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INTERVIEW

Japanese

PHONO TONES

2013年08月号掲載

PHONO TONES

Member:伊地 知潔 (Dr) 宮下 広輔 (Pedal Steel)

Interviewer:石角 友香


-楽しさや面白さみたいなことと、構成をしっかりやるってことの境界線があまりないんでしょうね。直感として“やり過ぎないほうがいい”ぐらいで。

伊地知:うん。例えば3テイク録るとするじゃないですか。宮下なんか録ったら全部違いますから、その中のどれがいいって、部分的に“ここは1テイク目がいいけど、後半は3テイク目がいいね”とかそういうことになりますけど、“じゃあトータルで見ると一体どれがいいの?”みたいな話にもなるんですよ。なので、全体的にみんながいいプレイできてるヤツにしようかとか、その辺のジャッジもむずかしいので、なんかユルくなっちゃうんですよね(笑)。

-でも、考えた上でユルくなっちゃうのはアリなんじゃないでしょうか。結果としてリラックスしたものが出てるという意味で。

宮下:アイデアの出し方とかけっこう何でもアリだってふうになってるけど、実はその線引きはこうして音になってる範疇の中に4人の共通認識としてあるから、そこは猪股が“ユルい、ユルい”って毒づくじゃないけど(笑)、言ってるほどそういう感じにはなってないかもなっていう。

-猪股さんは毒づくぐらいでちょうどいいんじゃないでしょうか(笑)。

宮下:ま、そうですね(笑)。実はバンドで演奏してる感じについては猪股はそんなに我が強いと思ったことがなくて。常に調和してるし、曲の中で“ここは足りなくてこうしたらいいのに”みたいなところに必ずいるプレーヤーだなと思ってて。

伊地知:めっちゃ周り見てるしね。あんなに空気読まない感じのヤツがステージ上でいちばん空気読んでる(笑)。

宮下:このバンドを“いや、片手間だから”とか言ってるけどそれは猪股のコミュニケーションの取り方だなって。

-(笑)猪股さんの言ってることを鵜呑みにするな、と。ところでPHONO TONESはメンバー全員が他のバンドの活動もしていて、ミュージシャンとしてアウトプットが複数あるのはいいことだと思うんですけど、気持ち的にはいかがですか?

伊地知:そうですね。始めた時はセカンド・バンドみたいな意識がどっかにあったんですけど、やっていくうちにそうじゃないなと。PHONO TONESはPHONO TONESだし、アジカンはアジカンだし、全く別物で。比べたりも全くしないし。こう、アジカンでできないことをPHONO TONESでやってやろう!みたいな意識も前はあったんですけど、そういうのも消え去ってしまって、今はこのバンドで鳴らしたい音はどういう音なのか?っていうのを別の意識で考えられるようになったんで。決してセカンド・バンドじゃなくて、どっちもメインでやれてるなと今は思います。

-アジカン・ファンはメンバーが複数の活動をすると不安になる人も中にはいると思うんですよ。

伊地知:そういう突っ込みはTwitterとかでいただきますけど、フロントマンじゃないんでそこまで言われてないです(笑)。これでアジカンの活動が疎かになったらおかしいなと思いますけど、決してそうではないし、PHONO TONESでプレイするともちろんスキル・アップするワケで、それをアジカンに持って帰ったりもしてるので、今はすごくいい傾向です、はい。

-今回、前作よりバリエーションが多いですが、意外と形にするのが大変だったなぁという曲はありましたか?

伊地知:大変とか感じたことないからなぁ(笑)。完全、ノンストレスです。

-ノンストレスな理由って?

伊地知:すべてOKだからです。NGがないバンドだと思います。

宮下:その感覚は一緒なんだけど“もっとできるでしょ”ってストレスはすごいある(笑)。結果としてできてるものはいいなと思うんですけど、なんか展開の持って行き方で“これがいいんじゃない?”って出るプロセスというか、決まる瞬間の感じが“あっ、もうこれしかない!”って、気持ちよく決まる感じにもっとできるんじゃないかなっていうのはある。

伊地知:むずかしいこと言うねぇ(笑)。

-(笑)宮下さんは音楽的なビジョンがすごくある人なんでしょうね。最近はインスト・バンドも市民権を得てきていますが、ご自分の他のバンドとの反応の違いとか感じますか?

伊地知:まだそこまでは見れてないですけど……アジカンのお客さんはどうやってノったらいいのかわからないっていう人はまだ結構いて。でもたとえばスペアザ(SPECIAL OTHERS)のライヴとか行くと“あ〜、違うなぁ”と。メイン・リフがきたらみんながワーっと盛り上がるような、そういう見方してほしいなって思うし、それが理想だなと思うし。

宮下:俺は単純に他にやってるバンドがベースやドラムがいて、みたいな形態のバンドがほぼないし、かつロック・バンドにとても興味があるんだけど、一見盛り上がってるようで、実は形式っぽく見えちゃう時があるので、音楽そのものに興味を持ってほしいなとは思ってるんですよね。それで最近面白いのは、PHONO TONESのライヴをやることでついてくれたファンの子がペダル・スティールに興味を示してくれて、横浜のかなりディープなバーでやってるライヴを見に来てくれて。そういう楽しみ方してる人って、たぶん自然といい揺れ方をしてると思う、音楽を聴いて。そういう人が増えたらいいなぁというふうには思ってますね。

-フェスの現場などで、あくまで音で出会う人も増えそうですね。

伊地知:いくつかは決まってるんですけど……去年のRISING(SUN ROCK FES.)は良かったですね。“なんだ、この音いいじゃん!”ってテントにいる人も出てきてくれる感じがあったので。

宮下:フェスって、全体の空間の中でどう気持よく過ごすか?みたいなのがあるから元々見たいと思ってたところになかなか行けないっていうのはあるけど(笑)、そういう中でうまいこと偶然に出会ってくれる人がいたら最高ですね。