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INTERVIEW

Japanese

cadode

2024年04月号掲載

cadode

Member:eba(Music Producer)

Interviewer:山口 哲生

-そこで"聴かせてよ"というお話になったのもすごいですね。

たぶん、ちょっと怖かったんだと思います。変に断ったらこいつヤベぇな......みたいな(笑)。そのホームページも音楽教室みたいなところだったので、個人的な話をするような連絡先じゃなかったから、そういう電話をかけてくる奴がいなかったんじゃないですかね。それでちょっと面白いと思ってもらったっていうのもあるのかもしれないですけど。僕としては、とにかく嬉しいっていう気持ちを伝えたかっただけだったので、事務所に入れたのは本当にたまたまだったんですよ。別に作家を目指していたわけでもなかったし、音楽で食えるとも思っていなかったので。

-それでも音楽は好きで、曲を作っていたと。

本当に趣味でしたけどね。田舎なので、高校のときに一緒につるんでいた奴らも、みんな県外に行ったりとか、大学に行ったりして、僕ひとりになっちゃったんですよ。やることもなかったし、バンドは無理だったので、自分で作る方向に行ったんですけど、それも月に1曲作るか作らないかぐらいの感じだったので。コミケにちょっと出すぐらいのことはしていたんですけど。

-ちなみに、バンドをやっていたときは、地元のライヴハウスに出たりも?

1~2回ぐらいですね。田舎だったので、そもそもドラマーがいなかったんですよ。だから、友達の家に楽器を持ち寄って、ドラムなしで一緒に練習したりとかして、楽しんでいたっていう感じでしたね。たまたま先輩でドラムをやっている人がいて、"やってみましょうよ"って説得してやり始めたんですけど、音を出して楽しいね、ぐらいの感じでした。

-そこから作家になり、cadodeを立ち上げられたわけですけども、ヴォーカルのkoshiさんとは廃墟好きという共通点があって仲良くなったそうで。

友達が友達を連れてくるご飯会というか、カフェ会みたいなのがあって。そこで出会ったときに、たまたま廃墟の話をしていたら盛り上がって。面白い子だったんですよ、本当に。あとはkoshiもアニメが好きだったり、僕の曲も知ってくれていたりとかして。

-ちなみに、廃墟に魅せられた理由というと? それこそcadodeのサウンドに漂っている空虚な雰囲気って、ある意味廃墟と親和性があるといいますか。

僕が2次元が好きな理由にも通じると思うんですけど、ここじゃないどこかに行った気がするというか。廃墟って不思議な空間で。人工物が自然に飲み込まれている様って、未来の姿のような気もして、その感覚がすごく美しいというか、好きというか。なかなかうまく言葉にしづらいんですけど、なんかノスタルジーとかも感じるじゃないですか。今と過去と未来がぐちゃぐちゃに入り混じっている感覚というか。

-渋谷とか東京の街を廃墟みたいに描いているイラストレーターの方がいらっしゃるじゃないですか。

あぁ。東京幻想さん。

-そうですそうです。ああいう空気感ですよね。

そうそう。ああいう感覚が好きです。時空が歪んでいる感じ。

-そういったご自身の好きな感覚をcadodeの音楽に落とし込もうという考えもあるんですか?

落とし込もうというよりは、勝手に出ちゃってる感じのほうが近いかもしれないです。仕事と違って、これを出していいのかジャッジするのは自分たちなので、本当に自分の好きなことを100パーセントやっているのでシンプルに好きなものが滲み出ているのかなって。どの曲もノスタルジーみたいなものが漂っていると思うんですけど、そこは意図しているわけではなく、どうしてもそうなってしまうっていう。

-今回リリースされる『カモレの夏 EP』以外の曲もそうですが、それこそノスタルジーもそうですし、あとは"夏"みたいなものも出ていますよね。

そうなんですよね。夏のワイワイした感じよりは、夏の侘しさというか、"夏って寂しいよね"みたいな、"あの頃の夏はもう二度と戻ってこない"みたいな感じも出てると思います。koshiも僕もその感覚がずっとあるので。

-でも、なぜセンチメンタルやノスタルジーに惹かれてしまうんでしょうね。

夏の青春を描いているアニメってよくあるじゃないですか。ああいう経験をしてこなかったからじゃないですかね。ちょっと病気がちで、みんなと同じ生活が送れない時期もあったりしたし、女っ気も全然なかったし。koshiがどうだったのかはわからないけど(笑)、僕はああいうわかりやすい青春を送ってこなかったから、そこへの憧れはあるんですよ。それに、ああいう経験って、大人になってから経験するのと、思春期に経験するのは全然違うと思っていて。あの感覚を二度と感じることができないからこそ、そこに憧れがあるというか、ああいう空気感を味わったり体験をしたいと思っているからなんですかね。でも、音楽を作っている間は、そこに行ける気がするとか、そういう感覚をなんとなく感じられる気がするんです。

-そう考えると、ebaさんにとってcadodeというユニットはものすごく意義深いものですね。作家として自分がやってこなかったものに挑戦できる場でもあるし、プロフィールには"青春をやり直そうとするユニット"とも書かれていますが、もう取り戻せないと思っていた青春のようなものを味わえているし。

cadodeでは、普段仕事ではやらない実験的なアプローチもするんですけど、それが仕事にも還って来ていて、いいこと尽くめというか。だから、やって良かったとしか思えないし、むしろ作家はみんなやるべきだと思いますね。自分が仕事でやっていないことをやるべきだと思う。おかげさまで、最近は"cadodeっぽい曲がほしいです"というオーダーが作家業のほうにも来たりするので、そのぶん忙しいとか、いろいろ大変なこともあるんですけど(笑)。

-(笑)ただ、それよりも充実のほうが勝つという。

めちゃめちゃ勝ちますね。

-では、ここからは『カモレの夏 EP』のお話をおうかがいしていこうと思います。まず、今回コラボすることになった経緯から教えてください。

("カモレの夏"は)koshiの友達がやっているプロジェクトなんですよ。で、koshiが"これ、いいんですよ"って冊子を持ってきてくれて。見てみると、本当にcadodeっぽいというか、親和性がめちゃくちゃあったんです。夏だし、ノスタルジックだし、ちょっとSFっぽいところとか、廃墟っぽい雰囲気もあるし。これはやりたいなと思ってコラボさせてもらった感じでした。

-作家の活動で、例えば劇伴みたいな、自分ではない人が考えた物語に音楽をつけることはされていますけど、それをcadodeとして作ることで何か違いはありましたか?

スタンスはそんなに変わらないんですけど、一番違うのは、koshiの声が使えるっていうことだと思っていて。それだけでまったく違うものになるので。それプラス、そもそもがkoshiの友達なので、アグレッシヴに、リミッターがない感じで作れたのは大きな違いかなと思います。もう本当に好きな、自分たちが思う"カモレの夏"の曲を100パーセント出せる感覚というか。そこらへんが他と違うのかなと。

-トラックを作るときも"好きなようにやってください"と。

そうですね。"これはダメです"という話もなかったですし、もう好きに、自由に表現してくださいみたいな感じだったので。見て感じたもの、読んで感じたものを100パーセント好きに出したんですけど、そもそも親和性があるから書いたものがズレることもないんですよ。向こうからしたら、その安心感もあったんじゃないかなと思います。

-収録曲の中で、最初に取り掛かった曲はどれでした?

「カモレの夏」が最初でしたね。作品全体のイメージというか、主題歌みたいなものを先に作って、そこから"カモレの夏"の中のワクワクするところを切り取ったりとか、寂しさを切り取ったりとか。そういうふうに部分部分を切り取って作っていきました。