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INTERVIEW

Japanese

キリンジ

2010年09月号掲載

キリンジ

Member:堀込泰行:(Vo&Gt) 堀込高樹:(Gt&Vo)

Interviewer:道明 利友


-いわゆる歌ものの曲からいきなり雰囲気が変わって、長いインストが展開していくっていう。ある種、組曲みたいな感じで1曲の中に多彩な展開があるのが面白いですね。

高樹:そうですね。そういうのができちゃったんだから、まぁいいかなと……(笑)。全部含めると7分以上になっちゃうけど、せっかくだからシングルで出しちゃおうということで。音楽の聴きどころっていうのは、ポップスとかロックで育ってくると、サビとかね。サビが重要っていうのはもちろん当然のことなんだけど、なんか、そうじゃないところも自分たちは音楽を聴くときに楽しめていると思うんで、そういうところも大事にしたほうがいいかなと思ったりもして……。例えば、イントロはキャッチーでサビが華やかでみたいなところに縛られがちなので、まずはそういう固定観念みたいなものを取り払うために、自分たちの中かではこういうプロセスが必要だったというか。

-Aメロ~Bメロ~サビの繰り返しみたいなパターンは、ポップスの世界ではたしかに多いですね。そういう定型のものとはかけ離れたものを、シングルとして世にはなってしまうのもすごいというか(笑)。

泰行:まぁそれは、配信っていうのもありますしね。配信のほうが、なんか、チャレンジできるというか……。音楽は、今ってすごい細分化されてるから、ややもすると、その細分化されているほうに自分のほうが近づいていっちゃうっていうんですかね。上手く言えないんですけど、なんかこう……。定規の目みたく、区切るとするじゃないですか。

-あぁ、なるほど。その区切った中に、音楽のジャンルが散らばっていて……。

泰行:そうですね。そこで、今の人ってわりと、そのメモリのほうに傾いていっちゃうというか。本来、そんなに細かく区切ってなければ1センチぐらいが一番小っちゃい単位だったところに、そのあいだにすごく細かく色んな音楽があるっていう。そういうメモリをなんにも知らないほうが、結構オリジナルなものができたりするっていうのはあると思うんですよね。昔のロックの人はそういうことがわりと多かったと思うんだけど、今はみんな情報過多っていうか、耳年増みたくなってるから(笑)、その区切ったメモリに近づけてっちゃうクセがあって、そうしないと安心しないというか。これってこういう音楽ですよっていう名前がつかないと、こういうジャンルですよっていうのがハマらないと、安心できないような状況っていうのは僕はあるんじゃないかと思っていて。特に僕らみたいな、音楽を聴くのがわりと好きなタイプ人ほどそうなりがちなところがあると思うから、最近は、そうならないようにというか。“何なんだこれは!?”みたいなのができるっていうことに、喜びとか、重きを置いてますけどね。

-“何なんだこれは!?”っていうのは、いい表現ですね(笑)。「セレーネのセレナーデ」から始まる中盤は、特にその“何なんだこれ!?”感を感じます。「台風一過」はディストーションギターをガッツリ鳴らして、「空飛ぶ深海魚」はピアノがしっとり響いて、「都市鉱山」はちょっとニューウェイヴチックな雰囲気を感じたり……。ジャンルとして考えたら、“何なんだこれは!?”って曲の並び(笑)。

泰行:(笑)そうですね。その中なら、例えば……。「空飛ぶ深海魚」は、元々は間奏がなくて。いわゆる、歌のない部分っていうんですか? 真ん中へんのちょっと展開する部分が最初はなくてすごくシンプルな曲だったんですけど、作っていくうちにその間奏部分、展開する部分ができてきてメロディーとしては一人前になったかなという感じで。曲のテンポは『セレーネのセレナーデ』に近いんですけど、この曲はこの曲で世界観をしっかり持たせなきゃいけないっていうところで……。「セレーネのセレナーデ」は、男女の大人の関係を歌ってるけど、「空飛ぶ深海魚」は、それを子供にして。男女なのか、男の子同士なのか女の子同士なのか分からないけど、夜中に遊んでて、っていうようなシチュエーションにして。で、まぁそれが、聞いてくださる方によって、子供じゃなくて大人だとしてもいいかなと思ったんですよね。