Japanese
ジェニーハイ
2019年12月号掲載
Writer 蜂須賀 ちなみ
tricotの中嶋イッキュウ(Vo)、川谷絵音(Gt/Produce)、野性爆弾のくっきー!(Ba)、小籔千豊(Dr)、新垣 隆(Key)によるバンド、ジェニーハイ。もともと、BSスカパー!のバラエティ番組"BAZOOKA!!!"の知名度を上げるために始動したプロジェクトであるこのバンドは、イッキュウ、くっきー!、小籔によって結成。その後、3人からのアプローチにより、川谷がプロデューサー&ギターに就任。さらに小籔が"俺の知り合いで一番えげつないキーボード"として推薦した新垣をメンバーに迎えたことにより、この5人に固まった。川谷がプロデューサー就任時に"このバンドにはそれぞれ違う形の天才が集まっている"と称したことから、"天才を超えよう"という意味を込めて、バンド名は"ジェニーハイ"に。
5つの才覚の邂逅と融合、その先に待つバンドの未来図とは
バンドマン、お笑い芸人、現代音楽家。この編成は前代未聞というか、あまりにも異色の組み合わせであるため、バンドの本格始動が発表された2017年10月時点では、どうせ企画モノだろうと様子をうかがっていた人もいたかもしれない。しかし翌年3月に配信リリースされたデビュー曲「片目で異常に恋してる」、そして10月にリリースされた1stミニ・アルバム『ジェニーハイ』を聴いて、その認識を改めた人がほとんどだったのでは。"2018 FNS歌謡祭"や"JOIN ALIVE 2018"、"KOYABU SONIC 2018"、"METROCK 2019"に出演するなど、"BAZOOKA!!!"を飛び出しながら"音楽番組や音楽フェスなどへの出演"という当初の目標もじわじわと実現し、規格外の存在感を発揮してきたジェニーハイ。そんな彼らが11月27日、初のフル・アルバム『ジェニーハイストーリー』をリリースする。
『ジェニーハイストーリー』の収録曲は10曲で、うち「シャミナミ」、「ジェニーハイラプソディー」、「グータラ節」が先行配信済み。通常盤はその10曲が収録されたCD1枚仕様だが、初回限定盤は2CD+DVD仕様。CDのDisc2には、10曲のオフ・ヴォーカル・バージョン+「まるで幸せ」の川谷ヴォーカル・バージョンが収録されているという。DVDの収録内容は、MVメイキング映像と「プリマドンナ」のMV。「プリマドンナ」のMVは今後YouTubeなどで公開する予定もないらしく、貴重な映像となっている。
アルバムの冒頭を飾るのは「シャミナミ」。この1曲だけで非常に語り甲斐がある。イッキュウのハイトーンなヴォーカルと鍵盤の滑らかなリフから始まるこの曲は、軽快なアッパー・チューン。イントロから続くリフを中心とした鍵盤の複雑な旋律、ヴォーカルによる歌メロ、両者の間を縫うように動くギター......と上モノはパズルのように精巧に組み立てられている。特に2番Aメロ~Bメロがすごい。それぞれ異なる楽器から放出された音の粒が同じ方向へ転がり、大河になって一気に流れ出すような展開は壮観だ。上モノはもはやプログレだが、一方リズム隊の動きはシンプルで、踊れる要素もある。歌詞のテーマは失恋で、テーマとしては普遍的ではあるが、川谷特有のワード・センスがこれでもかと炸裂している。ピックアップしたい箇所はたくさんあるが、例えば"見た目より中身で勝負"的な嘆きを"ハートの分譲価格は億越えなのに"と表しているところなんて発想がかなり面白いし、歌詞の一人称が変わることを明言するようなフレーズも斬新だ。
息をするように変拍子を操るバンド、tricotのヴォーカリスト&ギタリストであるイッキュウ(ジェニーハイでは楽器を持たずヴォーカルのみを担当)。現代音楽の作曲家として知られ、卓越した腕を持つプレイヤーでもある新垣。音楽を生業としているふたりに比べれば演奏家としてのキャリアは浅いが、ジェニーハイ以前からバンド/ユニットのメンバーとして音楽活動を行っていたこともあってか(そしておそらく相当練習したのだろう)、基礎的な部分は申し分なしと言えるくっきー!、小籔。これだけ個性豊かな人たちが揃っているのだからもっと取っ散らかった音が鳴っていても不思議ではないのに、アンサンブルには品があり、バンドとしてのまとまりが感じられるのがすごい。"個性"のひと言以上のものを感じさせる4人それぞれのセンス、そして彼らを束ねる川谷の手腕と作曲力が、この1曲から十分に伝わってくる。
「シャミナミ」の最後の音のチューニングが徐々に下がっていき、やや不穏さのある雰囲気のなか始まるのが「ダイエッター典子」。この曲はギターとベースの音が前面に打ち出されたロック色強めの曲であり、前曲とは異なるバンドの一面を印象づける。"ダイエットをしたいのにタピオカがやめられない"と葛藤する女子の心情を描いた歌詞はキュートで微笑ましいが、ラストは予想の斜め上を行く展開が待っているため、そこにも注目して聴いてみてほしい。そしてこの曲も2番Aメロが楽しい。というかジェニーハイの曲は、2番において、1番では見受けられなかったような仕掛けが仕組まれているパターンが多いように思う。
3曲目の「不便な可愛げ feat アイナ・ジ・エンド(BiSH)」は、ジェニーハイ初のコラボ曲。ジェニーハイの曲は基本的に譜面上の情報量が多い印象があるが、この曲に関してはイッキュウとアイナのヴォーカルを聴かせるため、オケはわりと控えめ。強さと儚さ、その両面を感じさせるツイン・ヴォーカルを思う存分堪能することができる。ハモったときが特に極上だ。続く「ジェニーハイラプソディー」は、『ジェニーハイ』における「ジェニーハイのテーマ」のような自己紹介ソング(とはいえ最初の1分弱は全然関係ないことを歌っているが)。打ち込みによるサイケなトラックをバックに、5人が入れ替わり立ち替わりラップするシュールな曲で、サビのメロディは特に癖になる。この曲はMVも小粋で素晴らしいため、ぜひチェックしてみてほしい。監督は、新進気鋭の映画監督である酒井麻衣で、「シャミナミ」のMVも彼女が手掛けている。
ヴォーカル&鍵盤が繰り返すフレーズによる横の流れを主軸としつつ、曲が進むにつれて、リズムが強調されるようになり、コーラスも重なって音像的な広がりを見せ......と非常にドラマチックな展開をする「プリマドンナ」が前半のラスト。その後は、早口言葉のように"ヘチマ"というワードを繰り返す「ヘチマラップ」があり、"寝ても寝ても午前中なら良いのに"、"食べても食べても太らなきゃ良いのに"といったフレーズが共感を呼ぶ「グータラ節」があり、打ち込み×5人のラップ(&台詞?)による「愛しのジェニー」があり、「バレンタイン泥棒」があり......と、掴みどころのない曲が続く。5人とも歌えるし、メンバーが担当するギター、ベース、ドラム、キーボード以外の音も積極的に取り入れる方向性のため、ジェニーハイには基本的に編成による表現の制約がない。その特色が自由で柔軟な発想の源になっているのかもしれない。
そして一転、ラストの「まるで幸せ」はいわゆるプロポーズ・ソングで、ここに来てまさかの王道バラード。ものすごい意表の突き方である。初めてのフル・アルバムを制作し終えたあと、その作品のことを"名刺代わりの作品"と自己評価するアーティストも少なくないと思うが、ジェニーハイに関しては、この10曲を聴いてもなお底が見えない感じがある。むしろ、いったいこのバンドはなんなのだろうかと、さらに謎が深まるような感じだ。この得体の知れなさこそがバンドの魅力なのだろう。理不尽を面白がり、自由であろうとする彼らだからこそのポップ・ミュージックにぜひ触れてみてほしい。
▼リリース情報
ジェニーハイ
1stフル・アルバム
『ジェニーハイストーリー』
2019.11.27 ON SALE
[unBORDE]
【初回限定盤】(2CD+DVD)
WPZL-31717~9/¥4,500(税別)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
【通常盤】(CD)
WPCL-13148/¥3,000(税別)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
[CD] ※共通
1 シャミナミ ※カンテレ・フジテレビ系『華丸大吉&千鳥のテッパンいただきます!』エンディング曲
2 ダイエッター典子
3 不便な可愛げ feat アイナ・ジ・エンド(BiSH)
4 ジェニーハイラプソディー
5 プリマドンナ
6 ヘチマラップ
7 グータラ節
8 愛しのジェニー
9 バレンタイン泥棒
10 まるで幸せ
[Disc2] ※初回限定盤のみ
1 シャミナミ [INSTRUMENTAL]
2 ダイエッター典子 [INSTRUMENTAL]
3 不便な可愛げ feat.アイナ・ジ・エンド(BiSH) [INSTRUMENTAL]
4 ジェニーハイラプソディー [INSTRUMENTAL]
5 プリマドンナ [INSTRUMENTAL]
6 ヘチマラップ [INSTRUMENTAL]
7 グータラ節 [INSTRUMENTAL]
8 愛しのジェニー [INSTRUMENTAL]
9 バレンタイン泥棒 [INSTRUMENTAL]
10 まるで幸せ [INSTRUMENTAL]
11 まるで幸せ [川谷絵音 Vocal Ver.]
[DVD] ※初回限定盤のみ
Music Video メイキング映像 (ナレーション by 川谷絵音)
「プリマドンナ」Music Video
・CD購入特典:イラストレーター SHASHAMIN描き下ろしイラストによる"ジェニーハイカード"(全6種)
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