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IMAGINE DRAGONS

2024年07月号掲載

IMAGINE DRAGONS

Writer : 山本 真由

今年、結成15周年を迎えたIMAGINE DRAGONSが、6作目となるアルバム『Loom』を完成させた。前作『Mercury - Acts 1 & 2』(2022年)は、ダブル・アルバムということもあり、2枚合わせて全32曲収録(日本盤にはさらにボーナス・トラックも!)という盛りだくさんな内容ではあったものの、エグゼクティヴ・プロデューサーを大御所、Rick Rubinが務めたこともあり、ヒップホップ色の強い楽曲など個性強めな多数の楽曲がしっかりとまとまっていて、好印象だった。加えて、「Bones」や「Sharks」のようなフックの効いた中毒性のあるシングルもあり、IMAGINE DRAGONSのヒット・メーカーとしての才能を再確認できた作品でもある。


Imagine Dragons - Bones (Official Music Video)


Imagine Dragons - Sharks (Official Music Video)


実際は、『Mercury - Act 1』(2021年)をリリースした翌年に、『Mercury - Acts 1 & 2』とまとめてダブル・アルバムとしてリリースしているのだが、そんな大作を数年がかりで完成させた2年後にもう、こんなに素晴らしいアルバムがファンのもとに届くとこになるなんて、誰が予想しただろう。ヴォーカルのDan Reynoldsは今作収録の新曲の制作について、"しばらく活動を休止し、家族や愛する人たちとの時間を過ごしたあと、ようやく、もともと自分に喜びをもたらしてくれた音の場所に、新たな展望と精神をもって戻りたいと思うようになったんだ"と言っているけれど、休止と言うほど休んでいない気がするし、むしろ普通のバンドの普通のスケジュール感でいっても、制作スパンとして早いほうだと思う。しかし、こんな発言が出るということは、この人たちは本当に音楽を作ることを人生の一部としていて、それが彼らの喜びなのだろう。

IMAGINE DRAGONSは、2009年に米ラスベガスで結成。Dan Reynolds(Vo)、Wayne Sermon(Gt)、Ben McKee(Ba)、Daniel Platzman(Dr)からなる4人組バンドだ。MUSEやCOLDPLAYのような英国バンドの影響も感じさせつつ、同郷のTHE KILLERSのようにラスベガスらしい華やかな表現も特徴的。そして何よりDan Reynoldsの神秘的で個性的な歌声が、どの曲を聴いても一瞬でIMAGINE DRAGONSとわかる、圧倒的な個性のひとつとなっている。グラミー賞受賞シングル「Radioactive」(2012年)は、日本でもラジオや有線など各地でパワー・プレイされ、"SUMMER SONIC 2013"で来日。洋楽ロック・ファンにとどまらず、一気に幅広い層に認知されていった。IMAGINE DRAGONSの型にはまらないジャンルレスな音楽性は、ポップ・ソングともダンス・ミュージックとも親和性があり、また和太鼓を取り入れたパフォーマンスなど、ワールドワイドなエッセンスを柔軟に取り入れる遊び心やセンスもまた、幅広く支持される要因だろう。ロックが下火になった2010年以降の音楽シーンにおいて、彼らがロックというカルチャーの延命に一役買った存在のひとつであることは間違いない。


Imagine Dragons - Radioactive


そんな流れも踏まえて、今作『Loom』は本当にIMAGINE DRAGONSの真骨頂とも言うべき作品だ。ひとつの表現にとらわれず、貪欲にカッコいい要素を取り入れ、それをIMAGINE DRAGONSテイストに仕立ててアウトプットする。クロスオーバーな音楽性のバンドは数いれど、彼らの独特なセンスは誰にもマネできない。
アッパーでテンションの上がる楽曲「Wake Up」がアルバムの冒頭を飾り、"もうすでに名盤!"と確信できてしまう。続いて、先行シングルとなっている「Nice To Meet You」は、軽いタッチで描かれる、今までありそうでなかった新しいテイストの爽やかでポップなナンバー。そして、こちらも先行シングルの「Eyes Closed」は、ヒップホップの重厚感がドンと響き、そこにドラマチックなメロディが被さってくるような、完全にロックの枠から飛び出した楽曲。振れ幅の大きさにクラクラしながらも聴き進めると、ラテンのノリも入った楽曲や、R&Bのグルーヴ感としっとりとしたメロディで聴かせる楽曲など、新鮮で個性に満ちた楽曲が続く。


Imagine Dragons - Nice to Meet You (Official Music Video)


アルバムのタイトルである"Loom"は"現れる、出現する"といった意味の単語で、ジャケット・アートワークに描かれた地平線と太陽を見ると、日の出や何か新しい物語の始まりを示唆しているようだ(Dan Reynoldsはアートワークについて、夕日か朝日か終わりか始まりかは、同じに見えると称している)。また"Loom"には"織り機"という意味もあるのだが、様々な音楽ジャンルの要素を糸とすれば、それらを織り上げて自分たちのオリジナルなサウンドとして1枚の反物に仕立てる、彼らのアルバム作りという作業を表しているダブル・ミーニングのようにも思える。今作は、彼らIMAGINE DRAGONSというポップ・ロック・シーンの稀有な才能が、多彩な音楽要素を組み合わせ1枚のアルバムとして形にし、リスナーに新しい世界を見せてくれる、まさしく"Loom"という言葉がぴったりの作品なのだ。


▼リリース情報
IMAGINE DRAGONS
ニュー・アルバム
『Loom』
UICS-1405_bWA_extralarge.png
NOW ON SALE
UICS-1405/¥2,860(税込)
[UNIVERSAL INTERNATIONAL]
歌詞/対訳/ボーナストラック収録

1. Wake Up
2. Nice To Meet You
3. Eyes Closed
4. Take Me To The Beach
5. In Your Corner
6. Gods Don't Pray
7. Don't Forget Me
8. Kid
9. Fire In These Hills
10. Eyes Closed (Feat. J Balvin) ※日本盤ボーナス・トラック
11. Children Of The Sky (A Starfield Song) ※日本盤ボーナス・トラック
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