Overseas
MANIC STREET PREACHERS
2014年07月号掲載
Writer 新谷 洋子
MANIC STREET PREACHERSとは、そもそも比較対象がないバンドである。結成から約30年にわたって、途中メンバーを1人失ったものの家族同然の絆を誇り、ウェールズ人、労働者階級、反体制/左翼イデオロギーという揺るがぬアイデンティティに則った尽きせぬアイデアをもとに、コンスタントに良質のアルバムを制作。毎回明確なコンセプトを掲げ、同じような作品は2枚とないし、特定のシーンに属したことも流行に与したこともなく、女性に対する性的搾取(「Little Baby Nothing」)やスペイン内戦(「If You Tolerate This Your Children Will Be Next(輝ける世代のために)」)といった題材を扱いながらも、アルバムは常にUKチャートの上位につけ、シングルにいたっては、1991年のメジャー・デビュー曲から34曲連続トップ40入りという快挙を達成。2011年末に登場したシングル集を『National Treasures(=国宝)』と命名したのも、そういう異色の国民的バンドとして自らのポジションを皮肉ったものなのだろう。
その『National Treasures』でバンドの歴史にひとつの区切りをつけたマニックス。当時メンバーが"しばらく姿を消す"と宣言したことから、そろそろペースを落とすのかと思いきや、彼らはなんと2枚のアルバムを完成させて速やかにシーンに帰ってきた。理由は単純、新たに書き上げた曲の数々が、2つの異なる趣向に分かれていたのだという。"不思議な体験だったよ。初めて、2つのヴァージョンのマニックスが同時に機能しているみたいに感じたんだ"とJamesは当時を回想する。そこで1枚に無理に収めようとせずに、2枚のアルバムを同時進行でレコーディング。まずは11作目にあたる前編『Rewind The Film』を昨年9月に送り出し、ここに約束通り、後編の12作目『Futurology<未来派宣言>』を届けてくれたというわけだ。
こうして2枚を並べて聴くと、なるほど、ベクトルは見事なまでに違う。『Rewind The Film』での彼らの目線は終始内向きだった。作詞を担当するNicky Wire(Ba)は故郷ウェールズを背景に自身の人生とバンドの歴史を振り返り、色んな意味での、逃れられない"老い"や"死"を描写。彼らが失った人々のことだったり、打ち砕かれた理想だったり......。そして自分たちの行動や信条に価値はあったのかと自問し、時には敗北を認めてさえいる。そんな内省的な言葉を引き立てるべく、音作り担当のJames Dean Bradfield(Vo/Gt)とSean Moore(Dr)は、バンド史上初めてアコースティック主体のサウンド・プロダクションに挑戦。時折細やかなエレクトロニック・テクスチュアやホーンを加えつつも、エレキを排除し、かつてなく無防備に弱さをさらすアルバムを仕上げた。
一方、この度登場する『Futurology<未来派宣言>』では、何もかもが逆転。3人の視線の先には未来があり、それは外側に、ヨーロッパ本土へと向けられている。インスピレーションについてNickyは次のように話す。"前回のヨーロッパ・ツアー中に僕らは、KRAFTWERKやNEU!、Andrew Weatherall、POPOL VUH、CABARET VOLTAIREなんかのアルバムを聴きながら、アウトバーンを旅することの魅力に改めて気付いたんだ。フューチャリスティックなのに周囲は太古の森に囲まれた、終わりのない道を旅することの魅力にね。それはマジカルな気分で、そんな風景の中を旅しながら、頭の中でサントラを思い浮かべていたんだよ"だから聴こえてくるのはまさに、ドイツ産のクラウトロックの硬質なモトリック・ビートであり、Giorgio Moroderのディスコのグルーヴであり、UKポスト・パンクのアナログ・シンセであり、鋭角的なギター・リフ。まるでカラフルなジオメトリック・パターンが躍動しているかのような、汎ヨーロッパ的レトロ・フューチャー・サウンドを鳴らしている。
歌詞にもやはりヨーロッパ各地でのバンドの体験を反映させると同時に、これまでと同じく、文学やアートや政治からも題材を引用。特に今回は20世紀前半のヨーロッパを席巻した、ドイツ表現主義、イタリアの未来派、ロシア・アヴァンギャルドといったモダニズム・アートに、Nickyはモチーフを求めた。"僕は音楽を聴くよりアートを鑑賞することでインスパイアされることが多い。妄想だと思われようと未だ僕らは、4分間のアートを創造するというヴィジョンを抱いて曲を書いているんだ。それを証明するのはどんどん難しくなっているのかもしれないけど、今もそれをコミュニケートしようと試みている。コミュニケーションこそが僕らの表現様式なのさ"
マニックスはまた、伝統を拒絶して新しい時代を切り拓いたモダニズムのアーティストたちに倣って、挑発的なスタンスをもここにきて取り戻している。『Rewind The Film』では、彼らの理想と逆行する保守党政権下の英国への幻滅感もダウナーなトーンに影響を及ぼしたそうだが、今作のトーンはいたって楽観的かつポジティヴ「Let's Go To War」が好例だ。ファンにこよなく愛されている名アンセム「You Love Us」と「The Masses Against The Classes」と共に3部作を成すこの曲は、紛争が金儲けの手段と化している今の世界を風刺すると同時に、常に問題を提起し世間を扇動せずにいられない、好戦的な自分たち自身を揶揄してもいる。"僕らの心の中での、戦争という比喩的な意味があるんだ。つまり"僕らはなぜ自分の意見を必死に叫び続けないと気が済まないんだろう?"と問いかけているのさ。これら3曲は、同じ解放感を僕に与えてくれる......もう一度だけ当たって砕けて燃え尽きようってね。僕らのまぬけな破滅的願望を分析しているんだよ"
このようにして、2枚の対照的なアルバムでまたもや新境地を拓いた彼ら。双方に共通するのは、従来以上の実験欲だ。というのも現在のマニックスは、ラジオ受けする曲を書いて、売れる作品を作ることにこだわっていないのである。もちろん今でも英国を代表するバンドであることに変わりはない。しかしポップやダンス音楽にロックが凌駕されている中で、最早ロックが世界を変えることはありえないのだという悲しくも否定できない事実を受け入れたことで、逆に心がふっ切れたと彼らは語っている。一切縛りのない白紙の状態に戻ったからこそ大胆になれたのだ、と。バンドの最高傑作と言えば1stや2ndであるのが常だが、11作目、12作目に待っていることも稀にある――そう、マニックスは比較対象がないバンドなのだから。
▼リリース情報
MANIC STREET PREACHERS
『Futurology』
2014.7.9 ON SALE

【デラックス・エディション】 2CD
SICP-4144~SICP-4145 ¥4,800(税別)
[amazon] [TOWER RECORDS] [HMV]

【通常盤】 CD
SICP-4146 ¥2,400(税別)
[amazon] [TOWER RECORDS] [HMV]
1. Futurology
2. Walk Me To The Bridge
3. Let's Go To War
4. The Next Jet To Leave Moscow
5. Europa Geht Durch Mich
6. Divine Youth
7. Sex, Power, Love And Money
8. Dreaming A City (Hugheskova)
9. Black Square
10. Between The Clock And The Bed
11. Misguided Missile
12. The View From Stow Hill
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