Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Overseas

YOUR FAVORITE ENEMIES

YOUR FAVORITE ENEMIES

Member:Alex Foster (Vo)

Interviewer:石角 友香


-ラストはカモメの鳴き声のように聴こえるノイズとフィードバック・ギターが印象的です。このインストに込められた思いはどんなものなのでしょう。

解放の音は様々な形で特徴づけられる。ノイズやフィードバックは、誰もが人生のある時期に感じるであろう感情的めまいの景観を与えているんだ。ノイズを通して、声が現れる。僕らの内側の声が解放へと誘うんだ……放棄したり、降伏するためじゃなくて、自分自身を変遷から遠ざけ続けるものを手放すために。それは恐れや、疑い、絶望や壊れた夢かもしれない。でも自らの幻想と幻を手放せば、自分自身を再び見つけるんだ。壊れた夢は壊れたままかもしれない。恐れは恐ろしいままかもしれない。絶望は失望のままかもしれない。でも、それに悩まされるのと同じくらい、解放は自らを再び定義し、自己改革させてくれるんだ。何度も何度もね、希望に満ちた潮の流れように……。そしてもちろん、他のバンド・メンバーはこのノイズやフィードバックを全く違うように捉えているよ。でも僕らはみんな同じ夜に生まれ、希望に溢れる朝の潮の満ち引きによって、足下を照らす光を見つけたんだ。

-アルバム全体を通して伝えたいイメージはどんなものだったのでしょうか。そしてそのために拘ったサウンドやアンサンブルやアレンジがあれば教えてください。

「Between Illness & Migration」はそれ自体が音楽的、詩的な旅だ。捨てたり、降伏することではなく、手放し解放すること。でも心の自由がアルバムの根底にある。時に僕らは、その自由が平和から来るもので、苦痛や痛みのないものだと信じている、もしくは信じたいと思っている…でも違うんだ。影が光と闇からできているように、自由は人生の出来事を取り除いたものではない。アルバムを通して、様々なノイズやフィードバックの要素を感じることができるだろう。あらゆるところからとどろく、リズム・セクションの嵐を感じることができる。異なる言語、声のトーン、感情で言葉を聞く。人生がそうであるように。1つだけ鮮やかで、力強いままなのは、その光だ。アルバム全体に光が溢れている。音を光として捉えることはクレイジーだけど、聴いている時へと本当に解放したら、その光を感じることが出来ると思うよ。“どこに?”君はそう聞くかもしれない…改めて、様々なノイズとフィードバックが至る所に現れているんだ。リズム・セクションの嵐が、あらゆる箇所からとどろいているんだ。言葉が違う言語で、違う声のトーンで、違う感情で表されているんだ。様々な視点?多分ね。でも、それでも……そう、人生だよ。

-バンドとして新たな試みが成功したと思う楽曲があれば、理由とともに教えてもらえると嬉しいです。

アルバムにあるすべての曲が、様々な理由で感情的にチャレンジだった。そしてそれぞれ違う形で、バンド・メンバー全員にとってそうだったよ。音楽的にも、歌詞的にも、とても複雑なアルバムなんだ。でも本当のチャレンジは曲のパートにではなく、曲に存在した、もしくは曲を通して経験した感情の関わりにあったんだ。ほとんどの曲で僕らは感情的に自分自身を見失ったよ。全体としては、「Obsession Is A Gun」という曲がとてもチャレンジだった。音楽的要素はとても複雑で型破りだ。でも制限なしに解放し、曲の意味を噛み締めることは、僕ら全員にとって難しいことだったんだ。リハーサルをしていく中で、自らの感情的制限に苛立っていたんだ……。アメリカの小学校でまた銃撃事件が起きたという酷いニュースを見るまでね。それが酷い悲劇であるだけでなく、何故こんなことが何度も起きるのかについて、ありきたりでシンプルな理論を述べているいかさま師の無関心な説明に、僕らはうんざりしたんだ。退屈し、自分のことしか考えない人たちに。僕らがリハーサルへと戻ろうとした時、ニュースの司会者がその学校に通っていた子供の親に質問を投げかけていた。ある女性の正直な答えに僕は心を打たれたよ。彼女はこう言ったんだ。“私の息子の名前はJackです。そして別のJackという名前の子が犠牲者のリストに載っていました。それは私たちの息子だったかもしれないのです。私たちのJackが無事だったことに安堵しましたが、そのような感情の芽生えに罪悪感を覚えました……その子のお母さんやお父さんは、自分の息子を失ったんですから”それはとてもリアルで……とても正直で、とても真実だった。僕らは言葉が出なかったよ。良いスーツを着て、幸せそうにナショナルTVに登場する“専門家”の話を聞くという苛立ちから、控えめに息子を抱く母親の姿は、僕らの心持ちを完全に変えた。僕らはリハーサルへと戻り、僕は歌詞を書いた。一度歌い、それが本物の瞬間になったんだ。曲が出来上がった。「Muets Aux Temps Des Amours」は、そのすぐ後に出来上がったんだ。2つの深い、全く異なる感情…2曲だけど、精神は1つだ。あれは僕らにとって本当に素晴らしい観想的なひらめきだった。