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INTERVIEW

Japanese

sajou no hana

2023年03月号掲載

sajou no hana

Member:渡辺 翔 sana

Interviewer:山口 哲生

このカードを切る予定は今のところなかった


-渡辺さん、当時のsanaさんってそんなに暗かったんですか?

渡辺:まぁ、明るくはなかったけど(笑)、そうなるのもわかってましたよ。このバンドも、3人がめちゃくちゃ仲良くなって組んだというわけではなかったので、ちょっとした待ち時間でふたりになった瞬間に"......"みたいな時間も初期はありましたし(笑)。

sana:ははははは(笑)。

渡辺:僕もそんなに喋るほうではないですからね。だからお互いがっていう感じでしたよね。

-渡辺さんにとってsajou no hanaの転機になった楽曲と言うと?

渡辺:初期の頃から3人が感じているsajou no hanaらしさみたいなものがあったんですよね。僕もキタニ君もsanaちゃんも、楽曲のイメージにはちょっと陰鬱というか、暗くて切ない感じの印象なのかなと思って、それが持ち味だと思って進んできて。おそらく、3人でずっと進んできたらそれもそのままだったんですけど、でも、わかってたんですよね。僕もキタニ君も、もうひとつ上に行くためには、ポピュラリティがあるもの、ちょっと温かいというか、希望を感じるような曲が絶対に必要なんだけど、ただ、sajouとしてそれはありなのかなってずっと思っていたんです。

-なるほど。

渡辺:そういうときに、アニメ"とある科学の超電磁砲T"のお話をいただいて、希望された楽曲の方向性が"爽やかで明るくて青春味を感じるもの"だったんですよね。ただ、sajouでいけるのか? って。たぶん合わないと思ったんですけど、それを合うと思って言っていただけたので、やってみようとなって作った「青嵐のあとで」(2020年8月リリースのメジャー4thシングル表題曲)が転機だったのかなと思います。

-実際に作ってみていかがでした?

渡辺:"結構いいじゃん"って。自分たちでも気づけなかったというか、外からの刺激で"いや、君たちはこの輪だけじゃないでしょ、もうちょっと広いでしょ"みたいに言っていただけたのは大きかったですね。殻を閉じていたわけではなかったんですけど、広げていただけたなと。それが好評だったのか、そこから爽やかな楽曲もご依頼いただけるようになりましたし、sajou no hanaのイメージの大きな軸のひとつになるぐらい、ターニング・ポイントというか、ひとつのきっかけになったかなと思います。

-sanaさんとしては、「青嵐のあとで」を歌ったときにどんなことを感じました?

sana:当時みんな言っていたと思うんですけど、自分の経験したことのない青春を歌った楽曲だったんですよね。でも、そういった青春を経験した人が歌うと、それはまたちょっと陽寄りになりすぎてしまうというか。

渡辺:おっ、トゲがある言い方ですなぁ(笑)。陽寄りのアーティストに対する陰寄りのアーティストの。

sana:いや(笑)、sajou no hanaのファンのみなさんとしては、たぶん、ちょっと別世界に行っちゃった感があったと思うんですよ。でも、青春を歌った楽曲ではあるんだけど、あくまでもみんなの憧れの中の、ちょっと切ない青春みたいな。

渡辺:そうだね。きれいな塩梅でしたよ。

sana:そのいいところを歌詞に書いてくれましたし、歌っていても、ちょっと切ない楽曲ではあるんだけど、そこにちょっと憧れの光みたいなのがあって。

渡辺:そうそう。あれは陽の曲じゃないんだよね。陰の人が憧れる陽のやりたいエピソードだから。

-あくまでも属性的には陰という。

渡辺:そうそう、陰の創作物です。

sana:その中にも憧れとかが込められているのがすごく好きなポイントでした。

-では、今回のシングル『切り傷』のお話に行こうと思います。タイトル曲の「切り傷」は、TVアニメ"ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 深章 厄災篇"のエンディング・テーマ。ピアノやストリングスを押し出したスロー・ナンバーで、爽やかというよりは、柔らかさが強調された曲ですけども、この曲はキタニさんが手掛けられていると。

sana:最初に"ダンまち"側から"バラードにしてみませんか?"というオファーをいただいたんです。

渡辺:これこそさっき話していた自分たちの輪から出たものですよね。時代感的にも、ここまでのしっかりしたバラードってあまりないですし、こういう曲が決して作れないわけではないけど、このカードを切る予定は今のところなかったので。そこを外側から言っていただいて、たしかに挑戦してみたいかもなと思いました。

-実際に楽曲はどう制作されたんですか?

渡辺:基本、タイアップものは僕とキタニ君のふたりがそれぞれ曲を書いて、選んでいただくという形なので、まずは各々の解釈を出すんですけど。僕はもうちょっと小難しい系で、キタニ君はストレートなものを書いて、キタニ君の解釈のほうがアニメ側と合致したっていう感じでしたね。だから、特にお互いこうしようという話はせず、いったんはクリエイターとして曲を出すという。そこはもう話さずとも、sajouらしさはお互い担保できているので。

-渡辺さんはちょっと小難しい感じにされたとのことでしたけど。

渡辺:実は1個前のシングル(2022年リリースの6thシングル『天灯』)のカップリングだった「Ruler」がそうなんですよ。もしどんな感じだったんだろうって気になる方は、ぜひその曲も聴いてもらえれば。おそらく"うわ、小難しっ!"ってなると思います(笑)。

-(笑)柔らかさという共通項はあるかもしれないですね。sanaさんは「切り傷」に対してどう歌おうと考えられました?

sana:バラードでリード曲だから、すごく感情的な楽曲になるかなと思っていたんですけど、いい意味でシンプルなものが来たので、"リード曲らしくしなきゃ!"っていうプレッシャーというか、すごく印象に残る感情的な歌い方をしなきゃと思っていて。でも、結局それはプリプロやレコーディングでかき消されました(笑)。

渡辺:サビはファルセットが多いんですけど、そこをガツンと出すアイディアを貰ったんですよ。それももちろん良かったし、全然不正解ではなくて、ライヴでそう歌うときもあっていいんじゃないかぐらいの感じですけど。とはいえ、また別のパターンも聴いてみたいっていうところからのお願いでしたね。sajouの楽曲でもよくあるんですよ、対極のアプローチをしてもらうという。だから、理屈抜きで"すげぇいい!"ってなったほうを優先したらこうなったっていう感じでしたね。

sana:そこ(ガツンと出すこと)が、まさにリード曲のプレッシャーの部分でしたね(笑)。曲の世界観も、冷たい外の世界とふたりだけの世界を描いた楽曲で、どちらかと言うと閉じこもった感じの雰囲気だと思ったので、近くで寄り添うように歌うのを意識しました。ただ、寄り添うと言っても、温もりとか温かさとか、語り掛ける感じというよりは、Aメロとかも外の世界の冷たくて苦しい世界を表現できるように、刺々しさとか、鋭利な感じに聴こえるように意識して声を作ってみたら、レコーディングのときに翔さんが良かったと言ってくれたので、良かったなって。

渡辺:僕が作った「Ruler」は、雰囲気で聴かせる曲なんですよ。だけど「切り傷」に関して、キタニ君はとにかく声を聴かせたかったんだろうなというのをすごく感じていて。イントロもきっかけの音はあるんですけど、ほぼ歌始まりみたいな感じで、エンディング・テーマだけど、ちょろっとしたイントロで飛ばさせねぇぜっていう(笑)、彼の強い意志も感じるし。サビ頭も楽器でバーン! といくのではく、一度周りの音をなくして歌のみになるところも、彼の意思を明確に感じたところでしたね。

-アウトロもなく、声の余韻が残る終わり方ですよね。

渡辺:たしかに。余韻もそうだし、言葉を選ばずに言うと、バラードってお腹いっぱいになっちゃうことも多いじゃないですか。そういうのを懸念して、どうお腹いっぱいにさせないようにするかという彼の工夫なのかもしれないですね。そうすれば、また次も聴きたいってなりますし。