Overseas
DEATH CAB FOR CUTIE
2015年04月号掲載
Writer 天野 史彬
ダメだよ、泣きそうだ。アルバムの真ん中、Track.5「You've Haunted Me All My Life」とTrack.6「Hold No Guns」――聴こえてくるのはアコギの美しくて、でも悲しげな音色。こんな音、この数年、あなたたちは奏でてこなかっただろう? もっとダイナミックでプログレッシヴな音の桃源郷を、あなたたちは作り上げてきたはずだろう? その後に続くTrack.7「Everything's A Ceiling」とTrack.8「Good Help (Is So Hard To Find)」は、力強い。でも、この力強さが、どうしたって、切ない――DEATH CAB FOR CUTIE(以下:DCFC)の8thアルバム『Kintsugi』。"Kintsugi"とは日本語の"金継ぎ"のことで、陶磁器の伝統的な修復方法のこと。壊れかけた陶磁器の割れ目の部分を金や銀などの貴金属で継ぎ、その割れ目を隠すのではなくむしろ際立たせることで、傷そのものをデザインとして見せる手法なのだという。これはあまりに......そう、あまりに象徴的なタイトルだ。去年、DCFCはヴォーカルのBen Gibbardと並ぶ中心人物、ギターのChris Wallaの脱退を発表した。本作は、Chrisが抜けた状態で発表される最初のアルバムである。
DCFCとは、言うなればBenとChrisという2つの稀有な才能の出会いそのものだった。そもそもBenのソロ・プロジェクトにChrisを始めとするメンバーを加えることで始まったDCFCがその真価を発揮したのは、初めてメンバー全員がアレンジにも参加した2003年の4thアルバム『Transatlanticism』。それまでの"USインディーの良心"的立ち位置を逸脱し、唯一無二な存在感を世に知らしめたこのアルバムでDCFCが確立したスタイル――それは端的に言えば、"普遍的な歌を、徹底的な美意識と共に聴かせる"というものだった。それはつまり、メイン・ソングライターのBen(=普遍的な歌)と、1stのころよりプロデューサーの位置にも着いていたChris(=徹底的な美意識)、それぞれの才能の絶妙な融合地点をバンドが見出したことも示していた。多くの人々の心を捉えるメロディと歌心、そして熟練のリスナーも唸らせる繊細かつ綿密なサウンド・メイク。このふたつの要素が結びついた要因として、バンドの成熟はもちろん、Chrisがそのサウンド・メーカーとしての職人的手腕を覚醒させたことが大きかったということは、その後の彼の外部プロデュースを含むソロ・ワークを見れば想像に難くない。そして、それからの約10年間、DCFCは大衆性とクリエイティヴィティを両立する奇跡的な存在として、世界のオルタナティヴ・ロック・シーンを牽引し続けてきたのだ。
Chris Wallaという巨大な柱の喪失が、本作『Kintsugi』の制作に具体的にどのような影響を及ぼしたのかはわからない。ただ、当初からChrisではなくRich Costey(MUSEやFRANZ FERDINANDなどの作品を手掛ける)という初の外部プロデューサーを迎えてレコーディングに入っていたこと、そしてレコーディング終了後にChrisが発表した声明には、決してバンドやRichに対する不満などは書かれておらず、むしろ穏やかさすら宿す文面であったこと、しかし4人で作り始めたアルバムを3人の状態でリリースすること......考えれば考えるほど、結成から20年近く経つDCFCが、このタイミングでバンドとしてのバランスを崩しかけたことはたしかなのだと思う。しかし彼らは、それでも止まることなく歩むことを選んだ。完成したアルバムを『Kintsugi』と名付けることで、その生傷すら永遠の中に封じ込めた。このアルバムでは、"鉄壁の美"と言えるほどの重量感と完成度を誇った前作『Codes And Keys』では目立つことのなかったギター・サウンドが復活している。質感として近いのは前々作の『Narrow Stairs』か、あるいはアルバム全体を覆う純度の高いメランコリーと"揺らぎ"は、もはや『Transatlanticism』より前の初期3作にすら通じているといえるだろう。すべてのメロディと歌声は、バンドの傷跡をそっと撫でるかのような慈しみを滲ませながら流れていく。悲しくて生々しくて、しかし息をのむほど美しい傷跡と共に、DEATH CAB FOR CUTIEは再び歩き始めた。

DEATH CAB FOR CUTIE
『Kintsugi』
[WARNER MUSIC JAPAN]
WPCR-16418 ¥2,457(税別)
NOW ON SALE
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