Japanese
Hinano
Interviewer:山口 哲生
劇場版"DEEMO サクラノオト~あなたの奏でた音が、今も響く~"の歌姫オーディションで、世界中の応募者の中から当時14歳でグランプリを獲得し、昨年2月にメジャー・デビューしたシンガー、Hinano。包容力のある柔らかな歌声と圧倒的な歌唱力で注目を集めている彼女が、3rdシングル『CHANGEMAKER』をリリースした。アニメ"解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ"のオープニング主題歌としてオンエア中の同曲は、Hinanoにとって初となるアップテンポなロック・チューン。新たな表情を見せる楽曲と、彼女がこれまで歩んできた道のりについて、じっくりと話を訊いた。
昨日の自分よりも絶対に今日の自分のほうが上手いって自信を持ってからじゃないと、眠れない
-メジャー・デビューからまもなく1年が経ちますが、Hinanoさんにとってどんな1年でしたか?
劇場版"DEEMO サクラノオト~あなたの奏でた音が、今も響く~"の主題歌(1st EP表題曲「nocturne」)でデビューさせていただいたんですが、コロナ禍で公開されたこともあって、(世間的に)まだ映画館に行くことに抵抗があったり、大きなイベントもデビューしてからはそこまでなかったんですよ。そのなかでも、配信シングルを出させてもらったり、アニメやドラマのエンディング曲をやらせてもらったりとか、スタッフのみなさんがすごく支えてくださって。この1年はたくさんの人の縁に恵まれた1年だったなと思います。
-特に印象に残っている出来事を挙げるとするといかがでしょうか。
アーティスト写真やミュージック・ビデオの撮影は印象に残ってますね。デビューのときに撮影させていただいたんですけど、かなり久しぶりでしたし、ミュージック・ビデオなんて撮ったことがなかったので、ここから撮るとこういう感じの画になるんだとか、すごく勉強になりましたし。「ヴァージニア」(2022年10月リリースの2ndシングル表題曲)のミュージック・ビデオの撮影は、初めて正面からのショットがあったりして、自分の中ではあまり納得のいくパフォーマンスができなかったんですけど、その反省を生かして、今回の「CHANGEMAKER」のミュージック・ビデオは、手でアクションをしてみたり1回転してみたり、そこに結構気持ちを入れました。そこは思い出というか、これからどんどん成長していけたらいいなと思っているところですね。
-では、今回はSkream!初登場になるので、まずはHinanoさんがどんな方なのかお聞きしたいなと思っています。歌を歌う人になりたいと思ったきっかけはあったんですか?
"歌をやりたい!"と思ったのは、テレビに出ている歌うまキッズみたいな子たちを観て、"私はこれになるから!"ってお母さんに言ったのをすごく覚えています。
-"なりたい!"ではなく、"なるから!"だったんですね。
そうですね。歌を習い始めたきっかけは、お母さんの影響で。私のお母さんはクラリネット奏者で、今も学校で音楽を教えていたりして音楽の厳しさを知ってるんですよ。なので、私は小学校の頃からずっと音楽を習いたいと言っていたけど、"歌は毎日歌わないとどんどん下手になっていくけど、あなたは毎日やらないでしょ?"って言われて(笑)、他の習いごとはいろいろやらせてもらっていたんですけど、歌はずっと習わせてもらえなかったんです。でも、小学6年生になって、急にお母さんが、"今やっている習いごとを全部やめるなら歌を習ってもいいよ"って言ってくれて。
-念願叶っての。
そこから歌を習い始めて、中学1年生のときに別の事務所の候補生になったんですけど、結局所属には至らなくて。ダンススクールに通い始めたんですけど、歌よりもダンスという感じだったんですよね。たしか。そのあとに"DEEMO(DEEMO サクラノオト~あなたの奏でた音が、今も響く~)"のオーディションでありがたいことにグランプリをいただけて、今に至るという感じですね。
-なるほど。"私はこれになるから!"と言う前から、歌うことは好きだったんですか?
そうですね。"おかあさんといっしょ"をずっと観ている子だったってお母さんは言ってました。私は覚えてないんですけど、朝から晩までずっと観てたみたいで。
-何かしら音楽の流れているものが好きだったんでしょうね。
そうだと思います。今でもそうですけど、ご飯を食べるときも移動中もずっと音楽を聴いていて、音楽から離れられないというか。寝るときも音楽をかけていないと寝られないときもあるし、それぐらい私は音楽に触れていないと気が済まないんですけど、それは昔からずっとそうだったんだと思います。染みついているんでしょうね。
-人前でよく歌ったりもしていたんですか?
してました。生意気な子だったので、"歌ってあげるよ!"って言ってたんですよ(笑)。友達とか初めて会った人に"歌ってあげるよ! しょうがないなぁ"って。小学4年生ぐらいまでそういう感じだったので、当時はかなり痛い子だったと思います(笑)。ビデオにも残っていて、観るのが恥ずかしいですね(苦笑)。
-そういうときにはどんな曲を歌っていたんですか?
その当時は"アナと雪の女王"が大ヒットしていたので、ずっと「ありのままで(レット・イット・ゴー~ありのままで~)」(松たか子)を朝から晩まで延々と歌う生活をしてました。
-ちなみにHinanoさんの好きな音楽やアーティストというと?
自分が歌を始めるきっかけになったのは歌うまキッズの子で、渕口綾音ちゃんという方がいて。今はAYANEという名前で活動されていて、今もSNSをフォローしているぐらい好きで、声がいいなと思って聴いていたんですけど、また別の憧れる像も出てきたんです。今は海外の人が好きですね。最近はK-POPにめちゃくちゃハマってずっと聴いてます。今も週2でダンスのレッスンに行ってるんですけど、K-POPの曲をずっと踊ってますね。
-好きなグループとかは?
昨日踊ってたのはNewJeansの曲で、K-POPに関しては流行っている曲は聴いてます。
-小学6年からレッスンを始めたとのことでしたが、学校が終わったらすぐにレッスンみたいな生活だったんですか?
そうですね。当時は学校が終わったら家には帰らず、そのままレッスンに行ってました。両親の友達の家が駅の近くにあったんですけど、そこでレッスンのバッグと学校のカバンを入れ替えて、電車で1時間半ぐらいかけてレッスンに行って。そこから夜の9時半までレッスンして、11時とか、下手したら日付が変わるぐらいの頃に家に帰ってくるというのを週6でしていたので、学校の記憶がほとんどないんですよ。特に中学校の頃は歌よりもダンスだったので、授業中も力が抜けちゃうし、本当に覚えてなくて。
-好きで始めたのに、なんでこんなに苦しいんだろうって思ったりはしませんでしたか?
めちゃめちゃ思いましたね。そのときはダンスばかりやっていたので、自分が何になりたいのかわからなくなりましたし、候補生として週6で受けていたレッスンがすべてなくなってしまったときもすべてを失ったみたいでよくわからなくなってしまって。そこから2ヶ月ぐらい、歌から離れてしまって何もせずに過ごしていた時期があったんですけど、やっぱり歌をやりたいと思いました。
-そう思えた理由はあったんですか?
やっぱり歌が好きだから、離れても離れても戻ってしまうというか。それこそずっと歌を聴いていないとダメな性格なので、離れていたと言っても音楽はずっと聴いていたんですよ。だから、やっぱり自分は歌わないと生きていけないんだなって思いました。
-歌から離れてみて、改めてわかったと。
あと、2ヶ月離れると、やっぱりかなり下手になるっていうこともわかりました(苦笑)。私は1日歌わないと3日分落ちると思っているので歌っていないと落ち着かないし、今は毎日歌って、昨日の自分よりも絶対に今日の自分のほうが上手いって自信を持ってからじゃないと、眠れないような感じになりましたね。でも、ある意味ケジメというか、これから頑張る! って思えた2ヶ月だったので、逆にその期間があって良かったなって思います。
-そういった時期を経てのグランプリ獲得となると、それは相当嬉しいですね。
相当嬉しかったですし、お母さんが一番泣いてました(笑)。オンラインで合格発表を聞いたんですけど、隣にいたお母さんが隣で一番泣いていて。私としても、そのオーディションに懸けていたんですよ。お母さんとずっと話していたんですけど、"20歳までに歌が仕事にならなかったら、歌手という目標は諦める"って、2ヶ月離れたときに決めていたんですよね。だから、こんなにすぐに決まるとは思っていなかったのですごく嬉しかったし、ちょっとだけ安心しました。そこまで背負ってきた荷物をちょっと下ろせた感じもあって。
-なるほど。お母さんが泣いていたというのはすごくいい話ですね。
お母さんはそんな感じでしたね。お父さんは普段泣いたりとかもしない人なんですけど、興奮が収まらなかったみたいで、家の中を1時間ぐらいずーっと行ったり来たりしてました。
-かわいらしい(笑)。
そうなんですよ(笑)。それがその日の思い出ですね。
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