Overseas
MANIC STREET PREACHERS
2010年09月号掲載
Writer 伊藤 洋輔
“あるバンドが10枚目のアルバムをリリースする頃には、まだファンはライヴに来てくれるかもしれないけど、これまでのアルバムが長い間家でほこりを被っている事実をバンド側は知っている。俺達はデビューした時から、できるだけたくさんの人に俺達のメッセージを聞いてほしいと思っている。だからそんな状況は起こってはほしくないし、あらゆるメディアで俺達の音楽が流れるのを聴きたいんだ。でも最近はみんな、ロックの時代は終わりだなんて嘆いているよね。ハッキリ言って俺にはよく分からないな”と、Nicky Wire(Vo&Ba)は冷静にバンドを客観視する。
前作『Journal For Plague Lovers』から僅か1年4ヶ月、早くも“マスコミに向けた最後の一撃”なるメッセージを掲げ新作『Postcards From A Young Man』がリリースされる。そしてこの新作が、MANIC STREET PREACHERSの記念すべき10枚目のアルバムなのだ。当然だが、この記録はそう容易いものではない。驚くべきは、ベテラン・バンドとは思えないハイペース。この要因として、やはり前作での大胆な制作が影響されているように思える。それは、“4人のMANICS”として制作された点。James Dean Bradfield(Vo&Gt)、Nicky Wire、Sean Moore(Dr)、そしてなんと、クレジットには“All Lyrics Richard Edwards”と表記されているのだ。ご承知の通り、オリジナル・メンバーであり、バンドの思想を体現したアイコンであり、95年2月突如として失踪し現在も行方不明のギタリスト、Richey Jamesである。彼が失踪直前まで書き留めていた詩集を全曲に引用し、名エンジニアSteve Albiniの協力を得て制作された『Journal For Plague Lovers』は、彼らの最高傑作と呼び声ある『Holy Bible』の“第2作”と位置付けられたものだった。この動きへの個人的な推測だが、それまで冷ややかな評価を示していた批評家を唸らせ、Richeyと共に制作された最後のアルバム『Holy Bible』を再び目指すという意図は、原点回帰でありながらRicheyの悲劇を完結させ、真意としての新生MANICSの1歩を踏み出そうとしたのではないか(奇しくもこの制作時に英国裁判所はRicheyの死亡宣告を発表した)。その決断の力強さが創作意識を刺激し、彼らを突き動かした……新作に漲るポジティヴなムードからもそう予感した。では、ここで新作の詳細を紹介する前に彼らのキャリアを振り返っておこう。まるで、ロックンロールの悲劇と幸福を体現したヒストリーだ。
88年ウェールズにて結成。幼馴染の4人組はグラム・パンク風の装いと強力な美メロ、政治/文学/哲学を詰め込んだ歌詞の知性とパンキッシュな肉体性の融合で注目される。しかしこの時期は、彼らの音楽そのものよりも“過激な宣戦布告”が話題となり、“John Lenonが死んだ時は笑っちまった”、“世界中でNO.1を獲るデビュー・アルバムを作る。それで解散だ!”という発言まで飛び出し、ついにはあの事件を起こしてしまう。91年5月、NME誌の記者がセンセーショナルな発言に対しバンドを偽物と軽蔑したことから、RicheyはMANICSを本物と証明するため自分の左手に剃刀で「4REAL」と刻み込み、17針も縫う大怪我を負うことになる。噴き出す鮮血までも収めたこの瞬間の強烈な写真は、バンドの思想(または無鉄砲)を象徴した1枚として有名だ。さまざまな物議を醸しながらも92年デビュー・アルバム『Generation Terrorists』を発表するが、結果NO.1は獲れず解散宣言を撤回、バンド存続の道を選ぶことになる。続く93年『Gold Against The Soul』を発表。全英チャート最高位は前作以上の結果を示したものの、依然として批評家の冷遇は続いていた。そんな状況を一変したのが94年、セルフ・プロデュースで制作された『Holy Bible』である。高評価からバンドの本格的なアメリカ進出も見えてきた矢先だったが、精神病を患っていたRicheyが失踪してしまう。バンドは活動休止に入るが、Richeyの家族の願いもあり活動再開。96年『Everything Must Go』を発表し、この復活作が皮肉にも悲劇の代償を受けるかのように世界中で大ヒットとなる。98年『This Is My Truth Tell Me Yours』では念願の全英1位を獲得。99年のブリッド・アウォードではベスト・アルバムとベスト・ブリティッシュ・バンドの2冠に選ばれ、名実共に国民的なバンドに成長する。01年には『Know Your Enemy』を発表し、この時期はCastroが見守る中、西欧のロック・バンドとして史上初の試みであったキューバ公演も成功させる。その後、キャリアを総括するように02年ベスト・アルバム『Forever Delayed』を出すが、この流れで巷に思わぬ解散の噂が広まる一幕も。間もなく『Life Blood』(04年)で噂を一蹴するが、ここで休暇を意味した2年間の活動休止を宣言する。この期間にJamesとNickyはソロ活動に入りファンを驚かせたが、07年『Send Away The Tigers』で帰還。新たなピークを示すように全英2位を記録した。そして前述した09年『Journal For Plague Lovers』を発表し、新作へと続くのだ。
『Postcards From A Young Man』は瑞々しいエモーショナルが炸裂した素晴らしいアルバムだ。Jamesの力強い歌声が漲るリード・トラック「(It’s Not War)Just The End Of Love」、まさにMANICS節を象徴した壮大なクラシカル・ロック「Postcards From A Young Man」、ゲスト参加したIan McCullochとのユニゾンが男気溢れる渋さに彩られた「Some Kind Of Nothingness」、優雅で心地良いミドル・チューン「Hazleton Avenue」など、圧倒的な完成度を誇るアルバムとしての期待が高まるものだ。その他にもJohn CaleにDuff McKaganなんて意外なゲストも注目だし、ジャケットのアートワークには俳優のTim Rothが起用されている。
Jamesは“最近、テレビで専門家と名乗る奴が、もう音楽ビジネスの時代は終わりだなんてベラベラ話している。そういうのを見てると、逆に曲を書こうという衝動に駆られるんだよね。俺が芸術としての音楽を守ってやるんだ!って思うんだ”と語っている。なんて素晴らしい言葉だ。彼は今でも芸術とは時代を動かすものと信じている。そんな彼が芸術として注ぎ込んだのがロックンロールなのだ。ロックンロールには重要な何かがあるからこそ、このバンドは歩み続ける。どんな批判や悲劇に襲われようと歩み続けるのだ。
最後に、英国の彫刻家Henry Mooreの言葉を引用しよう。“人生における秘訣とは、自分自身の一生をかけれること、日々の1分1秒も大切にしたいと思えることを見つけることだ。そこで最も重要なのは、その夢や目標が簡単には叶えられないことである”
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