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INTERVIEW

Japanese

カミナリグモ

 

カミナリグモ

Member:上野 啓示 (Gt/Vo)

Interviewer:天野 史彬


-「MY DROWSY COCKPIT」の主人公が抱えてる孤独感や無力感っていうのは、上野さんが今、カミナリグモとしてのバンド活動をしていく上で抱えているものでもある、と。だけど、その上で作品をリリースしたり、ライヴ活動をして発信していくことが重要なんだっていうことですよね。

そうですね。最初の話にも繋がりますけど、1人きりで部屋の中にいる感覚っていうのは、ずっと自分の中にあるもので。窓の隙間から外の華やかな世界は見えてるんだけど、自分には届かない。行こうと思えばそこに行けるのかもしれないけど、実際に行ったところで、自分はそこに馴染めないし相応しくないんだろうなっていう感覚は、音楽をやってる上で常に感じているし、日常生活でも、そういう感覚は自分の中にあるんです。だから暗い曲ばっかり作ってしまうのかなって思うんですけど(笑)……でもやっぱり、どこかで窓の向こうの世界にちょっとでも近づきたいっていう気持ちもあるんですよね。相応しくないかもしれないけど、でも、相応しくなりたいっていう気持ちは捨ててないというか。そういう、控えめなんだけど、心の底では強く願っている思いっていうのはあるんです。それは、このアルバムからも感じてもらえるかもしれないですね。

-確かに、このアルバムには曲毎に主人公の孤独な風景がたくさん出てくるんですけど、その中で、“音楽”っていうものの存在が最終的な救いとして描かれている曲が多いですよね。それは、上野さんが最終的に音楽で世界と繋がりたいと思ってるからだし、カミナリグモが世の中に向けて音楽を発信していこうとしているからですよね。

そうなんですよね。今回いろんなキーワードがあって、さっき言ってもらった“コクピット”とか“アラーム”もそうなんですけど、もうひとつのキーワードが、今言ってくれた“音楽”で。それは「Toys」って曲の<うたを聴かせて>っていうフレーズとか、「Stray Moon」の<懐かしいあの名曲をうたう>とか、「MY DROWSY COCKPIT」 の<虹みたいなうた>っていうフレーズに表れてたりするんです。今、自分はシンガー・ソングライターとして“歌う”っていうことに強いこだわりがあって。現実的には自分が思い描いたような場所には今は立ってないんだけど、その中でも希望を見ている。もっと言うと、今の自分には、音楽を表現することや歌うことでしか希望を見出せないんですね。だからこそ、音楽に対して、歌うということに対して、作るということに対して、より一層、真剣に向かい合っていかなきゃなって思うんですよね。それは音楽に関わってきてずっと思ってきたことだし、このアルバムの中には特に、そういう自分の気持ちが端々に現れているのかもしれないです。

-上野さんの中にある音楽に対する強い思いって、恐らく以前から一環してあったと思うんです。でも今の話を聞くと、自分が世の中に音楽を発信できる立場にいるんだっていうことに、もっと自覚的になったっていうことなのかなって思ったんですけど、どうですか?

そうかもしれないです。僕は元々、歌を歌ったりすることよりも、作る作業のほうが断然好きで。自分もそっちのほうが向いてると思ってたし。でも、バンドをやるとなると、作ったものをリアルタイムで表現しないといけない。それに自分がやってるのは、時には作ったもの以上に、人が評価されないといけない、人を好きになってもらわないといけない分野の音楽なので。そこに対しては、ずっと葛藤があったんです。たとえば演劇で言うと、役者と脚本って――稀にどちらもやるひとはいるけど――本来同じ人がやらないじゃないですか。自分もそれと一緒で、脚本を書くほうが向いていて、役者は向いてないし、人前でパフォーマンスなんて得意じゃないっていう気持ちがずっとあったんです。その気持ちは10年やってきた今でも消えてはないんですけど、ただ、年々やっていく中で変わってきた部分もあって。自分たちの音楽を理解してくれる人が増えてくると、作ること以外にも自分にできることがあるのかなっていう気持ちが大きくなってくるんですよね。今は幸いにも自分たちを理解してくれる人がきちんといるっていうことを、ようやく手応えとして感じれるようになってきたし。作ること以外にも、ちょっとできることが増えてきたというか。その中のひとつが、歌うっていうことなのかなって思ってて。作ることは勿論好きだし、大事にしたいっていうのはずっと変わらないけど、改めて、ライヴとかで自分の歌を望んだ人に対して一生懸命歌うことを大事にしたいっていう思いは、確かにここ数年強くなってきましたね。