Japanese
十五少女
2022年09月号掲載
Writer 小椋 シゲコ
十五少女をひと言で表すなら――
音楽性と歌がエグいアイドル(そしてバーチャル)
だ。
いつものことだが、記事を書くときには取材対象をインターネットでサーチする。ある日、十五少女を検索すると"エグい"という評価に出会った。"良い"でも"エモい"でもなくエグい......。いざ自分が十五少女に触れてみると、"なるほど"と感じ入り、早速使わせてもらうことにした。
十五少女は、まず音楽性がエグい。そして、そのディープな音楽性ゆえに複雑な構成や予想外の展開を余儀なくされた激ムズな楽曲を、難なく歌いこなす歌唱力も本当にエグい。その声も、エグエモからエグかわまで十五人十五色のエグさを有しており、どんなジャンルにも対応し得る高いスキルが垣間見える。
書き手としての失格を露呈するような話だが、そもそも"エグい"とはどんな意味を持っているのか? 急に不安になり辞書を引いてみると、いくつか想定通りの説明が並んでいる中から、十五少女を形容するに最も適したものを見つけた。
"どぎつい様を指す"。これを見て、なんだか腑に落ちた。十五少女の曲や詞、世界観、ヴィジュアル......何もかもに"極端"が満ち溢れているのだ。つまり、エグい=振り切れたところに照準が当てられており、それこそが彼女たちが十五少女たる所以なのだ。
今回は、そのエグさをふたつにまとめてみた。まずは、圧倒的な歌唱力と詞の深度から生まれるエグさについて。
十五少女は、活動のテーマにジュブナイル(少年/少女向けに描かれた小説や映画)を掲げている。時に夜なんて明けなければいいと断言し、大人になることを拒絶する心に寄り添う一方で、結局、誰のもとにも平等に朝は来て、眩しい太陽が不安に影をつけるという残酷なリアリティを容赦なく突きつけたりもする。
最新EPの『ASTRONOTES』は、気鋭のロック系ボカロP、ichicaが全曲の作/プロデュースを手掛けた(子供でいられる)最後の夏の感傷を描いた作品。MACHINE GUN KELLYやYUNGBLUDなどを中心に欧米で盛り上がりを見せる90年代~00年代のポップ・パンクやエモのリヴァイヴァルにも通ずる次世代=ポスト・パンクなサウンドは、決して明るくはない爽快さや疾走感で胸を締めつけてくる。
それは間違いなく、ドキュメンタリー映画のような的確さと文学的な甘酸っぱさを兼ね備えた歌詞のせいだ。広大な宇宙(そら)と小さな自分を対比させることで、多感な時期に誰しもが感じる社会とのズレや孤立を緻密に写生し、夏の終わりに向かって坂道を転げ落ちていくように加速していく焦燥を煽る。
ギターが奏でるとてつもなくエモいフレーズは、現在進行形の十代の若者にとっては、今確かにここにある感覚の輪郭をクリアにし、過去完了形のかつての若者にとっては、すっかり忘れていたノスタルジックな苦みを思い出させてくれるだろう。ただし、後者はその代償に、とうに失くしたと思い込んでいた心の柔らかで弱い部分をギュッと握られるハメになる。それを我々はエモと呼ぶ。
十 五 少 女(15 Voices)/// 春とレム 」Music Video
収録シングルの(歌詞に由来した)キャッチコピーを見ていくと――
「Alien」
最後の夜に残る灰の確かな熱を忘れないでいる。
「アトム」
本当の空の色を知らないでいて欲しい。どうか、君だけは綺麗なままでいて。
「春とレム」
間違ってたのは世界の方で、何も悲しいことはないから。
君だけが立ち止まった、ただそれだけなんだ。
と、どこまでも青い世界が続いている。
十 五 少 女(15 Voices)/// アッシュ 」Short Music Video
そこには、一度しかない最後の夏に、大人になりきれない自分だけが周囲から取り残されていくような感覚でいる主人公の気持ちが丁寧に描かれている。"些細でも確かにある(あるいは、あった)絶望"にシンクロしたら最後、それをさらに深めるからこそ十五少女はエグい。
その役割を担っているのは、講談社による十五少女を主人公とした小説たちだ。各キャラクターの生い立ちやバックボーンを掘り下げる前日譚という位置づけで、今春からWEB連載が始まった。執筆を手掛けているのは"ルヴォワール"シリーズで人気を博す円居挽と、第54回メフィスト賞を受賞した望月拓海のふたり。
『ASTRONOTES』に収録されている曲はすべて、これらの小説のテーマ・ソングになっている。別れた恋人と観に行った映画のテーマ・ソングが、自らのリアルな経験(失恋)と劇中のストーリーとが相まってより大きく感情を揺さぶるように、リスナー自身の青春と十五少女の物語の相乗効果によって生まれる感情の振れ幅は、普通のそれより遥かに大きい。だから、エグい。
十五少女の音楽は聴くだけでは終われないし、その小説も読むだけでは終わらない。聴いて読んで、読んで聴いてをループするたび、ノスタルジアの深度はスパイラル的に成長し、僕らの歌になっていくエグさがある。さらに、十五声あることによって、リスナーであり読者でもある人々の琴線に触れる可能性の高い歌は、振れ幅をアンプ(増幅)させるだけの強力なパワーを宿していることも忘れずに触れておきたい。
【十五少女の音楽と小説の楽しみ方】
①まずは、テーマ・ソングを用いた小説のティーザー映像を観る
十 五 少 女(15 Voices)/// 前日譚小説:秋子エミと秋子ナミの場合 」PV(music:Eureka)
十 五 少 女(15 Voices)/// 前日譚小説:竹虎レオナの場合 」PV(music:アトム)
②小説を読む
③テーマ・ソングを聴き返すと、より深く歌詞とメロディが突き刺さる
(オススメは、YouTubeのミュージック・ビデオ)
十 五 少 女(15 Voices)/// Eureka 」Music Video
十 五 少 女(15 Voices)/// アトム 」Music Video
十五少女は、次なる"今"の到来を予感させてくれるアーティストだ
もうひとつは、今をときめくサイバーパンクをいち早くフィーチャーした世界観のエグさだ。
"エモ"を再定義する"サイバーパンク×ジュブナイル"アーティストであるということ
十五少女 | Skream! 特集
十 五 少 女(15 Voices)/// Alien 」Music Video
Character Design:ケイゴイノウエ
Graphic Design:ゆうたONE
Concept Art:Max Prentis
3D Visual Works:藤田将
ここ数年、世界を襲っている未曾有のパンデミックは、メタバースなどの仮想空間がゲームだけでなく音楽のフィールドとしても有用なことを、広く人々に認知させた。結果、再興したのが80年代(映画"ブレードランナー"や漫画"AKIRA")に起源を持ち、近未来のディストピアを描くサイバーパンクだ。十五少女は、その最先端で尖りに尖った活躍を見せるクリエイターをいち早く起用することで、ヴィジュアル面でも唯一無二のエグさを手にしている。
十 五 少 女(15 Voices)/// 子 供 都 市 」Teaser Movie
特にキャラクター・デザインを務めるケイゴイノウエは、国内ではAdoやEveとのコラボレーションで知られる一方、今年に入ってからは自身の作品がNFTマーケットで高額で取引されるなど世界的な注目を集めている。まさにサイバーパンクを題材とした"COMMON ERA 2025"は、"RTFKT Studios"(仮想空間のみで着用できるバーチャルスニーカーを販売するブランドで現在は"Nike"の傘下)のファウンダーのひとりであるBenoit Pagottoに落札されたことでも大きな話題を呼んだ。
バーチャルな世界に生まれ落ちた生身を持たないアイドルは、歌声ひとつを武器に、音楽面では現代におけるポスト・パンク、ヴィジュアル面ではサイバーパンクというふたつのパンクを提げ、新たな時代の幕開けを告げようとしている。
"音楽的には、ライヴハウスで見てみたいけど、バーチャルだしな......"なんて思っていたら、どうやらこの秋から無料のオンライン・ライヴも始まるらしく、バーチャル・アイドルならではの今っぽい取り組みは、それはそれで楽しみだ。さらに、現実世界のアーティストをフィーチャリングした"RE:SING'LE プロジェクト"なる企画も進行中で、これまでに水槽、楠木ともりなどが参加している。最新シングル「八月三十二日」には、Spotify"RADAR: Early Noise 2022"に選出されるなど注目度/人気共に急上昇中の菅原 圭を迎えた別バージョンが存在している。
十 五 少 女(15 Voices)/// 八月三十二日 」Teaser Movie
十 五 少 女(15 Voices)/// 八月三十二日(葉月ケイの場合 / CV:菅原圭)」Teaser Movie
近い将来、リアルかバーチャルかというカテゴリも意味をなさなくなるだろう。十五少女は、その最前線であらゆる境界線を溶かそうとしているのかも知れない。
▼リリース情報
十五少女
ニューEP
『ASTRONOTES』
NOW ON SALE
[maximum10]
1. 漂流
2. Alien
3. アトム
4. アッシュ
5. 春とレム
6. Eureka
配信はこちら
十五少女
シングル
「八月三十二日」
NOW ON SALE
配信はこちら
※菅原 圭が歌唱する「八月三十二日(葉月ケイの場合)」はこちら
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