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INTERVIEW

Japanese

Aftertalk

 

Aftertalk

Member:shun nagai(Gt/Vo) 原田 征知(Gt)

Interviewer:山口 哲生

"東京発感情炸裂型ロックバンド"Aftertalkが、2ndフル・アルバム『Freak Show』を完成させた。前作『Great Frontier』から約2年半、彼等が感じた光と闇や、それがもたらした様々な喜怒哀楽を凝縮し、爆発させた全9曲は、バンドにとってチャレンジングな側面を持ちながらも、よりエモーショナルにリスナーの心を震わせ、生きる活力を与える一枚に仕上がっている。新たな物語を刻み始めた2人に、じっくりと語ってもらった。

僕等が抱えているいろいろなものを "見せ物小屋"みたいに見てもらおう

-2ndフル・アルバム『Freak Show』にはどんな声が届いてますか?

shun:今回のアルバムは、今までとわりと違ったタイプの曲もたくさん織り交ぜていて。アルバムのタイトルにもなっている"見せ物小屋"みたいに、僕等が抱えているいろいろなものを見てもらおうという感じで作ったんです。そこに関して"受け入れる/受け入れない"があるかなと思ったら、意外や意外、今までの中で一番聴いてるっていう声をいただくことが結構あって。なので、今までの自分たちの固定観念にとらわれることなく、新しいことをやってもいいんだなと。免罪符じゃないですけど、新しい道筋が立てられるようになったなという気持ちもあります。

-素晴らしいですね。

shun:その理由の1つとして、今までずっと自分が曲を書いて原田さんに編曲してもらうことが多かったんですけど、今回は原田さんに楽曲を作ってもらってメロディと歌詞を僕が乗せてとか、そういうことも結構あって。それがAftertalkの曲としてみんなに受け入れられたというのが自信にも繋がったので、ざっくり言えば、結構いい評価をいただけて嬉しいなというのが現状ですね。

-ライヴでやっていて、お客さんへの響き方も違うなって感じます?

shun:そうですね。例えば「Socratic Dialogue」は、うちにしては珍しくミドル・テンポの曲なんです。いつもはBPM200以上の曲ばかりなので、ライヴでやりやすいのかな、もしかしたらお客さん的に乗りにくいのかなと思っていたら、すごく心地いいというのがやっていても見て取れたし、ライヴ後にそういう声を聞くことも多くて。我々と言えばBPMが速くて、ジェットコースターみたいにグワーッ! と行くという固定観念が自分の中にあったんですけど、逆にそういう曲もすごく喜んでもらっているというのは新しい発見だなと思いました。

-「Socratic Dialogue」はそういったグルーヴもありつつ、リフもかっこいいですね。

原田:ありがとうございます! はははは(笑)。

shun:それこそトラックを原田さんが作ってくれて、僕が歌詞とメロディを乗せたのがこの曲なんです。自分としては結構暗い曲と認識しているので、ライヴでどう響くかな、暗くなりすぎないかなと思ったら、まさにリフの強さと身体を揺らしやすいテンポ感がすごく響いてくれてるなって感じてますね。

-原田さんは、"この曲はどう受け止められるんだろうか"と思った曲はありました?

原田:僕的には「Lotus」ですね。ある意味、意図的にずらした曲だったんです。こういう感じって僕等のルーツにはありますけど、Aftertalkとしてパッケージしたときにどうなるのかなっていう、ある程度チャレンジングな曲だったんですよね。それが意外にもめっちゃ刺さってくれていて。それは恐らく、そもそもAftertalkってこういう色だよねというのがあった上で、違う色が入ってきたから目立っているというのもあると思うんです。僕等としてはチャレンジして、それが良かったと言ってもらえるのはすごく嬉しいなと思いますね。

-間違いないですね。今作では原田さんも作曲に深く関わったというお話がありましたが、そちらはいかがでした?

原田:今まではshun君から生まれていた音を形にしていたけれど、僕が俯瞰的に全体を眺めてこういうのはどうだろうかと考えながら曲をはめていく形で作れたのは、アルバムとしては良かったのかなと思います。Aftertalkという被写体に対して、一側面だけでなく、いろんなところから光を当てられるようになったのは大きかったし、そのチャレンジが結果として、お客さんや聴いてくれた方に"良かったよ"って言ってもらえたことはすごく良かったと思います。

-そういった新しい試みが結実しているところもあるし、先程"ジェットコースター"という表現をされていましたが、実際アルバムにはそういう印象もすごくありました。その上で、"見せ物小屋"という意味のアルバム・タイトルの通り、様々な楽曲が収録されていますが、そういう楽曲を入れようと思った理由みたいなものはあったんですか?

shun:原田さんはどうか分からないですけど、僕は最初からそういうものにしようと思っていたつもりはあんまりなくて。でも、やっぱり新しいことをやっていこうとなって、Aftertalkのエッセンスを入れた上で、ちょっと違う感じのものができた。じゃあこのアルバムにタイトルを付けるとしたらなんだろうね? っていうときに、ごちゃ混ぜとか、いろいろなものが出てきた中で、原田さんが"Freak Show"ってどうかな? って。それが全員の中でぴったりだよねってなったというほうが、順序としては正しくて。だから、最初からいろいろな側面を見せようと思っていたというよりは、自分たちが活動していくなかでいろいろな試みをやっていったらそうなったという感じでしたね。

原田:あと、今回の音源は、Aftertalkと"IKR Soundsystem"(Aftertalkが所属するレーベル)の2つが融合したから作ることができたというか。今までは僕等2人だけでしたけど、皆さんが関わってくれたおかげでできた作品だなという感覚が、僕の中にすごくあるんですよね。それをアルバム・タイトルとして一言で表したいと思ったときに、最初に"サーカス"というワードが思いついたんです。ただ、サーカスってものすごく陽の気に溢れているというか、あまりにもポジティヴだなと思って。楽曲的に、みんなで海に行ってウェーイ! みたいな感じではないし、歌詞も比較的内省的なものが多いので、そう考えるとサーカスではないよなって。それでこのタイトルにしました。

-歌詞のお話がありましたが、内省的ではあるけれども、それでも諦められないものがあるとか、暗闇の中にいるけれども光を目指したいというものになっていますし、過去作に比べてそのメッセージが強まっている印象もありました。歌詞はshunさんが書かれていますが、改めてご自身の中で歌いたいと思ったものがあったんでしょうか。

shun:自分の根本を振り返ってみると、昔は自分の周りのすごい友達とか、すごい結果を残している人がいると、そこに対して妬みとか嫉妬とか、いわゆる暗い感情みたいなものがすごくあったんですよね。そういうなかであっても諦めずにもがき続けて、こんな自分でも結果が出せるようなところをみんなに見せたいなっていうところが強かったんですけど、あるきっかけがあって今みたいに変わったんです。

-きっかけというと?

shun:コロナの時期、僕等は3年間ぐらい活動を止めていたんです。それまでいろんな人と繋がって、いろんなことをやっていたけど、その3年間でこれまでの繋がりが全てなくなってしまって。ライヴハウスにもなかなか出ることができない。もう誰も自分たちのことを知ってくれている人がいない。情報としての僕等が1回消えた瞬間があったんです。入った事務所からも出て、本当に2人だけになってしまって、これからどうしようかってどん底まで落ちたときに、"一緒にやらない?"って言ってくれたのが"IKR Soundsystem"だったんです。

-そういったタイミングでの出会いだったと。

shun:つらいこととか嫌なこととか、鬱屈とした気持ちってあるけど、こうやって手が差し伸べられたときに、急激に自分の物事の捉え方とか先行きというか、まだ未来があるんだなって感じて。でも、それってたぶん、自分だけじゃないよなってすごく思ったんですよ。特に今はSNS全盛期で、タイムライン上に重苦しいこととかイライラするようなこと、嫌なことがワーっと流れて来やすくなっているけれど、"それだけじゃないよね、この世界は"って思ってもらいたいなっていう気持ちがすごく強く出てくるようになって。

-なるほど。

shun:あと、その期間中に自分が体調を崩したりもしていたんですけど、それこそ原田さんが楽曲を作ってくれるようになったことも大きくて。なんていうか、すごく助けてもらったんですよね。どん底が続くと思っていたなかでの光って、自分の中ですごく眩しくて。それをみんなにも味わってほしかったというか。今は自分と似たような思いを抱えていたり、実生活ですぐに光を見つけられなかったりしても、何かのきっかけでまだいいことがあるかも、諦めずにいたら何かを掴み取れるかもって、少しでも感じ取ってもらいたいなって。それが歌詞に少しずつ反映されていったというのが、"これまでと変わりましたね"って言っていただいた一番の理由かもしれないです。

-いやぁ、それはめちゃくちゃ大きな出来事でしたね。

shun:かなり大きかったです。良くないことが畳み掛けるように自分の周りと自分の中に起きた時期だったので、その時点で原田さんに見放されていてもおかしくなかったと思うんです。でも、今に至るまで、現在進行形でこうやって助けてくれて。そういうなかで、ポジティヴなエッセンスとして"こういう楽曲はどうだろう"って出してくれて、そこに自分も新しいものを乗せて化学反応を生むことができた。それを僕等を今まで見てくれていた人たちにも受け入れてもらえたっていうのは、本当にすごく嬉しくて。だから今後も、何か鬱屈とした思いがある人とか、何かを諦めてしまった人とか、そういう人に手を差し伸べられるような楽曲を作っていきたいなっていうのは、今の素直な自分の意見としてありますね。

-原田さんとしては、shunさんが大変だったのを見て、しんどそうだなと思って自然と曲を作り始めんですか?

原田:そこはもうちょっと左脳寄りだったかもしれないですね。そもそも僕がshun君と一緒にAftertalkをやっている最大の理由は、僕はshun君の声が好きなんです。これは本人にも何度も言ってるんですけど、こんなに素晴らしい声があることを世の中の人に知ってもらいたい。そういう理由で一緒にやっているので、僕としてはshun君から生まれるものを尊重したい気持ちが強いんですよね。これまでの音源も、95パーセントぐらいはshun君から来たものを受けてアレンジする形だったんですけど、shun君の状況があまり良くなかった時期があって。やっぱり創作ってある程度の余裕がないとできないじゃないですか。そうなったときにしばらく様子を見ていたんですけど、生めないことに対してもダメージを受けてしまっているというか。生みたくないわけじゃないのに生まれないのはすごくストレスだと思うので、shun君と話しながら、別の刺激を与えてみたらどうかなと思って。

-それで楽曲を作ってみたと。

原田:そしたらやっぱり、出口がなくてパンパンになっているところにちょっとだけ穴が開いて、ピュー! って一気に出てきたような感じがしましたね、僕からすると。そうやってできた曲が今回何曲か入っているんですけど、それこそ新しい光を当てられた感覚もあったし、shun君に近い人間として穴を開けられて良かったなって。このままだと風船みたいにパーン! ってなっちゃいそうだなってめちゃめちゃ思っていたので。僕自身は曲を作ることに全然こだわりはないんですけど、選択肢の1つとしてそういうやり方もあるなっていうのは、今回学べたところですね。

-穴を開けられるかどうかっていうお話がめちゃくちゃリアルだなと思いました。本当にそうですよね。

原田:それが上手くできたのは本当に良かったです。穴を開けるのって、言い換えると破壊行為でもあるので、タイミングとかやり方を間違えるとshun君自体が壊れてしまう可能性もあったので、僕的にはかなり慎重にやったつもりではあるんですけど。もちろん僕の穴開け行為に対して、shun君が受け入れてくれたっていうのもあるんですけどね。でも本当に上手くできて良かった(笑)。

-ちなみに、原田さんが最初に持っていった曲ってどれなんですか?

原田:「開演来たりて、影法師」が、僕の穴開けの曲でしたね。

shun:これはマジで評判良かったです(笑)。

原田:shun君からこういうテーマの曲をやりたいっていう提案があって、それに対して僕が1、2日くらいで返したら"原田さんすごいっすね!"って返ってきて(笑)。これまでも僕から曲の種みたいなものを渡すことはあったんですけど、そんなにいいリアクションをもらえることはほぼなかったので、穴が開いたなと思ったし、いいテンション感だなって。

shun:曲を貰ったときに、めちゃめちゃいいなって思ったんですよね。そういう曲を今まで通りの手慣れた感じで作っていくのは、やっぱり違うだろうと。それで、言葉の選び方とか運び方を意図的に今までとかなり変えたところがあって。この曲がもっと広がってほしいって強く思ったんですよね。そのためにはどうしたらいいだろうって考えたときに、やっぱり耳馴染みの良さとか、口に出したときのリズムとか、そういうものをすごく大事にしたし、鬱屈しているけれども、今まさにはじけたような自分のこの気持ちをどうしたらそこに乗せられるだろうというのも踏まえながら書いていて。