Japanese
PAN
Skream! マガジン 2020年08月号掲載
2020.06.25 @大阪BIGCAT
Writer 稲垣 遥 Photo by 雷
PANの25周年は、ベスト盤『ベスト盤°2』のリリースから始まった。新メンバー、タツヤ(Dr)が加入し、結成25周年と同作のレコ発イベントを兼ねた、現4人で初めての"PANマン"が2月に大阪BIGCATで開催され、アニバーサリー・イヤーがいざ幕開けだというところに、新型コロナウイルス感染症の拡大。その阻止に伴い、観客の前でライヴをすることをストップせざるを得なくなってしまった。そこから4ヶ月。PANがライヴハウスに帰ってきた。
配信ライヴの舞台となった大阪BIGCATのステージの真ん中には25周年のエンブレム。4人の楽器やマイク・スタンドがセッティングされ、もちろんそれだけでもライヴ再開の実感が湧いて嬉しいのだが、そこにさらにワクワクを足してくれたのが、視聴者からのコメントをリアルタイムで映し出すというモニター。それも、正面から見えるだけで計10台ほど!
"いけるか大阪! いけるか日本!?"川さん(Vo)がマイクを持ち、4人が目を合わせると、1曲目は「想像だけで素晴らしいんだ」。発表以来ライヴの定番ナンバーではあるが、これまでこの曲がこんなにも優しい演奏と歌声で始まったことがあっただろうか? 静かにじっと耐えていた空間に光が差し込み、"行け 行け 行け 行け 行け"と、今目覚めた仲間たちに、さぁ動き始めようと温かく声を掛けるようにして始まった。そして、そのままビカビカと照明が光り「人生の湯」へ繋ぐ。
配信ライヴでは全員が最前列、というのはよく言われることだが、この日はまさにそれを実感。なぜなら、メンバーの表情がしっかり見えるだけでなく、特に、その目線がリアルなライヴそのものだったからだ。カメラを意識しすぎるわけでもなく、ただまっすぐ前を見据えるだけでもなく、まるでフロア前方にも後方にも本当に人がいて、ひとりひとりが見えているかのようにポイントポイントを見つめて歌う川さんの姿に、心を持っていかれた。モニターではその様子に昂りメンバーの名前を呼ぶ声や"オイ! オイ!"という声も一斉に映し出される。それを受け、ゴッチも前方へ踏み出しギター・ソロを披露して盛り上げる。配信ライヴでありながら、ステージ上と観客が互いに呼応して温度を上げていった。4人も久方ぶりのライヴに対する緊張感から、徐々にいつもの感覚を取り戻したのか、リラックスし、楽しむムードに変化してきたのが窺える。
MCでは"どうやったら今ある配信ライヴの壁を飛び越えられるかを考えて、配信ライヴのシステムに一石を投じるためにこのBIGCATに来ました"と川さんが、各メンバーの足元のモニターにも、視聴者のコメントが映し出されている様子をカメラに映して見せてくれた。よく見ると彼らと親しいバンド仲間もチャットに参加していたりして、思わず微笑んでしまう。
そこから、"「ここで死んでたまるか」"という歌詞と、今の彼らを取り巻く環境とのリンクっぷりにじんときた「カマす犬」、単純明快なハッピー・ソングで、ライヴを渇望していた人にほど届くであろう「今夜はバーベキュー」を経て、この日のハイライトとなったのは「ザ・マジックアワー」。パーティー・バンドのイメージが強い彼らだが、この曲ではギター、ベース、ドラム3人の演奏があえてシンプルな引き算のアレンジになり、Aメロは川さんの語りになっているおかげで、言葉が胸に直接飛び込んでくる。大変だとわかっていても新しいことに挑戦したいというバンドの姿勢を、"知らない自分に出会えた時思う/あー音楽続けてて 良かった"と少し歌詞を変えて歌い上げた瞬間、"PANに出会えて良かった"というコメントが投稿され、リアルタイムで自分以外のオーディエンスの想いを実体として感じられることに対して、ライヴに近い力があるなとドキドキした。
曲を終え、上を向き"ありがとう!"と叫んだ川さん。もちろん音としての反応は返ってこないが、画面の向こうで歓声は溢れかえっていたと思う。"見えてるぞ。おるわ。聞こえてるわ。今まで自分の目で見たもの、耳で聞いたものが自然と聞こえてくるし、その光景が見えてくる"。川さんのこの言葉も、濁りがなかった。
ここで、この自粛期間に、今まで使ったことのないアプリをダウンロードしすぎてスマホのアプリのページが増えただの、ストレージを増やすためにプランを変えたりして今までより忙しかっただの、PANらしいくだけたトークが炸裂。中でも「今夜はバーベキュー」の演奏中に、モニターに"私は今晩カレーでした"というコメントが流れてきて、知らんがな! とライヴ中に笑いそうになった、という話で盛り上がっている姿に"あぁ、PANのライヴだなぁ"と感じてしまった。
そのあとはまた、圧倒的にキャッチーで何も考えずにコーラスに参加してしまう「ギョウザ食べチャイナ」、抜群のグッド・メロディが響く「直感ベイベー」で"フロア"を楽しませたあと、ハンドマイクで縦横無尽に動いていた川さんがエレキ・ギターを提げた。さらに、ゴッチが丸くノスタルジックなギターを奏でてがらりと空気を変え、郷愁を覚えるレアな1曲「悪魔塔」が披露された。ダイスケ(Ba)が一緒に歌おうと観客に呼び掛けるかのごとく、マイクから離れたところで、笑顔で歌っていたのも印象的だった。
毎月行われる予定だったイベント"25祭やDAY!"が中止になったことに触れ演奏した「マイル」では、モニターに、回る予定だった各ライヴハウスのロゴと入口の写真が次々と映される演出も。演奏後には配信画面いっぱいに、"10本中止になったけどこのまま終わらせへんからな!! PAN"というメッセージが映し出された。きっとこの悔しさをすごいパワーにして返してくれるのだろうと、ピュアなステージを観て感じていると、ゴッチが感極まって泣きそうになっていることに気づく。それを見た川さんはすぐさまイジり倒し、そのままゴッチのテーマ・ソング(?)「ゴッチメン」へ。この曲では"みんなが困ってることを書き込んでほしい。俺が全部を解決する"と宣言したゴッチが、川さんが歌っている横で、それを無視してコメントに返答していく。そのゆるさや距離感の近さを楽しんでいると"ゴッチメン~♪"と歌いながらステージに長髪の男――猪狩秀平(HEY-SMITH/Gt/Vo)が登場! パニックになりあたふたするゴッチに"2番いきましょう"、"ちゃんとツッコんで!"といなしながら、"みんなありがとー!!"とゴキゲンに歌い切っていった。PANのメンバーも知らなかったという、猪狩いわく"無許可です"というサプライズ登場に、地元バンドの絆も感じたひと幕だった。
続いては新曲「究極の幸せ」を演奏。日本人の琴線に触れる優しく包み込むサウンドと、自分に繰り返し言い聞かせるような"今がすべてじゃない"という歌詞。これからも道は繋がっていくというメッセージだ。この曲ではミュージック・ビデオの撮影も同時に行われていたということで、MVの仕上がりも楽しみだ。
そして、うねるベースからスタートしたハードな「我ニBET」から、いよいよラスト・スパートへ。「暴飲暴食マシンガン」では川さんが叫び、ステージから飛び降りる。この時点でライヴ開始から120分を過ぎており、25周年選手で、しかも久々のライヴとは到底思えないタフさだ。川さんだけでなく、3人の演奏もぶれがないことに改めて感心させられたし、寧ろ公演開始時よりパワフルになっていて、ライヴ中にどんどんリスナーのパワーを吸収しているかのようだった。フロアに勢い良く着地した勢いで、川さんのマイクがトラブルで聞こえなくなったまま突っ走った「ジャパニーズソウル」、しかし、さすがの対応力ですぐさま復活し、ラスト「天国ミュージック」まで見事に走り切った。
メンバーが去り、暗い会場に"アンコール"、"ワンモー"など文字でのアンコールがすごい速さでモニターに流れるなか、再び4人が登場。"サービス精神が旺盛すぎると言われる"と川さんも言っていたが、本編21曲に加えてアンコールでさらに4曲を披露するという太っ腹っぷり。"またライヴハウスで会いましょうー!"と力いっぱい叫ぶ川さん、手を振り"ありがとう"とカメラに伝えたダイスケ、汗だくだが、その疲れすら達成感として楽しんでいると言わんばかりの満面の笑顔を見せたタツヤ、そして、また泣き顔になりかけていたゴッチ。"これからもまた回っていきます"という最後の川さんの言葉通り、今回のライヴはあくまでも"ライヴ再開"宣言。これからも彼らが走り続けてくれることを心から頼もしく感じたし、ただただバンドがひとかたまりになってぶつかった、泥臭いライヴのエネルギーがここまで配信で伝わるとは......! と嬉しかった。PANが見せてくれた配信ライヴの新たな未来は、明るかった。
[Setlist]
1. 想像だけで素晴らしいんだ
2. 人生の湯
3. フリーダム
4. 遊SONG
5. OH!!アニマル
6. カマす犬
7. レモン KISS
8. 今夜はバーベキュー
9. ザ・マジックアワー
10. WA WA WA
11. ギョウザ食べチャイナ
12. 直感ベイベー
13. 悪魔塔
14. マイル
15. ゴッチメン
16. 究極の幸せ
17. Z好調
18. 我ニBET
19. 暴飲暴食マシンガン
20. ジャパニーズソウル
21. 天国ミュージック
En1. 短い夏休み
En2. がんばりまっせ
En3. TシャツGパン
En4. 初日ファイナル精神
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