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INTERVIEW

Japanese

水中スピカ

2025年01月号掲載

水中スピカ

Member:千愛(Gt/Vo) 野口 岳寿(Gt) 内田 潤(Ba) しおのむすび(Dr)

Interviewer:山口 哲生

-潤さんとしては、スタジオに入ったときに同じリズム隊としてどんな感覚がありました?

内田:まず叩き方がめちゃくちゃきれいで、音がすごく飛ぶんですよ。音が飛ぶってことは、弾きながらリズムを取りやすくて、そこができてるドラマーだなっていうのが第一印象でしたね。あと、リズム感がバケモノすぎる(笑)。ズレた瞬間に"ごめんごめん!"ってこっちが謝る感じがあるぐらい、引っ張ってもらってる感じはしますね。

千愛:リズム感がどれくらいあるかというと、今回の『Lux』に入ってる「Spica」という曲が7分35秒あるんです。で、合わせたときにクリックを聴かずに叩いてもらったら、7分32秒で。

しおの:そうだったの?

野口:衝撃だったよね?

千愛:ホントびっくりした。これが2分ぐらいの曲だったらまだ近づくと思いますけど、7分半の曲ですよ? しかもクリックも聴いてないし。鳥肌だったよね?

野口:だからズレたら全部俺のせいやなって思う。

千愛:今もう全員そう思ってるよ。"あ、私が速いんやな"って。

野口:完全なる指標になってくれてる。

千愛:メトロノームになってます。

-素晴らしいですね。しおのさんは今回リリースされる『Lux』から参加されているんですか?

しおの:いえ、レコーディングは大橋さんが担当されていて。私が入ったのは12月で、もう本当に最近なので。

-分かりました。皆さんのルーツについてもお聞きしたいんですが、千愛さんは"ギター・ヴォーカルなのに、そのフレーズ弾いちゃうの!?"みたいなものに憧れていたとのことでしたけど、まさにそういったバンドがルーツだったりするんですか?

千愛:いや、そういうわけでもなくて。よく"ルーツは?"とか聞かれるんですけど、答えられるバンドが本当に思い浮かばなくて(苦笑)。本当にずっと聴いてたのはクラシックなんです。4歳の頃からピアノを十数年やっていて、中学校の頃はフルートを3年間やっていて、高校から合唱部と軽音部に入ったんですけど、将来はオペラ歌手になりたかったんですよ。 私、大学は薬学部に行っていたんですけど、オペラ歌手になりたかったから、親に"声楽科に行かせてほしい"ってお願いしていたんです。ただ、声は出るんですけど、音痴だったんですよ。親はそのことを分かってるから、"確かにあなたの声は美しい。でも音痴だから、薬学部に行きなさい"って言われて(苦笑)。

-すごい言葉ですね(苦笑)。

千愛:あとリズム感もなかったんです。小さい頃からピアノの先生に"あなたは本当にリズム感がないからメトロノーム練習を絶対にしなさい"ってずっと言われていて。だから、音痴でリズム感もなかったので、諦めて薬学部に行ったんですけど、やっぱりオペラとかミュージカルが好きですし、クラシックの音楽性が好きなのも変わらないから、水中スピカの曲を作る上でもそういうところがちょっと出ちゃってるし、参考にもしちゃってますね。こういう展開あったなとか、クラシックのあの曲みたいな感じで作りたいなとか。

-タッピングをし始めたのはピアノの影響とかもあったんでしょうか。

千愛:たしかにピアノをずっとやってたから、右手と左手で違う動きをするのはなんの抵抗もなくできましたし、右手で弦をバラバラと弾く動きとかもピアノをやっていたおかげ......なのかなぁ。どう思う?

野口:分かんない。関係するのかな。

千愛:どうなんだろう。エビデンスはないですが、予測ではそうかな。

-すみません、僕も全くエビデンスのないなかで言いました(苦笑)。御三方はご自身のルーツや好きな音楽を挙げるとすると?

野口:その時々によって聴いていたジャンルがバラバラなんですけど、高校時代はGREEN DAYとかSUM 41みたいなポップ・パンクにハマってて。日本のメロコアにもハマったんですけど、そこからなぜかtoeに行くんですよ。

千愛:なぜ!?

野口:toeのメンバーがもともとそういう音楽をやってる人たちだったからなのかな。ちょっと分からないけど(笑)、そこからポストロックとか、その近くにいるマス・ロックも一緒に聴くようになって。なのでずっとロックではあるかもしれないですね、聴いてるジャンルとしては。逆にクラシックとかはあまり知らないので。だから、いかにも水中スピカみたいな感じのジャンルがずっと好きな感じです。なので、スピカにフレーズを持ち込むときも"このバンドっぽい感じ"とか、そういうのを頭の中でイメージしがちかもしれないですね。

-自分が好きなものが自然と反映されるというか。

野口:自然と反映されるし、気付かずにやってるときもあるよね?

千愛:だから、持ってくるリフが"これってめっちゃあの曲っぽくない?"みたいな。

野口:後から聴いてみたら"一緒じゃん! ボツ!"みたいな(笑)。本当にこういうサウンドが好きなので、こういうバンドをやれていて最高! って感じはありますね。

内田:僕はもともとずっとレッチリ(RED HOT CHILI PEPPERS)を聴いていて、最初はベースのフレーズも影響を受けていたんですけど、大学に入ってからマス・ロックを知って、どハマりしてよくコピーしてました。マス・ロックのベースってメロディを担うことが結構多いので、そういったところで勉強したのが今のフレーズに出てるんじゃないかなと思います。

しおの:私も千愛さんと結構似ていて、3~4歳からクラシック・ピアノを高校までやってました。そこで学んだことがドラムにも活かされてるなと思います。バンドでいうと、私も川谷絵音さんがすごく大好きで、中学生のときからゲスの極み乙女をよく聴いていました。マス・ロックも好きで、宇宙コンビニとかtoeにもすごくハマりましたし、テクニカルな音楽っていう意味では、メタルとかDjent的なものにもちょっとハマったりしてましたね。だからもともとテクニカルなものはずっと好きでした。

-楽曲についてですが、作詞作曲は千愛さん、編曲は皆さんでされていますけども、いつも千愛さんは最初にどれぐらいまで作り込みます?

千愛:基本的にはギター2本と歌で、ベースはこれを弾いてほしいというリフが決まっていたらそこだけ入れておいて、ドラムは本当に分からないからドラムレスでデモを作って、みんなに送るんです。そこからビデオ通話で、口ドラムで伝えたり、ここのゾーンはこういう感じとか、クレッシェンドやデクレッシェンドの話もして、みんなの気持ちをどう持っていくのかっていう流れまで会議して。それが分からない状態でスタジオに入っても、みんなマインドが何も分かっていない状態で曲をやることになってしまうので、そこの擦り合わせをまず最初にして、その上でもう一回編曲をしています。

-なるほど。

千愛:その編曲のメインは野口がやってくれていて。もっとここ伸ばしたら? とか、私1人じゃ判断しきれない客観的な意見を言ってくれて、そこで結構ガラッと変わったりもしますね。それをまた提出して、擦り合わせをして、ようやくスタジオに入るっていう感じです。だから本当に私1人じゃ作れない、水中スピカの曲になっていると思います。

-面白いですね。

千愛:今はDAW上で全部完結する時代だから、潤ちゃんは自分の考えたリフをバーッと弾いて送ってくれたりして、それに私が文句を言ったり。もちろん褒めたりもしますけど(笑)。ここちょっと嫌だなっていう私のイメージを噛み砕いて、みんながそれぞれ解釈したものを付けてくれて、そこにまた私が文句を言うっていう、結構私のワガママな作り方にはなってるんですけど(苦笑)。でも、みんながそれを叶えてくれているし、私の想像以上のものを持ってきてくれるときもあるので、本当に皆さんのおかげでいい曲ができてます。ありがとうございます!

野口:でも、潤ちゃんも僕も結構言うんですよ。"このフレーズちょっと微妙かな"とか。

千愛:うん。お互い言うね。

野口:意見はみんなめちゃくちゃ言うので、言われただけのことをやる人は今のところいないですね。みんな自主性があるから、原案からガラッと変わるときは変わるし、原案のまま完成しちゃうパターンもあるし。「拍動」は変わってないよね?

内田:うん、変わってない。

千愛:あの曲は原案を送ったときに全員がベタ揉めしてくれて。"めっちゃいい!"みたいな。



野口:逆に「Spica」は結構変わったよね。最初は3分ちょっとだったけど(笑)。

-倍以上の長さになったと(笑)。

千愛:そうなんです(笑)。私としては、あの曲はリード曲じゃなくて、アルバム曲として作ったものだったんですよ。自分的にあんまり満足いってなくて、うーん......と思いながら提出した曲で。それをメンバーがリード曲にまで持っていってくれた感じですね。

-タイトルは最初から"Spica"だったんですか?

千愛:"Spica"でした。この曲は"スピカ"について書こうと思ったんです。曲を作るときは、何も題材を決めずに作るときと、この曲を作ろうと思って作る2パターンがあって。「拍動」は自分の今の気持ちをただ起こしただけなんですけど、「Spica」は真珠星──乙女座の1等星で、乙女座の神話をそのまま曲にしようと思って作り始めたので、リフとかもちょっと星っぽい感じにしていて。ただ、題名を"Spica"にするのは、やっぱりちょっと抵抗があったし、自分等の名前を題名にするのか......というのもあって、最初はちょっと悩んだけど、結局"Spica"になりましたね(笑)。あれってなんで"Spica"になったん?

野口:いや、特に揉めることもなく(笑)。

内田:うん。セルフタイトル付けたんだ? って思った。そこで気持ちが入りましたね。これは編曲頑張んなきゃなって。それで7分半です(笑)。

千愛:ははははは(笑)。気合が入りすぎた。

-その「Spica」が収録されている3rdアルバム『Lux』ですが、これまでリリースされた2枚のアルバムと比べてよりパワフルに、よりキャッチーになっているし、生命力も躍動感も大幅にアップしていて。前アルバムの『Osm』(2022年)をリリースして以降、本作に収録されている「拍動」、「baton」、「beyond me」、「MIYAKO」を発表されていましたけども、その時点でこれまでとは色が違うもの、新しい表情を持った楽曲になっていて。本作に至るまでにバンド内で変革があったというか、それこそ目覚めたじゃないですけど、モード・チェンジみたいなものがあったのかなと思ったんですが。


千愛:私はあるんですけど......。

野口:みんな間違いなくあると思うよ。

千愛:えっ!? 一緒かな。せーので言う?

野口:別にそれぞれ言っていったらいいんじゃない(笑)?

千愛:いや、一緒だったらヤバいなと思って。

野口:なんだったの?

千愛:私は、韓国にDabdaっていうバンドがいるんですけど、ライヴを観たときに衝撃を受けて。音源では聴いてたんですけど、toeの柏倉(隆史/Dr)さんとコラボして、来日してライヴをするっていうので、ツイン・ドラムでやっていたんです。それを観て、本当に心を射抜かれて。曲の展開とか、ギターの音色の使い方とか、リフの入れ方とか、リズム隊の大切さとか、本当にいろんなことを感じて、私、もっと作曲にこだわりを持って頑張らないとダメだなと思ったんです。その次にできた曲が「beyond me」で。あの曲から、"イントロできた。Aメロできた。サビできた。はい、くっつけて終わり!"じゃなくて、そこから何か面白い展開をつけられないかとか、面白いメロディにできないかって、もう一踏ん張り考えるようになったんです。だから、「beyond me」以降そうなんじゃないかしらと思うんですが......皆さんどうでしょうか。



野口:......これはバラバラかもしれない(笑)。

千愛:嘘!? 違う!?