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INTERVIEW

Japanese

たむらぱん

2012年10月号掲載

たむらぱん

たむらぱん

Official Site

Interviewer:沖 さやこ


-えっ、これで緩まったんですか(笑)!?

(笑)。人によって“緩め”の価値観や度合いって違うじゃないですか。わたしはゆるゆるにしたと思っても、全然残酷だったり……でもわたしも聴いてもらいたい曲を作りたいので(笑)、この辺はどうだろうって人の意見を聞いたりして。その中で1番自分のベストなものを選んでいくっていう感じで。

-“人間とは何か”ということに向き合おうと思ったのはなぜでしょうか。

この曲の基本にあるのは“コミュニケーション”で。働くことは人にとって大事だけど、人に対する気遣い、人に対して何かをすることが人のお仕事だってことを歌ってるんですけど。多分……“何でうまくやっていける人とやっていけない人がいるんだろう?”って凄く強く考えた頃で。極端に言うと“成功者とは”みたいな感じというか(笑)。いろんなミュージシャンと一緒にやっていくなかで感じるのは、やっぱり凄く優れた人って人間としても凄く良い人で。だから胸を張って歩いている人はそれなりに苦難に遭っているんだって歌詞を書いたんですけど。もともと“どう上手に生きるか”“うまくやるコツはどこにあるんだろう”っていうところを求めてる曲が多いので、そういうなかのひとつだとも思います。

-ちなみにたむらさんは“うまくやっていけてる人”ですか?

わたしは、基本できないことを曲に書くので、できてないんだと思います(笑)。わたしにとって書くことは“望み”なんですよね。だから解決もできないんですよ。答えも書くことができないんですけど、糸口みたいなものをひたすら書いていく感じです。

-先ほど“前作のうちにレコーディングした曲もある”とおっしゃっていましたけど、その曲はどれでしょうか。

結構いっぱいあるんですけど、あんまり覚えてないんです。自分は音楽に関して、毎日“現在”と“過去”と“未来”をやってる感じなんですよ。作っているのは未来のことで、自分が作っている状況は現在だけど、こうやって話しているときは過去の曲のことを話す。毎日、過去と現在と未来に触れてるって感じなので、『wordwide』の曲を作ってるときもそういう感じだったんですよね。これは音楽を作っている上でいつも思うことなんですけど。

-アルバムごとの区切りがないから、たむらぱんの音楽は、日が沈んだり、日が昇るときの空の色みたいに、区切りがないのかもしれないですね。

アルバムごとの区切りはないですね。今まで1回もないかもしれない。基本的には全部繋がってて、それでどっか新しい次元に行って……っていうのはあるかもしれないですね。

-ラストにShing02さんとのコラボ曲「でもない」が収録されておりますが、この曲だけレコーディングがニューヨークということで。他の曲は生楽器が多いのにこの曲だけシンセや打ち込みが多いので、色が違いますね。

曲作りの途中で“この曲シンゴさんとできたらな”って思って、作り上げたときにお願いしてみたんです。最初の自分のデモの時点では生サウンドだったんですけど、一緒にやるからにはシンゴさんにトラックの部分も担ってもらいたいなと思って。曲の構成はそのままなんですけどコード感やビート、リズムは一切変わってるんですよね。シンゴさんとコラボするにあたってそういうところもディレクションやアレンジをしてもらいたかったので、今回お任せしました。

-2008年にリリースされたShing02さんのアルバム『歪曲』の「接近」以来の共演で。

いつか自分の曲でも一緒にやってほしいってずっと思ってたし、『mitaina』でいろんな人と共演したというのもあったし。誰とでも共演できるっていうわけではなく“この人とだったらやれる”と思った人と一緒にやっているという感じだったので。

-“この人とだったらやれる”というポイントはどこでしょうか。

勝手なイメージなんですけど、音楽に対して偏見のない人ですね。日本だとある程度ジャンルのイメージもあったりして。そこから越えたいっていうのは大きいと思います。そういうところがフラットな人は素敵だと思うし、自分もそうありたいなと思ってるんですけど。あとは、自分にできない部分を持っている。トラックやサウンドの、自分になかったところを見つけてくれる、見せてくれる人が好きですね。あとは……いいひと(笑)。

-(笑)。そこはとても大事ですね。Shing02さんは人としてミュージシャンとしてどういうところが魅力的ですか?

一緒に制作をしたのは今回が初めてだったんですけど。ライヴなどを見させてもらうと存在感と切り替わりがハンパなくかっこいいんです。この人だから言ってることが本当にそうだと思わせるパワーというか、言霊があるなと思って。あと、凄く、自分のイメージとか意思がはっきりしているところは素敵だなと思いますね。精神というか。

-ニューヨークという環境はいかがでしたか?

純粋に国が違う、環境が違うので、それだけでも全部違うという感覚にもなるんですけど。でもやってる中で……音楽だけじゃないと思うんですけど、何かを作るときに人が集まって、みんなでひとつのものを作っていくというスタンスとか、そこに向かうエネルギーっていうのはどこも一緒だなって凄く感じました。そういうところは言語とかじゃないなと凄く思えて。もしかしたら日本だと、言葉の部分がクッキリしすぎるからこそ妙な空気がうまれるかもしれないなとか思ったり。本当に、わたしは気持ちを探るくらいしか英語は喋れないので、片言の英語を使いながら気持ちを探って作っていくって感じだったので。日本にはない感覚というか。一言で完結できない状況でしたね。

-そういう環境で、言葉の強い楽曲を作るって面白いですね。

そうですね。言葉とかそんなにリアルに使ってなかったのに、そういう言葉を大事にしたものを作るっていうのは、ある意味矛盾してる感じもするんですけど。自分たちは世の中に存在している言葉を……多分これが1番近いんだろうなと思うものを選んで使ってるだけで。それが絶対的に自分の思いと共通してるかは分からないなって凄く思ったんですよね。ただ当てはめて表現する手段にしているというか。だからどっかで凄く、あいまいにできちゃうというか、“これを言っておけばいいか”っていう考えが生まれるんだろうなっていうのを感じたし。そういう意味では言葉のあり方みたいなものを改めて感じた部分はありますね。

-MySpaceで活動なさってた頃からずっと楽曲を作り続けて今回5枚目のアルバムですが、たむらさんにとって今作はどういうアルバムでしょうか?

そうですね……音を楽しむっていう意味では、自分ができる範囲で突き詰めるところまで来たかなと思ってます。これから何枚もアルバムを作っていくためにも、それこそ音楽の楽しみ方というか、その音楽に自分が言葉を乗せていく意味とか、改めて感じられたら良いなと思いましたし、5枚目というキッカケで次の作品が劇的に変わっても面白いかなと思ってたりもして。

-もう曲作りなさってるんですもんね。

はい、若干(笑)。自分から何かを出せるうちはやりたいと思ってます。