Japanese
NeruQooNelu
2023年03月号掲載
Member:津金・C・リョータ(Dr/Caesar)
Interviewer:山口 哲生
今年1月に1stアルバム『Physical Drafty』を完成させたNeruQooNelu。現在の3人体制で再構築された既存曲と新曲を合わせた全12曲は、ローファイで、サイケデリックで、ノイジーで、変拍子を交えたトリッキーなアンサンブルを繰り広げながらも、キャッチーさをしっかりと保持した極上のストレンジ・ポップに仕上がった。Skream!初登場となる今回は、1stアルバムや、2月22日にリリースされた配信シングル「Physical Crafty」について、そして、様々な変遷を辿ってきたNeruQooNeluのこれまでのことや、バンドの根底にあるマインドやルールまで、代表して津金・C・リョータに話を訊いた。
意図しかないですね。意味がなくても、意図さえあればいいかなと思っている
-初アルバム『Physical Drafty』を完成させた今の心境はいかがでしょうか。
"やっと"が一番ですかね。バンド自体はもう10年近くやっていて結構長いんですけど、まだアルバムを出したことがなくて。じゃあそろそろ作ろうとなってからコロナ禍になってしまい、レコーディングが延びたりして、そこからまた結構時間がかかったので。でも、とりあえず名刺代わりじゃないですけど、形としてひとつ残せたかな、やっと、みたいな感じです。
-現在の3人体制に至るまでには、海外の方や女性ヴォーカルの方がいらっしゃったり、音楽性としても、結成初期に発表された『PRESENCE.EP』(2014年リリースの1st EP)はローファイでオルタナなバンド・サウンドが印象的でしたが、今作『Physical Drafty』はエレクトロ的なアプローチもあったりと、様々な変遷を辿っています。そもそも結成したタイミングでは、どんなバンドをやろうと考えていたんですか?
根幹の部分はずっと変わっていないのかなとは思うんですが、僕はそれまで違うバンドをやっていて、ドラムという立ち位置だったのもあって、NeruQooNeluを始めるまで作曲というものをしたことがなかったんですよ。だから、最初の頃は特にこうしたいとかを考えることなく、曲を作らんことにはライヴができんと思って、思いつくままに曲を作っていたんですけど、とにかく音量で勝負みたいな(笑)。音が大きけりゃいいだろみたいなところでやってましたね。キャッチーなメロディとか、ポップス的なものはいずれ出てくるだろうと思っていたので。まぁ、本当にそれが出てくるのかわからなかったですけど(笑)、とりあえずは3分、4分に音を詰め込んでいく。で、ローファイなものとか、オルタナ的なものに寄せていくのが自分の中では一番やりやすかったので、自然とそうなっていった感じでした。
-キャッチーなもの、ポップス的なものにしたいというのは、昔から考えていたことではあったんですね。
昔も今もですけど、"親切でありたい、聴いている人に、少しでも"みたいな部分があって(笑)。セッション的な感じというか、現代アート的なものをやるのは簡単だと思うんです。もちろん簡単なことではないんですけど、聴いている人を引き離していくことはできるなとは思っていて。とりあえず思いつくままに身体を動かせば、音は鳴るので。
-たしかに。
だけど、それって親切じゃないというか。ノイズ・ミュージックだけど、わかるところを提示していかないことには誰も見てくれないとも思っていたんですよね。"なんかわけのわからないことをやってるわ"で終わっちゃうし、それだとやっぱり寂しいじゃないですか(笑)。だからそこはきっと必要になるだろうなと思って。
-"親切でありたい"というのが、お話に少し出ていた、昔から根幹にあるずっと変わらないものなんでしょうか。
根幹の部分は、そことちょっと離れるんですけど、"なんじゃそりゃ"ですね。予想できたらつまらないと思うので、曲の構成とか、コードなのかリズムなのかわからないですけど、必ず"なんじゃそりゃ"っていう部分がないといけないと思っていて。だから、"なんじゃそりゃ"が一番大事なんですけど、"なんじゃそりゃ"をそのまま出しても、"なんじゃそりゃ"じゃないですか(笑)。そこで少し親切心を入れてあげる。そういうバランス感ですね。
-"なんじゃそりゃ"から生まれる興奮や衝撃を、親切心で伝わりやすいようにすると。
そうですね。でも、それが平面的というか、二次元だと面白くなくて。キャッチーさだけを前面に出すだけじゃつまらないし、"なんじゃそりゃ"っていうものを磨いて球体にしても、それだとどこから見てもなんなのかよくわからなくなるので、せめて立方体というか、面を出しておく感じですかね。僕も音楽を聴くときに、面がないと良さがわからないんですよ。かといって、平面的だと"あぁ、そうなるよね"みたいに飽きてしまうから、何をするにもそこは持っておかなきゃっていう部分ですね。
-いつも楽曲を作っていくときは、セッション的に作るのか、津金さんがある程度イメージを固めたものを伝えてから作っていくのか、どんなパターンが多いですか?
9割ぐらいは僕が全パートをある程度作って渡す感じですね。でも、史上最低のデモなんですよ、僕が作るデモって。一応パソコン上で作るんですけど、ギターもそんなに弾けないし、ディストーションでごまかせばそれっぽく聴こえるから、そういう感じでとりあえず組み立てただけのものなので。だから、史上最低のデモをメンバーが聴いて、各々解釈していくっていう。
-津金さんが曲を構築する最初の段階で考えるものって、ドラムなのもあってビートなのか、ギターやメロディといったフレーズなのか、何かテーマみたいなものがあって、それを落とし込んでいくのか。どういうところから作り始めることが多いですか?
最初は......まぁ、これは言わなくていいことかもしれないけど、そろそろ曲を作らなきゃなぁというのがまずあって。
-大事ですね(笑)。
はははは(笑)。メンバーが飽き性なんですよ。練習も嫌いだし、なるべくスタジオに入らないようにしているので(笑)。何か常に宿題を与えないと飽きちゃうんで、ライヴも決まってないからそろそろヤバいなと思って作り始めるっていうのはあるんですけど、曲を作り始めるときは、いつもだいたいベース・ラインからですね。ドラムをやってるんですけど、ベースが一番好きなんで。あと、ベースがあればリズムも、だいたいのメロディも決まるので、まずベースを作ります。で、今回のアルバムの曲がどうかはわからないですけど、野外で観たい感じというか。野外の夜、ぼちぼち狭いステージで、"フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)"で言うとFIELD OF HEAVENみたいな、奥のほうで変な人たちが集まっているところに出ても(笑)、遜色のない曲を作ろうっていう。
-なんていうか、ちょっと不思議な儀式的な感じというか。
そうです。観客席も含めて変な渦ができちゃってる感じの。
-(笑)結成初期から今に至るまで様々な変遷を辿っていくなかで、楽曲としてやりたいことが増えていって、それに合わせて音楽性も変わっていった感じだったんでしょうか。
いや、あるものをどこまで使えるか? っていうのが多いですね。今は3人ですけど、マックスで5人ぐらいいたのかな。バンドを結成したときは、ギターは3本欲しいと思ってたんです、なんとなく。Jimi Hendrixが好きなんですけど、Marshallがいっぱい並んでいるのが良かったから、Marshallじゃなくてもスピーカーを並べたいと思って、ギターを3人にしよう、じゃあギターが3本必要な曲を作らなきゃいけないなとか。あと、今は人数が減ったので、今までの曲は手が空いていないからできない、じゃあ機械ちゃんお願いしますみたいな。なので、そのときの自分たちができる最大限のものはなんなのか? っていうところから作っていく感じです。
-今いるメンバーの人数でやれることを考えていく。
そうです。で、ちょっとずつパワハラしていくというか(笑)。これもあれもやってほしいというのをお願いして、強制的にちょっとずつ増やしていくっていう。親切な音楽をするためにメンバーにパワハラして均衡を保ってます。
-なるほど(笑)。今回のアルバム『Physical Drafty』は、既存曲の再編集と新曲の制作を同時にされていたと。既存曲で言うと、「DISCORTION BIG LINE」は過去に配信されていましたよね。
そうですね。あとは「Lemon Watches」、「Grand Theft Auto」、「YOU MAY」、「Spinning Pile Driver」は昔からやっていた曲の再編です。
-「DISCORTION BIG LINE」は、リフは生かしながらも、いわゆる歌モノだったものをインスト曲にされていて。作業はどう進めていったんですか?
基本的には僕がやっていたんですけど、これは曲へのパワハラですね。お前はこれからどうするんだと。それをメンバーに投げて、ポカーンとしているところにパワハラをするという(笑)。
-これを弾いてくれと(笑)。
そうです。で、翌週にまた違うアレンジになるっていうことをずっと繰り返してましたね。
-再構築を始めたのはいつ頃なんですか? それこそコロナ禍前とか?
コロナ禍のちょっと前ぐらいですかね。コロナ禍になる/ならないぐらいの頃に、カバー・カセットテープ(2022年リリースの『SUMATOPOPPIH』)を作って、そこで今の原型じゃないですけど、機械に力を借りる方法とか、ループとかをいろいろやってみて。だから、カバーと、再編と、新曲作りを同時にやってました。
-再編していく作業は、ご自身の中では実験的な部分もあったんですか?
実験というよりは、新しい曲と昔の曲のギャップがありすぎるから変えたという感じですね。ライヴで今までのアレンジを再現することは、ある程度可能といえば可能なんですけど、あんまり面白くないなと思っちゃって。じゃあ変えていかなきゃなっていうのが大きかったです。だから、過去のものも今のフォーマットに合わせて、曲のケツを叩いていかないとっていう。
-今回のアルバムには収録されていないんですが、「ANONYMOUS」(2018年リリースのWEB限定スペシャル・ソング)をはじめとした配信用の楽曲も面白い曲でした。あれはオール・プログラミングですか?
ドラム以外は弾いてます。昔から、配信するためだけの曲、ライヴでは絶対にやらないというかできない曲を、数曲ですけどちょこちょこ作っていて。まぁ、僕が楽するための曲というか。ドラムは叩かない。打ち込む。他は弾けっていう(笑)。その延長線上で、デジタルなものをもう少し取り入れていったらどうなるだろうというところから出てきた曲ですね。
-この曲を含め、アルバムの曲もワードを連呼するのも示唆的というか、メッセージ性が強いなと思いました。
曲自体に思想とかをあまり乗せるタイプではないので、確固たるメッセージがあるわけではないんですよ。特にああいう曲に関しては、聴いている人、観ている人を、"こいつ、深ぇな"みたいな感じで騙せればいいなって(笑)。なので、それっぽくはなっているんですけど、そこまで深い何かはないですね。でも、あるように思わせるのと、"見掛け倒しじゃん"っていう間を突くポイントを探していく感じです。
-思想は過度に持たせたくないけれども、まったくないわけでもないというか。
そうですね。だから"聴いている人がそれぞれ思うように聴いてください"みたいなかっこいいことは言いませんけど、"気になったら聞いてね?"ぐらいの感じですね。"僕、優しいよ? 答えるよ?"みたいな。じゃあ実際聞かれたらどう答えようかっていうところまでは考えてないですけど(笑)。
-ははははは(笑)。そこに何かしらの意図はあるってことですね。
ですね。だから、意図しかないですね。意味がなくても、意図さえあればいいかなと思っていて。だから、今回のアルバムの曲もだいたいそうですけど、意味がないとは言わないです。意味があるかどうかは教えないけど、意図はあるよっていう感じですね。
-もう1曲、アルバムには収録されていない曲なんですが、歌詞や言葉の面で「FugaForo」(『SUMATOPOPPIH』収録)が印象的でした。この曲はリリック・ビデオを公開されていますが、YouTubeの概要欄から飛べるBandcampのページには"言語表記が独自のため、ここでは省略"と書いてあって。おそらく造語で、言葉の響きを大事にした結果そうなったんじゃないかと思うんですが、あれはどういうことなんですか?
あれは、ゲストで参加してくれた(ミヤオ)ヨウ(HOPI/ミヤオヨウバンド)ちゃんに、"適当に歌ってほしい"と頼んで、それを僕がなんとなく文字に書き起こしていくという作業をしたんですけど。ただ、MVに歌詞を出すときに、"何を歌っているんだろう"とか"何語だろう"と思われたら負けかなと思ったので、歌ってくれた言葉を全部それっぽく聴こえる英単語に変えて、そのAからZまでの言葉に対して、象形文字じゃないですけど、自分で文字を考えて、全部当てはめて並べていったっていう。
-へぇー! 面白いですね!
時間かかりましたね、あれは。
-それこそおっしゃっていた"なんじゃそりゃ"の部分ですよね。
そうです。歌だけでも"なんじゃそりゃ"にはなるんですけど、それをやると狙いすぎている気もしたので、じゃあ文字まで作ろうって。そこまでやらないと雰囲気で終わるなとも思ったので。だから"なんじゃそりゃ"の尻拭いをしていく文字作りでしたね。
-尻拭い(苦笑)。アルバムの話に戻しまして、既存曲は歌メロがなくなっているものが多いですが、「YOU MAY」は歌モノの状態のままになっていますよね。
そもそもこの曲をアルバムに入れるかすごく迷ったんですよ。この曲は、デモを作ったときに"おお、フツーの歌モノができた!"と思ったんです。フツーって言うのもあれだけど(笑)、アメリカンな感じっていうか。それをバンドに持っていってやったときに、歌がないとよくわからなかったというか。自分の中でのこの曲の一番の推しは、サビで歌よりもギターがデカいっていうところなんですよね。なんで被ってくるん? っていう。そういう自傷行為じゃないですけど(笑)。
-(笑)自らの手で。
そう。なんでめちゃくちゃにするん? みたいなのが、フツーの歌モノに対しての、自分の中の唯一の解答だったんです。だから歌がないと変だし、かと言ってここにデジタルなものを入れるのもなんかちょっと違うし、アレンジをすごく変えるのもなんか変だなと思ったので。
-この曲にとってはこの形が一番合うんじゃないかと。
そうですね。こういうところもあるよっていうのが出せればいいかなって。
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