Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

nano sound museum

2012年04月号掲載

nano sound museum

Member:ナガオタツキ (Vo, Gt & programing)

Interviewer:石角 友香

ギター・ロック・バンドのヴォーカリストとして活動してきたナガオタツキが、2007年にソロ・プロジェクトとして立ち上げたnano sound museum。始動から4年以上の月日を経てようやくセルフ・ネームの1stアルバムがリリースされる。脳内で拡張する歓喜や攻撃性をデジタル・サウンドで具現し、フィジカルにダイレクトに訴えかけるそのサウンドは脈々と続くUKのダンス・アクトの血脈を感じさせるもの。それでいて飽くまで軸足はロック・バンドに置くという彼のスタンスのルーツにあるものとは?

-以前はギター・ロック・バンドをやっていたナガオさんが今のスタイルにシフトしていった一番大きい動機は何だったんですか?

たとえばアメリカのロックが好きな人はそれを、UKロックが好きな人はそれをバック・ボーンにロックをやってると思うんですけど、僕は高校ぐらいからUKロックとメロコアとハードコアちっくなミクスチャーみたいなものと、あとはベタにNIRVANAやTHE SMASHING PUMPKINSみたいなオルタナ/グランジっていう路線と同時にTHE PRODIGYを聴いてたから、ちょっとデジタルなロックも同時進行で聴いていて。ただ、バンドを始めてからはUKロックやオルタナっぽいものをやっていて、バンド的にもそういう環境にいたんです。

-そんな中で転機があったと?

そうしたバンドをやってる時、古いちっちゃい機械だったんですけど、ローランドの音源内蔵シーケンサーみたいなのをいじったりしてて、"いつかこういうのもカッコよくできたらなぁ"とか思いながら......昔やってたKOHLってバンドが後期になった頃かな? たまたまDTMの環境を手に入れまして。で、そこから趣味で機材いじり出して。そのバンドは終わってしまったんですけど、趣味で作っていた曲をたまたま周りの人間に聴かせたら、割と反応がよかったというのもきっかけににはなってますね。

-でもその後のバンドでもすぐデジタルを導入したわけではないんですよね。

やっぱり生でやるロック・バンドのカッコよさみたいなものは憧れとしてずっとあったので。ずっとギター・ロック・バンドは続けてはいたんですけど、ギター・ロックの中では自分はヴォーカリストであって、そのアタマで考えると、歌っていうものをどう伝えるか? 何を誰に伝えるか? を毎日考えなきゃいけなくて。そこから逃げるわけじゃないんですけど"自分がやりたいのはそういう次元じゃないところの音楽なんだなっていうのがわかったというか。これまでのライヴでは歌を聴いて、それこそ涙を流したりしていた人たちが、今のスタイルのライヴで身体を動かして楽しんでたり、ライヴ・ハウスの一番奥まで手が上がってるのを見て気づいて。ライヴっていうのは歌を伝えるどうこうも大切なんだけど、それ以前に、もっと単に楽しいし、みんなで盛り上がれるものだって思ったんですよね。で、必然的に今みたいなスタイルになってきたっていう感じですね。

-その感覚って今回のアルバムの1曲目のタイトルである「ain't nothing but my music」に直結してますね。

タイトルはけっこう後付けだったりするんですけど......それまでは曲を作る時はアコギやエレキでコードを弾きながらメロディ乗せて、そこから曲として広げていって、歌詞もちゃんと乗せてっていう作業だったんです。けど、nanoの場合はカッコいいシンセ・ベースとか、パーツで1個カッコいいのを見つけて、それを曲にまで広げてしまって、その後に一発でインスピレーションでメロディを乗っけて、ほとんど直しもしないですし。で、その時に適当な何語だかよくわからないような言葉で仮歌を入れるんですけど、その時に何かしら言ってるんですよ、単語を。その単語をヒントに自分で組み立てていって、言葉遊びとかをしてみて全部できあがった上で、捉え方を自分で決めるという。だから曲がコアにあって曲に持っていかれてる感があるんです。

-ナガオさんがずっと好きで聴いてきた音楽の影響は、歌詞の深遠さとかそっちの方向じゃなかったのかもしれないですね。

そうかもしれないですね。昔から歌詞を書くのがホントに苦手で(苦笑)。言いたいことはたくさんあったんですけど、歌詞にとってメロディが邪魔だったり、メロディにとって歌詞が邪魔だったりするし。もちろんそれがうまくできる人はすごいなと思うんですけど、自分はもっと違うところで伝えられるというか。何より、THE PRODIGYを聴いた時の衝撃に近いんですけど。......言い方悪いんですけど、そこら辺のバンドが"ロックだ"って言って鳴らしてる音より、生楽器じゃないパソコン使って出してる音の方が全然ロックに感じられることが、少なくとも自分の中ではあるので。そういう部分をバンドとしてやりたいという。

-でもTHE PRODIGYとかのUKのダンス・アクトのアーティストは当時から比べるともちろん、時代もあると思うんですが洗練されていったりしましたよね。nanoの場合はいい意味でデジタルの取り入れ方がベタというか。

そこはやっぱりバンドっていう認識でやってるので、ライヴや同じタイミングでリリースがあるバンドと戦っていきたいし、自分たちの強みを押し出していきたいんですよね。その上で何ができるんだろうな? って考えると、僕らみたいにデジタルが入ってるバンドって、パソコンで足りない部分を乗っけるっていう発想が多いと思うんですけど。nanoはパソコンで完全に基盤を作った上で、バンドが居場所を探して必死でもがいてる、乗っかっていくっていうスタイルで、それがたぶん今できる最上の形なのかなと。今はそんな感じで意識してやってますね。