Japanese
Ochunism
Skream! マガジン 2026年01月号掲載
2025.12.21 @ダンスホール新世紀
Writer : 石角 友香 Photographer:加藤あゆ美
Ochunismが最新シングルのタイトルを冠した全国ツアー"Ochunism ONE MAN TOUR 2025 'Cosmic Love'"のファイナルを12月21日に鶯谷のダンスホール新世紀で開催した。同曲だけでなく、2025年に再びギアアップするきっかけとなったスマッシュ・ヒット「GIVE ME SHELTER」、そしてこの曲を含むEP『Strange,Dance,Rock』以降の新しいモードのOchunismを全開にしたこのツアー。バンドとしての存在意義に悩んでいた時間を過ごし、「GIVE ME SHELTER」が突破口になり、自然体のOchunismで音楽を心から楽しめばいいじゃない、というプロセスを踏んできたからこその、ストレンジでダンスでロックなオリジナリティ。それがステージから溢れ出すライヴを見せてくれた。
会場のダンスホール新世紀は社交ダンスや生演奏を楽しめる昭和のムードが漂い、いわゆるロック・バンドのライヴを実施するようになったのはここ最近だ。独特の雰囲気ながら、広いフロア、高さのあるステージが見やすそう。Ochunismがこの会場をどう使うのか楽しみにしていたところ、オープニングSEは宇宙船もしくは飛行機の離陸を思わせる環境音。メンバー5人が登場、と思ったらヴォーカルの凪渡はサブステージにいる。初っ端からワクワクする演出で放たれたのが「wakusei」。イクミンの生ドラムとokadaのMPCプレイのバランスは彼等の個性だ。
R&B寄りの聴かせる歌でグッと心に迫るスターターから、2曲目は凪渡がステージに降りてきての「Life」。音数を絞ったスロー・チューンだが、ギターのちゅーそんのリフは鋭く、ある種ハード・ロック的だ。それにしてもフロント3人のキャラ立ちが痛快で、特に金髪で短髪のちゅーそんはパンクスにもラッパーにも見える強い個性が際立つ。そして早くも3曲目に「GIVE ME SHELTER」を惜しげもなくドロップ。切なさをキャッチーさで押し上げるサビメロの良さは自然とフロアを盛り上げ、ウィスパーからファルセットまでを自在に操る凪渡のヴォーカルもオーディエンスの気持ちを熱くする。
嵐のようなSEから生とMPCプレイの融合が身体を揺さぶる4つ打ちナンバー「Zero Gravity」へ。歯切れのいいkakeru のベース・プレイはダンス・ロック・バンドの柱だ。エンジンのアイドリング音で始まる「Ride On!!」はちゅーそんの安定したギター・カッティングが冴え、ギター・ミュージック×ファンクを体現。自分たちらしさをラップ調の跳ねるヴォーカルで畳み掛ける凪渡の表現力の幅にも耳を奪われ、さらにアイソレーションぽい振付も楽しさを加えていく。スピーディにミニマムなファンク・チューン「Alien」へ接続すると、肉感的なリズムが際立つと共に、MPCプレイが曲をビルドして高みを作り出すEDM的なアプローチも聴かせた。フロントの凪渡やちゅーそんのパフォーマンスはもちろん、感覚に訴えるフックありまくりなライヴ・アレンジが繰り出される快感ったらない。
さらにまだTikTok上でしか公開していない新曲「MOYASU」。トラップ調で歌はメロウ、タイトなビートに移り変わっていく構成も面白く、早くもシンガロングが起こるのは曲の浸透度以上にこの場のムードゆえだろう。さらにメランコリックな歌始まりの「夢中」はダーク・ポップな色合いのライヴ・アレンジに更新されており、ブルージーなギター・ソロとの対比を見せていた。
体感の早さに反比例してもう8曲も演奏したところで、凪渡がツアーを通じて自分たちがオーディエンスからライヴやバンドの素晴らしさを教えてもらったと話し、イクミンに至っては感極まっている。実直さや各々のキャラクターが見えた後、サブステージでちゅーそんがアコギ、イクミンがカホンのアコースティック編成で「Sweetie」を披露。曲の途中で凪渡がサブステージに上がり、kakeruもokadaも参加、じっくり聴かせるナンバーながらどこか卒業式めいたヴァイブスが出現していた。マイペースっぷりが愉快な気持ちを増幅させたところで、孤独や自分らしさと向き合った人だからこそ出会えた希望を歌う「光」が沁みる。
畳み掛けるラップやMPCとドラムのバトルもライヴならではの迫力の「ぐわんぐわん」から一転、フュージョンっぽい洒脱さもある「moove!!」ではスラップでの見せ場やギターとベースのユニゾンの厚みの心地よさも身体で受け止めて、さらにフロアは加熱していく。シームレスにギター・リフで繋いだ「Hemoglobin」はグッと生感を増し、"知らないでしょう"等随所に挟まれるフレーズをオーディエンスが歌い、「Mongoose」のイントロでは凪渡の"Put your hands up !"の掛け声に応えるように叫びと手があがり、アドリブも含むラップで扇情。止まらないダンスは切れ味鋭い16ビート・ナンバー「freefall」まで一気通貫。ステージ上をせわしなく動きながら焦燥感を募らせる言葉を吐き続ける凪渡に、"free fall"のシンガロングの音量も上がった。
"みんなブッ飛べた?"とフロアに問い掛ける凪渡をはじめメンバーの高揚感が窺え、終盤はそこまでのアッパーな流れから一転して、大切な核心を伝えるようにスロー・チューン「HERO」を丹念に表現。遠くのスターじゃなく、自分の本心に気付かせてくれた身近な存在に向けて歌われているであろうこの曲がセットリストにある意義は大きい。そして"みんなで歌おう!"と声を掛けて始まった「I Wanna Rock」では、"泣きたい夜が歌になってんだ"等、心情を重ねたくなる歌詞を照らすように照明がとてつもない明度でフロアを包み込む。温かさと熱さで満たされたところに、凪渡が一言"信じてくれてありがとう"と、Ochunismの音楽を聴き続ける、もしくは出会ってくれたことへの感謝を口にして、今のOchunismが導き出した答えのような「Cosmic Love」を大きな愛で繊細な心を抱きしめるように鳴り響かせた。メンバー全員が曲を噛み締めてプレイしている印象が、各々のアウトプットの中にも感じられてラストに相応しかった。
ひたすら長い拍手でアンコールを求めるオーディエンスのもとに戻った5人はソロ回しを含む「glass」や「Mirror」を演奏。"みんなのおかげで音楽がどんどん楽しくなった。続けていくにはもっとたくさんの人に届けたい"と、来年8月10日にLIQUIDROOMでのワンマン・ライヴを告知。思い入れのある会場でのワンマンを発表した後でこの日再び演奏した「GIVE ME SHELTER」は、ここから走り出す意志を含み、加速していくOchunismを提示してくれたのだった。
[setlist]
1. wakusei
2. Life
3. GIVE ME SHELTER
4. Zero Gravity
5. Ride On!!
6. Alien
7. MOYASU
8. 夢中
9. Sweetie(Acoustic ver.)
10. 光
11. ぐわんぐわん
12. moove!!
13. Hemoglobin
14. Mongoose
15. freefall
16. HERO
17. I Wanna Rock
18. Cosmic Love
En1. glass
En2. Mirror
En3. GIVE ME SHELTER
EVENT INFORMATION
"Ochunism ONE MAN LIVE at LIQUIDROOM(仮)"
2026年8月10日(月)LIQUIDROOM
OPEN 18:15 / START 19:00
[チケット]
オールスタンディング(一般):¥5,000(+1D)
オールスタンディング(U-22):¥4,500(+1D)
■オフィシャル先行(抽選):~2026年1月4日(日)23:59
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