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INTERVIEW

Japanese

THEティバ

THEティバ

Member:明智 マヤ(Vo/Gt) サチ(Dr)

Interviewer:山口 智男

前回のインタビュー(※2021年2月号掲載)で、マヤさんはカントリーやフォークもお好きだとおっしゃっていましたが、今回カントリーやフォークのエッセンスが、前の2枚よりも滲み出てきたという印象もありました。

マヤ:ほんとですか。自分では全然意識してないですけど、家で"うーん"って言いながら、ばーっと一気に作ったから、"好き"が出ちゃったのかな。

サチ:あぁ、根底にある"好き"が(笑)。

-例えば、1曲目の「Through the dark」。

マヤ:「Through the dark」は初期の頃からあった曲で、ライヴでもやってるんですけど、それはもうフォークというか、ケルト感を出したいって作った曲だったので、そう思ってもらえたら大成功ですね。

-「Mother bear」もシャッフルっぽい跳ねるリズムと、"Mother bear She killed her child"というポップな曲調とは裏腹のダークな歌詞の組み合わせが、トラッド・フォークに通じるのかなと思いました。

マヤ:嬉しいです。その曲はNANCYというイギリスのアーティストと対バンしたいなと思いながら作って、コンセプト・アルバムを作ろうとしていたときに書いた歌詞をつけたんですよ。

-そのNANCYは「Mother bear」のような曲をやっているんですか?

マヤ:NANCYはなんだろう? 自分では"Bizarro Trash Pop"って言ってますけど(笑)。

サチ:なんかふにゃふにゃしてる、声も音も。

マヤ:イギリスの70年代ぐらいの気持ち悪いロックというか(笑)。でも、最高なんですよ。

サチ:サーカスをひとりでやってるみたいな感じなんですよ。

マヤ:あぁ、そんな感じそんな感じ(笑)。

-「Mother bear」の跳ねるドラムは、どんなところから?

マヤ:GREEN DAY?

サチ:弾き語りでデモを貰ったんですけど、彼女のクセなのか、ギターのコード・ストロークがもともとそういうリズムだったんです。でも、私は最初、イントロがGREEN DAYの「Holiday」みたいに聴こえて。なので、若干ノリはそんなところもありつつ、録り音は全体的にデッドになったみたいな。

マヤ:1920年代のドラムみたいな音にしたかったんです。

サチ:1920年代とか、1930年代とかの。

マヤ:ジャズ・エイジな感じです。

サチ:ストーリー性のある歌詞から私がイメージしたのが、古い白黒のアニメと(アニメの)"カウボーイビバップ"の最初に出てくるバーだったんです。だったら、1920~30年代なのではっていう広げ方をして、ドラムの音もそこに寄せてもらって。

-一曲一曲にそういうイメージがあって、そのイメージに相応しい音作りをしていったのですね。シンセを使って、サイファイな音作りをした「Alien loves you!」は、どんなイメージから広げていったのでしょうか?

マヤ:曲名はあとから付けたんですけど、とにかくシンセを使ってみたくて作った曲なんです。イメージは、東京ディズニーランドの"トゥモローランド・テラス"に、"パン・ギャラクティック・ピザ・ポート"ってピザ屋さんがあるんですけど、そこにピザを配達するエイリアン(のキャラクター)がいるんですよ。そいつをイメージしました(笑)。あの曲は全体的に"トゥモローランド・テラス"のイメージですね。そこで流れたらいいな。

-今回のアルバムはシンセの他にもギター、ベース、ドラム以外の音を使っていますね。中でも鉄琴の音色がすごく印象的でした。

マヤ:"EELSの1stアルバム(『Beautiful Freak』)最高ですよね"って話を岳士さんとしてるときに、"そのアルバムみたいに鉄琴を入れたい"って私がふと言ったことを、岳士さんが覚えていてくれて。試しに入れた中で「After the midnight」は、結構いい感じでハマりましたね。

サチ:「Flowing」に入っている鉄琴も印象的ですね。鉄琴が入る前とあとでは曲の印象ががらっと変わったと思います。

-鉄琴は岩本さん? それともサチさん?

マヤ:岳士さんと私が打ち込みで入れました。

-あ、打ち込みだったんですね。じゃあ、ライヴでその2曲を演奏するときはどうしますか?

サチ:同期で流しながらやると思います。でも、自分で叩きたくなってきました。手がもう1本か2本増えたらやりたいです(笑)。

-WILCOのGlenn Kotcheは、片手でスネアを叩きながら、もう片方の手で鉄琴を奏でるんですよ。

サチ:なるほど。いいな、そのシステム。めっちゃかわいい。こっちビートなのに、こっちはメロディっていう。すごい! 私もやりたい。

-おっ、期待してます。「Flowing」ではストリングスも鳴っていますね。

マヤ:あれもシンセなんですけど、サックスの音なんですよ。岳士さんがデモで持ってきてくれて、良すぎたのでそのまま使わせてもらいました。

-一曲一曲、丁寧に作り上げていったことが窺えます。今回は、そういうところも聴きどころだと思いました。ところで、「Circulation」はサチさんの作詞/作曲です。前回のインタビューで、マヤさんから"曲はどれだけあってもいいから書いたほうがいいんじゃない?"と言われていましたけど、1曲だけだったのですね(笑)?

サチ:そうですね(笑)。アルバムだから、最初はイントロかアウトロになる曲があったらいいなという気持ちで作ったんですけど、結局、曲順的には10曲目が一番いいねとなりました。"Circulation"という曲名通り、地球の循環を感じられるような曲です。

マヤ:この曲、メロがいいですよね。

サチ:あ、良かった。ちょっとドキドキするんですよね。いい曲を書く人に歌ってもらうのは、すごく緊張するんですよ。

マヤ:そうなんだ(笑)?

サチ:そうでしょう。だから、"メロがいい"と言ってもらえてほっとしました。

-今回、新たな試みはありましたか?

マヤ:それこそシンセをいっぱい入れたことかな。

サチ:むしろ、そっちがメインというか、シンセを軸にドラムの音を足し算引き算したんです。それは新しかったかもしれないです。

-それぞれに印象に残っている曲は?

マヤ:「Mother bear」は楽しかったです。初めて行ったスタジオで録音したんですけど、ギターもアンプもエフェクターも、たくさんある中から"好きなの選んでいいよ"って言ってもらえたんですよ。

サチ:自由に使わせてもらったね。

マヤ:"えぇ~、何にしよう"って言いながらグレッチで弾きました。エフェクターもいっぱい試させてもらって、すごくギターの音にこだわった1曲になりましたね。ドラムテックの人に入ってもらったのも初めてで、ドラムがすっごくいい音がしたんですよ。

サチ:私たちの抽象的な説明を汲み取ってもらって、音にしてもらうって体験ができて嬉しかったです。

マヤ:それこそ、さっき言った"1920年代のジャズ・バーみたいな"って言うと、"こんな感じですか?"って音を作ってくれて、実際叩くと"うわっ、思ってた通りの音だ。すごい!"って。

サチ:それで言ったら、「Alien loves you!」は、TOTOの「Rosanna」っ超意識したドラムをつけたら、曲がめっちゃ良くなりそうと思ったんですけど、ドラムテックの北村優一さんがTOTO大好きだったみたいで、「Alien loves you!」のドラム録りの音色を注文するときに"TOTOの......"、"「Rosanna」ですね!"、"それでお願いします!"って話がトントン拍子で進んだんですよ(笑)。

-TOTOとか、さっき言っていた'80sのハード・ロックとか、そういうワードからこのアルバムの音に繋がるところが不思議です(笑)。

サチ:私たちがひっぱってくるものが意外と思われると嬉しいですね。ということは、THEティバとして昇華できてるってことなのかなと。

-そう思います。そして、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文(Vo/Gt)さんがマスタリング・エンジニアとして参加していると聞き、びっくりしたのですが。

マヤ:岳士さんがGotch(後藤正文)さんと仲良いらしいです。前にGotchさんがTHEティバをプレイリストに入れてくれたんですけど、岳士さんが"THEティバのプロデュースをやっている"とGotchさんに言ったら、やってもらえることになりました(笑)。

サチ:完全に岳士さんの力です。最終的な音像を、Gotchさんに頼んだら合うと思うって岳士さんは思ったみたいです。

マヤ:ミックス音源よりもインディー・ロック味の強い音像になったと思います。日本感がなくなった気がしました。海外の風が吹きましたね(笑)。

-さて、そんな『On This Planet』は、どんなアルバムになったという手応えがありますか?

マヤ:新しいTHEティバを見せられるのではないかと思います。

サチ:みんなに聴いてもらって、どう感じたか早く聞きたいです。

マヤ:どう捉えられるのか全然わからないよね。

サチ:いろいろな曲が入っているので、それぞれの捉え方をしてもらって、どの曲が一番好きなのかとか教えてほしいです。一辺倒じゃないところがいいと思うんですよ。

-リリース後はどんな活動をしていこうと?

サチ:リリース・ツアーを横浜、名古屋、大阪、東京で計5公演やります。

マヤ:激アツのバンドが参加してくれます。

サチ:6月18日の初日はKING BROTHERSとのツーマンです。

-えっ!?

マヤ:そこから始まるんですよ。すごいですよね(笑)。

サチ:私たちのホームの横浜B.B.STREETに呼ぶんです。

マヤ:横浜に来たことがあまりないから楽しみと言ってくれてて。

-以前から面識があるのですか?

マヤ:私がドラムのゾニーさんと仲良くさせてもらってて。

サチ:それもあって、キンブラ(KING BROTHERS)のワンマンでオープニング・アクトをやらせてもらったんです。

マヤ:そしたら、キンブラの兄さんたちもキンブラのお客さんも、"THEティバいいね"って言ってくれて。"応援したい"って言ってくれたので、じゃあ誘っちゃうかって誘ったら、出てくれることになりました(笑)。

-その他の対バンは?

サチ:各地、最近仲良しの最高にかっこいい人たちが出ます。

マヤ:7月16日のファイナルは下北沢のBASEMENTBARとTHREEで往来イベントをやるんですけど、お笑い芸人さんも呼びます。いろいろやっていきたいんです。いろいろな人に聴いてもらえる気がしてます。