Japanese
礼衣
Interviewer:サイトウ マサヒロ
ツユのヴォーカリストとしての活動を経て、2025年にソロ・アーティストとしてのキャリアをスタートさせた礼衣。自らで作詞作曲を手掛ける楽曲たちは、透明感の中で強い決意が熱を帯びている。1月21日には川谷絵音をゲストに招いたニュー・デジタル・シングル「ハートマーク」をリリース。よりパーソナルな言葉が、歌声に新たな色を加えた。彼女は今、まだ白紙のキャンバスに向かって、これからなんでも描き始めることができる現状に胸を躍らせている。
-今回のインタビューでは、リリースしてきた作品のことはもちろんですが、礼衣さんがどういうシンガーなのか、どのように音楽に触れてきたかについても記事にできればと考えております。最初に音楽にハマった原体験はどんなものでしたか?
インターネットを見始めるのがすごく早くて、小学生の頃からパソコンに触れてたんですよ。当時は今と違って"ネットにはネットの音楽しかない"みたいな時代で。特定のボカロPが好きって感じでもなく、いろんなボカロ曲を聴いてました。まだボカロが、外であんまり言えない隠れた趣味みたいな扱いだった頃ですね。高くて速くて、何言ってるか分からないみたいな曲をひたすら聴いてました(笑)。音楽そのものだけじゃなくて、そのカルチャー自体が面白いなって。ヒットしたものだと「メルト」、「炉心融解」とかは印象に残ってますし、「千本桜」はリアタイで聴いてました。
-歌が好きだとか、得意だっていうことに気付いたのはそれより前ですか?
小さいときから、"お腹空いたー!"っていうのもメロディに乗せるくらい、常に歌ってる子どもだったっていうのは母親から聞きました。音楽の授業でも歌は褒められることが多かったし、漠然と得意なのかなとは思ってましたね。褒められたら当然嬉しいし、自然と歌うのが好きになっていきました。
-なるほど。
私、わりと自信がないタイプで、なんでも他人と比較しちゃうんですけど、歌は結構自信があるんです。自分の声がすごい好きで、褒められたら"そんなことないです"って思わず素直に嬉しいって言える。歌がなかったら自信ゼロの人間になってただろうし、この声で良かったなと思います。
-幼少期はどんな性格だったんでしょう?
活発でめっちゃ喋ってたらしいです。今だと考えられないんですけど、"人類みんな友達"って心から思ってたので(笑)。明るい子も、静かに絵を描いてる子も、幅広く友達みたいな。本当にハートフルでしたね。それから、中学から6年間は吹奏楽部で、全国大会にも行きました。考えてみると、音楽が好きなんだなって思います。
-それで家に帰ったらネットに入り浸るって、やや屈折してますね(笑)。そこから音楽活動を始めるに至るまでの間には、やはり"歌ってみた"の影響も大きいですか?
今もですけど、人前に出るのが得意ではなかったので、家で何回でも録り直した歌を発信できるのはすごいことだなと思ってました。人前でオーディションを受けたりしてまで歌手になろうとは思わなかったけど、これならやれそうだなって。録音なら緊張もしないじゃないですか。だから、納得できたものをネットに上げるっていうのは当時やってみたりしました。全然、それで有名になったりとかはなかったですけど。
-ニコニコ動画やYouTubeが、気付かなかったクリエイターの在り方に気付かせてくれたという。
はい、特に当時は顔出ししない方がほとんどだったので。あと、ネットで言うとTwitter(現X)はずっとめっちゃやってましたね。ネットで音楽をやってる人同士のコミュニティみたいなのがあって、そこでできた友達もいました。
-昨年3月にはSNSアカウントを立ち上げソロでの始動を宣言、コンテンツ未公開のままYouTube登録者数が5万人を突破しました。その反応を受けて、どう感じましたか?
素直にありがとうと感じました。グループで活動していたこともあって、私にファンがいるっていう意識がそんなになかったんです。あくまで私は参加させていただいている、みたいな気持ちがどこかにあって。だから、私のことを気にしている人数が浮き彫りになるのが怖くもあったんですけど。それでもアカウントを開設したら"待ってたよ"、"いなくならなくて良かった"って言ってもらえて。めっちゃホッとしました。"気にしてくれてたんだ"って。
-嬉しさと同時に、プレッシャーも生まれたのではないでしょうか?
ありましたね。その段階で自ら曲を書いてリリースしていくことは決まっていたけど、表にはどんな活動をするか発信していなかったので、どんなことを期待されているのかが気になりましたし。これからどんな動きをするのかが分からない状態で、リスナーを増やしていけるかなとか。とにかく、気にしてくれている人がいるって分かったことで、気持ちが引き締まりました。
-そもそも、新しいバンドやユニットを始めるという選択肢もあるなかで、礼衣という看板を掲げたソロ活動を始めることになった背景には、どんな思いがあるのでしょうか?
今までずっと、他人に書いていただいた曲をどう歌うかに取り組んできたけれど、自分の思っていることを音楽にしたほうが歌の説得力は増すと感じていて。曲を書いた経験はなかったけど、今がそのタイミングかなと考えたのがきっかけです。自信があったわけじゃないけど、それでも絶対そうするのがいいと思って。全然いい曲にならないとしても、まずはやってみようと決めました。
-ただ歌を歌いたいというよりも、歌を使って何かを表現したいという方向にシフトしたんですね。
いろんな人に活動について相談したんですけど、"インプットはめっちゃあるよね"、"曲にしてないことがいっぱいあるよね"みたいに言われることがあって。"今まであった全部のことが曲になるよ"とか。そう言ってもらえて自信にもなりました。もちろん、他の人に曲を書いてもらうのも素敵なことだけど、"メロディ、こう動くんだ?"みたいに思うこともなくはないので、自分で考えるのかと思うとワクワクもしましたね。
-ソロ活動をする上で、一貫させたいコンセプトやテーマはありますか?
私、ちょっと捻くれてて、まっすぐな言葉や前向きな言葉にウッとなっちゃうところがあるんですよ。そういうのを素直に"素敵!"って思えない。だからこそ、私が書いたものは同じような人に刺さるんじゃないかなって。もちろん音楽に仕上げる以上、ちょっときれいに整えたりもするんですけど、そんな私が書いたきれいごとが、"きれいごとを言うな!"って思ってしまう人に届いたらいいなって。寄り添いすぎず、突き放しすぎない音楽を作りたいです。
-その思いは、これまでリリースされた楽曲の中でもすでに感じられるような気がします。たとえばソロ・デビュー曲の「違法建築」(2025年9月リリース)は、曲名からしてインパクトが強いですよね。どのように着想したのでしょう?
これは、正直に話すと以前までの活動のことを歌っているんです。でも、それを否定したいとか、嫌な思い出にしたいというわけではないんですよ。難しいけど、その思いは今が一番歌詞に落とし込めるかなって。今しか書けないことを書きたかったので。
-白黒ハッキリしない感情だからこそ、ありのまま形にできるのはそのときだけですからね。
順調に進んでいたものが急に終わったっていうより、ずっと危ういバランスで保たれていたものが壊れて更地になって、でもまたそこにビルが建つっていう曲を書こうと思って。そのグラグラしてた状態も、崩壊したことも、否定するわけでも肯定するわけでもなく"こういうことがあったね"みたいな。説明するのは難しいけど、そのときにしか思えないことを書いてます。
-それを"違法建築"という1語にまとめるワード・センスが実に鋭利だなと驚きました。作詞に関しては、何か影響を受けているものはあるのでしょうか?
他のものを参考にするっていうのはあまりないですね。でも、友達に面白い子が多くて。お互いにマシンガントークするんですよ。喉が枯れるくらい(笑)。相手から恋人や上司の愚痴を聞くなかで、ありえないパワーワードが生まれたりして、それを"歌詞にしていい?"って言ってメモったりしてます(笑)。それが脳トレにもなってるかも。
-初めて自らの言葉とメロディで曲を作ってみて、音楽の捉え方に変化はありましたか?
よりドキドキするようになりました。責任が増えたというか。書いてもらった曲だと"はい歌います、はいリリースされました"みたいな気分だったけど、今は反応がすごく気になりますし、自分ごとになった感じがします。
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