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INTERVIEW

Overseas

JUSTICE

2024年05月号掲載

JUSTICE

Member:Xavier De Rosnay  Gaspard Augé

Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子

13曲あるのは僕たちが13回ハイタッチして"マジックを見つけたぞ!"と言ったという意味なんだ。クールなことだよね


-今作は、楽曲の世界観にマッチしたミュージック・ビデオもすでに公開されていますね。「One Night/All Night」では、JUSTICEの象徴的なクロスがまるで内臓を持った生き物のように描かれ、「Generator」では2体のアンドロイドがまるで人間のように官能的な表現で描かれている。どちらも無生物的なモチーフが命を持ったように描かれていることが印象的だと感じたのですが、こういったビデオのテーマやアイディアについてはメンバーと監督で相談し合って制作されたのでしょうか?

Xavier:まず......今の言い方最高だね! "無生物的なものが命を持った"って素晴らしい言い方だよ。今ふと思ったんだけど、僕たちが作ってきたビデオは「Heavy Metal」(『Woman』収録曲)以外、Gaspardと僕のアイディアから始まっているんだ。それを監督やプロデューサーにプレゼンして、プロデューサーの場合はそれに合った監督を探してもらう。「One Night/All Night」はとてもシンプルで、アルバムのアートワークを見せたかったんだ。それで(監督の)Anton Tammiに連絡して、アルバムのアートワークを見せるものにしたいと相談した。ズームインした状態から始まって、ズームアウトするとアルバムのジャケットが見える。そういう、とてもシンプルなアイディアだった。「Generator」のネタ元は......パリス・ヒルトンって知ってる?

-パリス・ヒルトンですか? はい。セレブの人ですよね。

Gaspard :(笑)

Xavier:そう、セレブリティ。彼女が有名な理由のひとつがセックス・テープを作ったからなんだ。

-えぇっ、そうなんですか? 知りませんでした(笑)。

Xavier:他に彼女が何か作ったか知らないけど、彼女が知られているのはそれが理由のひとつだよ。僕はあまり知らないけどね。もしかしたらシンガーや女優もやっていたかもしれないけど。そのセックス・テープの一部を見たことがあるんだ。全部じゃなくて一部がネット上に出ていて、それがすごく不穏な感じでさ。そもそも他人のセックス・テープってだけでかなり不穏な感じだしね。見てはいけないものを見るわけだから(苦笑)。

-(笑)たしかに。

Xavier:禁断の記録だからね。しかもその撮影の仕方が変で、暗視カメラを使っているんだ。暗闇の中で撮れるやつ。映像が緑と黒と白で、目が真っ黒だから、まるでホラー映画みたいなセックス・テープだったよ。それを見て以来、同じようなプロセスでセックス・テープみたいなのを撮ったら面白いんじゃないかと思っていたんだ。ちょっと怖い感じの。

-はい、怖かったです(笑)。

Xavier:それで、Léa Ceheiviという人に相談したんだ。パリにいる女性の監督でね。彼女ならこのアイディアに新しい視点をもたらしてくれるような気がした。僕たちは彼女と話し合いながらアイディアを発展させていった。人型ロボットを使ったらクールになるんじゃないかとかね。シンプルな形で愛を交わし合いながら、そのうちパーツをもぎ取ってお互いを破壊し合う。そういうことを思いついたのは、僕たちが日本のアニメを観て育っているからなんだ。今も80年代後半の日本のSFモノが頭に染み込んでいる。"攻殻機動隊"とか"AKIRA"とか、人型ロボットのホラーみたいなやつ。

-音楽の美しさもホラー感も格別でした。ところでこのあとは"Coachella Valley Music and Arts Festival"に出たあとツアーが控えていますね。前作に伴う"Woman World Wide Tour"では、最小限の視覚的効果しか使用しないという制約を設け、オーディエンスがサウンドに集中できるような環境で行われたようですが、今作に関連したツアーやライヴではどのような演出を考えていますか?

Xavier:前回のツアーをさらに進化させたような感じになるね。光だけを使っているように見えるんだ。映像もたくさん使うけど、あくまで光源として使う感じ。もっとパワフルで、且つもっとシンプルなものになるよ。

-没入感のあるものになりそうですね。日本でのライヴも視野に入れていますか?

Xavier:行こうとしているよ。

Gaspard:行けるようになることを願っている。

Xavier:行けるためにはあらゆる手を尽くすよ。君が日本人だからそう言っているわけじゃなくて、僕たちが行きたい外国ナンバー1なんだ。たしか5~6年は行っていない気がするしね。

-そうですね。前回は"SOMEWHERE,"(2019年)というイベントでのDJセットで、単独公演は2012年以来になるので、なんと12年前です。あまりに間が空いてしまいました。戻って来ていただかないと。

Xavier:そう、だから本当に戻りたいんだけど、技術的になかなか難しいんだよね。でも実現したくて働きかけているよ。

-すみません、もうひとつ訊かせてください。今作を制作するなかで最も印象的だった点はどんなところですか?

Xavier:一番大変だったのは、自分たちの意図しているものを精確に表すことかな。このアルバムへの取り組み方はある意味とてもクラシックな昔ながらのやり方で、まず全部の曲を書いて、それから全部の曲をプロデュースして、プロデュースが全部終わったらミックスする。そうやってステージごとにプロセスを進めていったんだ。最終的にはもちろん全体をリタッチして、全体としてまとまりが出るようにした。作り始めたのが2020年の夏くらいで、終わったのが2023年の冬。その間にいろんなことが起こったから、時には1曲を作ったところで、過去のデモは全部取ってあるんだけど、それらをひもといてみると、デモに入っていたすごくいいものが最新バージョンには入っていなかったりした。完成間近の曲の出来がデモより良くないということではなかったけど、何かが失われていたりしたんだ。そんな感じで(プロセスの間を)行ったり来たりして、前の方が良かったのはどんな点かを見極めていった。たいていの場合、前の方が良かったのは、デモの方が目的がはっきりしているという点だったね。曲を最初に組み立てるときは意図がとてもピュアなんだ。自分がやりたい音域だけを使って作っているからね。曲ができるときは自然にそんな感じなんだ。序盤の2、3点の要素に一番いい点が表れていて、すべて辻褄が合っている。だけどディテールに手を入れ始めて、"こっちの方がサウンドがいい"なんてやっていると、最初のやつほど精確じゃなくなってくるんだ。サウンドをできるだけ理想に近づけながら、当初意図した音を形にするときのバランスが一番大変だった気がする。時間もかかるしね。しっくりくるものを見つけるにはたくさんトライしないといけないし、技術的にも大変なことなんだ。サウンドがいいだけで不毛なものを作るのは簡単だけど、アイディアに忠実でなおかつ壮大な音にするのは本当に難しい。一番印象的だったのは......いつもそうだけど、魔法みたいな素晴らしいハーモニーを見いだした瞬間だね。今ぱっと思い出せる例としては「Afterimage (starring Rimon)」のラストだね。たったひとつのベース音が変化しながら曲全体をひっくり返していく。昨日聴いたときも"ワオ、クールだな"と思ったよ。

Gaspard:(笑)

Xavier:テクニカルなサウンドもみんないい音がするけど、あそこでは特に"なんだこれは"と思ったね。いいハーモニーがあると今も圧倒されるよ。僕たちが曲を完成させるときというのはすでに僕たちが曲に参加したあとだから、13曲あるのは僕たちが13回ハイタッチして"マジックを見つけたぞ!"と言ったという意味なんだ。クールなことだよね。

-そのマジックが何層にも重なって、曲やアルバムができるのですね。時間がかかるわけです。今作のリリースまでは約8年間というスパンがありましたが、今後はまた以前のように4~5年くらいのスパンでの制作スケジュールになるのでしょうか? それとも、このまましばらくはゆっくりとしたペースでの制作になりそうですか?

Gaspard:(笑)まだわからないから様子を見るよ。

Xavier:メソッドにもよるし、『Hyperdrama』のサイクルがどのくらいになるかもわからないしね。

-いつも楽しみにしています。最後に、新作も間違いなく楽しみにしている日本のファンへ、おひとりずつメッセージをお願いします。

Gaspard:さっきも少し話が出てきたけど、日本はツアー先として一番好きな国なんだ。ヨーロッパではちょっと失われているものがまだあるからね。それは日本人が持っている、技術やものづくりに対する審美眼や理解なんだ。日本ではそれが日常生活に見られている。ヴィジュアル面でも、日本にはとても強力なグラフィック・デザインの文化があるし、タイポグラフィも素晴らしい。例えば僕たちのアルバムの日本盤。本当に素晴らしい仕上がりで、プロ意識を感じるよ。"これから僕たち全部日本で作ろうか"なんて思ってしまうくらい。日本盤の方がずっと見栄えがいいんだから。あと、あらゆる分野にエキスパートがちゃんといること。例えば路上でたこ焼きを売っている人も、みんな自分たちの生業に誇りを持っている。そんなところが大好きだし、ヨーロッパにいると懐かしくなるね。

Xavier:日本盤を見るのは大好きだけど、見ると怒りも湧いてくるんだよね(笑)。

Gaspard:わかる(笑)。

Xavier:日本盤を見ると、なんでこのクオリティのものがヨーロッパで作れないんだ? と思ってしまうんだ。ヨーロッパにひとりくらいできる人がいたっていいのにと思うけどいない。だから日本盤を見てハッピーになる自分もいるけど、激怒している自分もいる。それから西洋ではどこに行っても同じなときがあるんだ。ヨーロッパのある国に行ってから別の国に行っても、国が変わったって気づかないくらい。そりゃ車のプレートを見れば違う国だってわかるけどさ。日本はエキゾチックとまではいかなくとも、日本にいるとここが日本だってわかる。世界の中で日本にしか醸し出せない雰囲気があるんだ。日本みたいな感じになりつつある場所も国によってはあるかもしれないけど、やっぱり日本は別格だよ。僕たちは日本に住んだことがないからツーリストとしての視点で言っているけど、何をやっても楽しいんだ。シンプルなことでもね。東急ハンズのフランス版でBHVっていうのがあるんだ。例えばカナヅチを買おうと思ってBHVに行くとする。あるいは付箋(※ポストイットを見せる)でもいいよ。

-(笑)

Xavier:BHVに何かを買いに行くときというのは、買わないといけないから行くって感じなんだ。でも東京で東急ハンズに行くときは、ただ楽しみたいから行く。実際にカナヅチを買うときも、ヨーロッパの10倍はいいやつが買えるんだ。それは"作るならいいものを作る"というカルチャーのおかげだよ。その人が何かすることを決めたら、それが何であれ、いいものにしようという心がある。フランスにはあまりそういうカルチャーがないんだ。何かやるのはやむにやまれずやる。それがショボいことになっても気にするか、みたいな感じでね(笑)。もちろん、だから日本に行きたいって言うわけじゃないけど、日本に行くと何をやっても最高に楽しいんだ。みんなの仕事が素晴らしいからね。

-楽しい話をありがとうございました! ぜひ近いうちに日本でお会いしましょう。

Gaspard:楽しかったよ! ありがとう!

Xavier:アリガトウゴザイマス!