフィットするんでしょうね。でも自分の作りたい音はあのままの音ではなくて。パンク、ハードコア、2000年以降のポスト・パンク・リヴァイヴァルと呼ばれているTHE STROKES等にもすごく影響を受けていて、(『CRITICAL FACTOR』の楽曲は)それらを僕のフィルターを通してできあがったサウンドや音色、ですかね。ちなみに僕が1番最初に作るのはドラムの音です。ドラムの音にフィットするギター、ベース、シンセサイザーの音色を選んで行くことがスタイルです。
-そのドラムはリズムではなく"音"?
ほぼ音色です。大体頭の中である程度の曲もできるんです。絵を描くときは描きたい絵が頭にあったり、その画が頭に浮かぶじゃないですか。ああいう感じで音が頭にパッと出てくるんです。そこから画材を揃えるように、この音を出せるシンセを用意したり、パソコンを使って行う作業はどれなのか書き出したり、ギター・フレーズにフィットするエフェクターは何か考えて、そこから落とし込む。Fritillaria Camtschatcensisというプロジェクトで、ダークな音楽やアンビエントな音楽――PLASTICZOOMSの基盤になるような部分を消化しているので、PLASTICZOOMSの作業は頭の中でほぼ完結できるような状態ではありますね。
-その曲のできあがり方とPLASTICZOOMSそのものは似ているような気がします。PLASTICZOOMSは音と同列にアート性やファッション性も存在していますから。
そう、全部一貫していて作り方は全部一緒です。服をデザインするのも曲を作るのも絵を描くのも全部同じで、頭の中でできあがっているものを形にする作業。今回はカヴァー曲(Michael Sembelloの「MANIAC」、映画『フラッシュダンス』に起用された1983年の全米No.1ヒット・ナンバー)が1曲入ってるんですけど、それもイメージを固めて音色イメージも全部組んだのちに録って。
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