Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Halujio

2025年12月号掲載

Halujio

Member:高畠 大知(Gt/Vo) 大窪 弥真斗(Gt) 松本 宗光(Ba) 細川 龍之介(Dr)

Interviewer:山口 哲生

東京 府中発の4ピース・ロック・バンド、Halujioが2ndミニ・アルバム『days』を完成させた。前作『roots』から1年経たずに放たれた本作は、こだわったアンサンブルを楽しめるものから、キャッチーさを磨き上げたものまで様々な表情を見せながらも、作品題の通り、リスナーの日常を優しく彩る楽曲が並んでいる。4人はどんな思いを持ってこの作品を紡ぎあげたのか。本作を掲げたリリース・ツアーの初日という貴重で大切な日に、話を聞かせてもらった。


届くべき人に届いた上で、もっともっと輪を広げたい


-この取材は[Halujio 2nd mini album「days」release tour "DayByDays tour"]の初日(※取材日は11月6日)に行わせていただきまして。お忙しいところありがとうございます。ツアー当日を迎えた今の心境はいかがでしょうか。

高畠:(アルバムを)発売してからなんやかんやでライヴをもう5、6本ぐらいやってるんですよ。前回のツアー("Halujio 1st mini album「roots」release tour「人生が変わる音が聞こえるTOUR」")のときはライヴで初めてやる曲もあって、どう扱ったらいいんだろうみたいなところからツアー・ファイナルに向けてやっていく感じだったんですけど、そういう意味ではちゃんと準備して臨める感覚がありますね。

-じゃあ初日からいい感じでやれそうな。

高畠:やれたらいいっすねぇ。

松本:いや、そこはやろう(笑)。

-ですね(笑)。前作『roots』(2024年リリースの1stミニ・アルバム)は瑞々しいサウンドを聴かせていく印象が強い作品でしたが、今作の『days』は、アンサンブル的にすごくワクワクさせる部分もありつつ、また前作とは違う印象を受ける作品になっていて。今回はどういう一枚にしようと考えていましたか?

高畠:『roots』は初めて全国流通で出すのもあって、自分等のルーツはこういう感じで、最初は元気はつらつで、だんだん俺等っぽいオルタナ色強めになっていく感じだったんですけど。今回は、結果的に歌詞がかなり日常に寄り添う感じになったり、そういう曲が多くなったなと思って。アルバム名は最後に決めたんですけど、本当は"room"にしようと思っていたんです。例えば1曲目の「オールド」だったら"改札を抜け"とか、最後の「杪夏」だったら"帰らないと行けないんだ"とか、家に帰ったり家から出ていったりする曲が多かったので。でも、"room"だとあまりにも『roots』と似すぎてるんで、じゃあ"日々"ってことで"days"にしようかなって。で、ジャケットは部屋の絵にしてるんです。

-なるほど。そういう曲や歌詞が出てきた理由みたいなものって何かあったりしたんですか?

高畠:今回新規で作ったのが4曲あって。例えば「静かな部屋」は、オケを作ったときになんかすごくしんみりしてるなと思って、たまたま俺が1人で部屋で作っていて、すごい空白を感じたから"静かな部屋"にしたんです。あと、「オールド」はもともとあって、仕事に行くのダルいけど頑張って振り絞っていこうっていう曲なんですけど、その2曲は入れたいなって思ってたんです。で、部屋から出たくないって曲が「静かな部屋」で、それでも出なきゃいけないっていう曲が「オールド」だから、ほかもそういう感じの歌詞に寄せていこうかなって。

-その2曲が軸になっていったという。

松本:なんなら最初はEPを作りたいっていう話だったんですよ。

高畠:そうだ。最初は8曲ぐらい作って、その中から4曲ぐらい選ぶ感じにしようと思っていたんですよ。で、「オールド」と「静かな部屋」、あと「ネイキッド」は『roots』のときに作っていてすでにあったので、もう3曲あるからどうしようね? って。それで6曲入りで出したいっていうことになって、ミニ・アルバムになった感じでしたね。

-高畠さんが持ってきた曲に対して、皆さんそれぞれどんなことを感じながら楽曲に臨んでいきましたか?

大窪:曲調が一貫しているようで全然違うので、曲ごとにギターのニュアンスを出すのが結構大変でしたね。それはライヴにおいても今シビアにやっているところでもあるんですけど。だから、いい意味でバラつきがあって、曲数にしては分数も短いけど、味わい深い6曲になってます......よね?

松本:うん、なってる(笑)。

-特にニュアンスを出すのが難しかった曲というと?

大窪:どれだろうなぁ......。

松本:全部ムズそうだよね?(笑) 

大窪:うん。いつも大知から、例えばイントロはこういうふうに弾いてほしいって言われて、それを弾くっていうことが多いんですけど。

高畠:俺が作ってるやつと弥真斗が作ってるやつがあるから、音の使い分けみたいなのが難しい。

大窪:そうそう。

松本:弥真斗が一番ムズいと思う(笑)。

高畠:「静かな部屋」はずっと同じフレーズを弾いてもらってるので、シンセサイザーみたいな役割だと思ってますし、そういう曲がライヴ中に1曲あるだけで「静かな部屋」用の音色をわざわざ作らないと成り立たないからムズいんだろうなって、曲を作りながら思ってました(笑)。ライヴでどうやるんだろうなぁって。

松本:無責任すぎ(笑)。

大窪:大知は、俺のギターはどんな音でも出ると思って曲を持ってくるんで。やっぱり画面上で作っていると、ギター1本でもいろいろ音を試せるじゃないですか。だからこっちもどんな音でも出せるように頑張ってる感じですね。

細川:完成したものを改めて聴いて思ったのは、さっき話にあった通り、6曲のキャラクターが全部違っているので、自分の付けたドラムも前回の作品と比べてかなり幅が広くなっていて。手数を結構多くした曲もありますし、逆にすごいシンプルに作った曲もあって。「静かな部屋」と「杪夏」はタムを使わずにほぼ3点で録ったりとか、個人的にはなかなか大胆なことをした作品になったかなって思いますね。

松本:大知からデモが送られてくるのが結構遅いんですよ。レコーディングの1週間前ぐらいからフレーズを考え始めないといけないので、そこはめっちゃキツかったです(苦笑)。あと、『roots』のときは結構スケールの大きい話を歌っている感じがしていて。でも、この6曲はわりと大知の手の届く範囲のことを歌ってる気がしたから、"days"っていうタイトルはぴったりだし、これはちょっと曲が良すぎるなと改めて。俺は毎回そう思ってるんですけど、届くべき人に届いた上で、もっともっと輪を広げたいなとは思いましたね。

-時間がないなかでベースを考えなきゃ! っていう状況でも、届いたときに特にこれはいい曲だなと思ったものを挙げるとするといかがです?

松本:どうだろう......全部マジで最高ってなるんですけど、「静かな部屋」に関しては、ライヴでできるの? とは思いましたね。これは何を弾けばいいんだ?っていう。それで初めてベース・ソロまがいのことをやらされたり。やらされたりというか(笑)、そういう要望があったからなんですけど、それも人生初めてだったんで、自分のルーツをオマージュしつつやってみました。この曲はライヴでキーになっている曲だと思うし、Halujioの新たな武器になりそうだなと思ってます。

-この曲のベース、かっこいいなと思いましたよ。先程少しお話に出ましたけど、曲尺が短い曲が多いですよね。

松本:全曲2分台です。

-自然とそうなったんですか?

高畠:そうなんですよ。曲を作っていて、こんなに尺いらんなぁと。それも作った後に削ったというよりは、気付いたらアウトロにいっていて、書き出してみたら2分ちょっとだったんですけど、ここに足すにも足せないなぁと思って。「homie」とか2分15秒ぐらいで、さすがに短すぎるかなと思ったけど、やっていたら別にこれで全然いいなと思ったから、なるべくしてなっているのかなっていう感じですね。『roots』のときから自分の作る曲がだんだん短くなっている感覚があったんですけど、特に狙っているわけでもないです。

松本:ちょっと曲が長いかもねって話したことがあって。自分たちがやっていて長く感じるなら、お客さんはたぶんもっと長いと思うはずだから、自分たちのやりたいことを損なわずに、今の時代に合った尺に擦り合わせるのもいいんじゃないか? って。でも、大知としては曲のあるべき姿にしたらそうなったってことだよね?

高畠:うん、わりと。最初は聴きやすくしようと思ってあえて短くしたりもしたけど、最近は自然とそういう尺になる感じがする。

-日頃聴いてる曲にそういうものが多かったりとか?

高畠:いや、どうなんだろう......。

松本:短い曲とか聴かないでしょ?

高畠:アレンジを聴いたりはしますけど、他のバンドを聴いて短くしたいなとかはないですね。

-あくまでも、この曲の長さはこれがベストだと思ったのがこの形だったという。

高畠:そうですね。それがだんだん短くなっていったっていう。

-尺が短いからこそ、それこそ"days"というか、日々のちょっとした隙間にすっと入ってきやすいというか。

細川:おおー。

-すごい同意してくれましたけど(笑)。

細川:そうですね(笑)。共感しました。

-それこそ「オールド」が日常に入ってくるとめちゃくちゃ優しくていいなと思ったんですよ。この曲はどんなところから作り出したんですか?

高畠:もともとは、地元のライヴハウスのスタッフで女の子がいて。その子がバンド始めるってなったときに、遊びのつもりで曲を作ったんです。たまたま無料のボカロ・ソフトみたいなのがあったから、ボカロの曲を作ってみようかなと思って作り始めて。歌詞としては、自分が初めてやることとか、さっき言った"家から出るのしんどいけど頑張っていこう"みたいな感じなんですけど、最初のイメージ的には、今まで自分が積み上げてきたもの、自分がたどってきた道を肯定してあげるような曲を作りたかったんですよね。お前は合ってるから、そのまま頑張って突き進めよみたいなイメージが最初にあって。ただ、それだと俺等にしてはあまりにも応援歌すぎるなと思ったので、それをどんどん馴染ませていくというか、Halujioっぽくしていった感じでしたね。

-"それだと俺等にしてはあまりにも応援歌すぎる"というお話がありましたけど、細川さんもそういう印象があったりします?

細川:そうですね。僕は後からバンドに加入していて、入る前ももちろん知っていたし聴いていたんですけど、やっぱり歌詞の言い回しがあまり具体的じゃなくて、いろんな捉え方ができるような表現だったので、あんまり焦点を定めずに歌詞を書くのがHalujioらしいのかなって。

高畠:2番のサビとかめっちゃ俺っぽいですね。"全部投げ出したくなって/孕んだ思い出と/名ばかりの後悔"とか。

松本:そうね。最初はそのスタッフの子のバンドの曲をイメージして作ってたんですよ。1回やったんだよね?

高畠:そうそう。1、2回サポートをしたんですけど、曲がない! やばい! ってなって、それ用にちょっと書こうかなって。だから女の子バージョンで1回だけやってるんです。

松本:その子はその後やめちゃったんですけど、俺的には曲をやってるときにいろいろ思い出しちゃうというか。いろんな会話だったり、"そうだよね、俺等そう思ってたよね"っていうことだったり。その子に限らず、自分が大事だと思っていた人はこれからも大事に思い続けていたいなっていう曲だと思います、「オールド」は。

高畠:なんか、これって若手バンドマンへの曲だよね? って話をしていて、たしかにそう見える歌詞でもあるなって。それこそ府中Flightっていう俺等がホームにしてるライヴハウスに出ている後輩に向けての曲だよね、みたいな。もちろんバンドをやっていない人にも届いてほしいなと思いますけど。

-"過ぎた言葉が/支えになって/足跡を見れば/答えになって/見様見真似でも/自信になっていた"という歌詞がありますけど、音楽やバンドはもちろん、他のことにも通じる部分がありますし。

高畠:そうなんですよ。ここはマジでパンチラインだなって思いました。

松本:この歌詞とかマジでその子のことしか俺は思い浮かばなくて。ライヴでやってると俺は結構思い出しちゃいがちですね。分かる?

細川:分かる。