Japanese
Hinano
Interviewer:山口 哲生
-では、今回リリースされた3rdシングル『CHANGEMAKER』のお話にいきましょう。この曲はアニメ"解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ"のオープニング主題歌になっていて。Hinanoさんは、これまでミディアム~スローテンポの楽曲を歌われることが多かったですが、今回はかなりアップテンポなロック・サウンドの楽曲ですね。曲を初めて聴いたときにどんなことを思いました?
この曲をちゃんと歌いきれるのかなって思いました。私の楽曲は(キーが)とにかく高いし低いし幅もどんどん広がってきているんですけど、最初に仮歌が送られてきたときに、キーがより高かったんですよ。地声で出せるかどうかギリギリの音域だったし、レコーディングまでの時間もあまりなかったので、かなり焦ってましたね。毎日どうしようと思いながら、学校に行くときもずっと仮歌を聴いて、ここは地声にするか裏声にするかってずっと悩んでました。
-実際に歌ってみていかがでした?
私はレコーディングとかライヴの前に揚げ鶏を食べる習慣があるんですけど──
-揚げ鶏って、セブン‐イレブンの?
そうです。いつもレコーディングするスタジオの前にセブン‐イレブンがあるんですよ。そこで絶対に揚げ鶏を買ってもらって、食べて、10分ぐらいしてからレコーディングをするんですよ。その日も食べたんですけど、ワンコーラス半ぐらい歌い終わったら、声がガラガラになっちゃいそうで。そしたらディレクターさんが揚げ鶏を買ってくれて、結構お腹いっぱいになりながら「CHANGEMAKER」はレコーディングしてました(笑)。
-(笑)これまでは包容力のある歌声が印象的でしたが、今回はがなる感じで歌う場面もありますよね。そういう歌い方をしてみようってイメージもすぐに浮かびました?
そうですね。アニメのオープニング主題歌だったので、スタート感が大事だなと思って。物語が始まるドキドキ感とかワクワク感を出したかったので、1から10まであったとしたら、Aメロは1でBメロは3みたいな感じで、曲を通してだんだんボリューム感が大きくなるようなイメージをしていました。
-今まではあまり出してこなかった歌い方でもありますけど、得意でもあるんですか?
なんならゆったりした曲より得意かもしれないです。ワー! ってがっつり歌うのも好きだし、こういう曲はよく聴いているので得意ではあるんですけど、それをライヴで歌うとなると結構キツいのかなっていうのはありますね。
-たしかにこれは大変そうですね。歌詞はかなり力強くて、聴いている人の背中を思いっきり押す感じがありますけども、歌詞を読んでどんなことを感じましたか?
私は、デビューが決まる前もそうですし、デビューが決まったあともコロナ禍の影響もあってデビューも2年遅れているんですよ。だから、この先どうなるのかわからない不安がずっとあって。でも、そういうなかで自分のことを信じて頑張っていたときのことを、ちょっと心に置いてレコーディングしました。"信じて貫けばいい"っていう歌詞があるんですけど、自分のことを信じないと何も始まらないなっていうのは今でも思っていることなんです。何年かかるかわからないし、もしかしたら何十年かかるかもしれないけど、信じて努力し続ければそれは自分に返ってくるというのは、裏のテーマとして入れています。
-アニメに合わせた歌詞でありながらも、Hinanoさんのこれまでとリンクしている歌詞でもあると。
歌詞を書いている岩里祐穂さんが、私が生きてきた一日一日を全部知っているんじゃないかっていうぐらい、私に当てはまるものを書いてくださるんですよ。まだ1度しかお会いしたことないんですけど、そのときに私のことを全部吸い取ってくれたのか、私の人生を全部入れてくださっているなっていうのはすごく感じます。
-そういう歌詞となると、より気持ちが入りますね。
そうですね。最後のサビに"今こそ"という歌詞があるんですけど、ここでしっかり"今こそ感"を出したかったんですよ。どうやってそれを出そうかなと思って、音程にしないでセリフにしてみるとか、いろいろ考えたんですけど、それだとオケに負けちゃう感じがしたので、ここはがなりだなって。それをディレクターさんが聴いたときに、"「今こそ」感があっていいね"と言ってもらえたんです。最後のサビだけはどうしても違いをつけたかったので、1コーラス目と2コーラス目のサビでは裏声にしていたところを、だいたい地声にして歌いました。
-まさにおっしゃっている通り"今こそ感"がありますね。すごくパワフルで、突き抜けていく感じがあって。
ラストの"changemaker"も今は最後に(メロディが)上に行くんですけど、もともとは下だったんです。でも、お母さんに聴いてもらったらここは始まり感があったほうがいいと思うよって言われて。それで、自分の地声ギリギリだったんですけど、アドリブで上で歌ってみたんです。怒られるかなと思ったんですけど、"お、いいんじゃない"って言ってもらえて。ただ、いろいろ支障が出て、ハモリの音程が全部変わりました(苦笑)。私、ハモリが苦手なので、自分の首を自分で絞めちゃった感じがありますね。
-ただ、あそこで上がるからこそなところはありますよね。
そうですね。始まり感がすごく出るし、アニメの映像を観たときも、すごくシンクロしていて良かったなって思いました。
-そんな「CHANGEMAKER」とは打って変わって、カップリングの「Never Ever」はスローで音数も少なくて、真逆な感じになっていて。先ほどハモりは苦手とおっしゃっていましたが、コーラスがきれいだなと思いましたよ。
大変でした(苦笑)。私、主旋(律)よりもハモりを練習しないと、耳に入らないんですよ。ずっとハモりを聴きながら、難しいなぁ......って。
-最初に曲を聴いた印象はいかがでした?
この曲はキーが高いとか低いとか、そういう感じではないんですけど、私にしては結構大人っぽい曲だなって思いました。ただ、この曲が「CHANGEMAKER」のカップリングになることは知らされていなかったので、いつ出すのかなぁって思っていたら、まさかこのタイミングで。真反対の曲と言ったらあれですけど、「CHANGEMAKER」がすごく激しいぶん、「Never Ever」はすごく大人しい感じで、ふたつの自分を見せられるシングルになったと思います。
-その両方がしっかり聴けるというのはいいですね。歌う際に気をつけたポイントというと?
「Never Ever」はラヴ・ソングだけではなく、どんなふうにも捉えられる曲なんですけど、悲しくて切ない感じの曲というのを頭に置いて歌ってみました。あと、ずっと流して聴いていられるようにしたいと思ったので、キツいところは素直に裏声にするとか。歌詞に出てくる子はすごく素直な子なんだなと思ったんですよね。だから歌い方も素直にやってみようって思ったのと、あとはエッジをちょっと多めに入れてみました。いつもだったらくどく聞こえてしまうのでエッジはあまり入れないんですけど、切ない曲だからちょっとくどくなってもいいかなと思って。それで足し算引き算をして、地声は少なめ、裏声を多めで、ウィスパー・ヴォイスとかミックス・ヴォイスを使って仕上げました。
-歌詞を見たときに、素直な子だなと思ったんですね。
私はだいたい歌うときに情景を想像するんですよ。「CHANGEMAKER」は、ナイフを持って、写真をばっさり切るみたいな(笑)。上手く言葉で説明できないんですけど、そういう感じの情景を想像していて。「Never Ever」は、"どうぶつの森"みたいなところで、海が目の前にあって、ベンチに座って、ちょっと欠けた月を見上げながら考えている女の子のイメージが出てきたんですよね。何を言っているのか自分でもよくわからないし(笑)、あまりわかってもらえないんですけど。
-いや、結構伝わりましたよ。
ほんとですか!?
-温かさとか柔らかさがあるんだけど、切なさもあって。昔を振り返っているんだけど、本人的にはそこまで落ち込んでいるわけでもない、みたいな。だから、なるほどなぁと思いながらお話を聞いてました。
良かったです! 情景を想像しながら歌うと、1曲通して統一感がちゃんと出るんですよね。そのためにそういったものをイメージして歌ったほうが、自分としてはいいなと思ってますね。
-真逆とも言える2曲を収録したシングルが出たわけですが、2023年、こんな1年にできたらいいなと考えていることはありますか?
今年高校3年生になるんですけど、大人の仲間入りになる年になるので、もうちょっといろんな歌い方を研究できたらいいなと思っています。いつも足し算引き算をしながら歌っているんですけど、まったく引き算をせずに歌ってみたらどうなるんだろうとか、今は安定した歌い方をしているんですけど、そこからちょっと外れた歌い方をしてみるとか。
-いろいろな表現方法を身につけたいと。
そうですね。まだ自分の知らない声や歌い方が絶対にあると思うので、もうちょっといろんな自分を知れる1年にできたらいいなと考えてます。
-ライヴとかはいかがです?
ライヴもちょいちょいやってはいるんですけど、コロナ禍でいろんな規制があったところから、ちょっとずつできるようになってきて......ただ私緊張しちゃうから、ライヴがあまり得意じゃないんですよ(苦笑)。1曲歌うと慣れるので、そのあとは楽しく歌えるんですけど。
-緊張しいなんですね。
でも、本番前は"緊張する、緊張する"って言ってるんですけど、あんまり緊張してないはずなんですよ。
-どっちなんですか(笑)。
いや(笑)、"緊張する、緊張する"って言っていると自分の中で緊張がなくなっていく感じがあるんですよ。
-あぁ。口に出すことで逆に落ち着くというか。
そうです! それで言ってるんだと思います。私、だいたい1曲目に「Something To Lose」(2022年8月リリースの1stシングル表題曲)を歌うんですけど、自分の中では結構難しいなと思ってる曲なんですよ。それを1曲目に持ってくる自分もバカなんですけど(苦笑)、それもあって緊張するんですよね。これからもっと曲ができていけば、1曲目に歌う曲も変わると思うんですけど、とにかく1曲目の緊張をなくすようにできればいいなって。それも今年の目標にします(笑)。
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