Japanese
HEESEY
Interviewer:秦 理絵
混沌の時代をロックンロールで免疫を上げて生き延びていこう。THE YELLOW MONKEYのベーシスト、HEESEYが本日3月3日にリリースした約4年ぶりのソロ・アルバム『33(ダブルスリー)』は、そんな痛快なメッセージを全編で放っている。還暦を目前に控え、やりたいことをすべてやり切る覚悟で臨んだという今作は、王道のロックンロールからオルタナ、ジャズ、オールディーズまで、かつてないほどバラエティ豊かな作風になった。東京は下町、雷門から地球の裏側のブラジルまで。"数秘術"に導かれて、時空を超えたロックンロール・アルバム『33』の成り立ちについて、HEESEYにたっぷり語ってもらった。
-今作『33』はHEESEYさんワールドが全開ですね。これまで以上に振り切ってる感じです。
たしかに(笑)。レコーディングが始まる前から、ソロは好き勝手に、思いつくがままにやろうとは思ってたんですけど。レコーディング中に数秘術に出会ったんですよ。
-ええ、ブログを拝見しました。数秘術って占いなんかでよく見かける、自分の生年月日から計算する数字ですよね。
そう。それがわりとレコーディングが始まって早い段階だったんです。エンジニアさんに"HEESEYさんは33だね"って言われて(※1963年4月19日生まれなので、1+9+6+3+4+1+9で算出)。それにすごく背中を押してもらって制作したアルバムなんですよね。そんな占いに左右されるなんて、お前は女子か!? って感じですけど(笑)。
-数秘術の話はあとで改めて聞かせていただくとして。そもそもアルバム制作の最初の段階では何か方向性はあったんですか?
特にコンセプトがあったわけではないです。ただ、今思うにコロナに翻弄されたところは大きかったと思いますね。タイミング的には、THE YELLOW MONKEYが2019年から2020年に結成30周年のドーム・ツアーをやったあと、ソロの制作に入るつもりだったんです。そこにコロナがきちゃったんですよね。それで東京ドームは中止になっちゃって、振替公演になりましたけど。そうやってコロナに翻弄されるなかで、そのコロナに対する考え方も変わってきたのかなと思うんですよ。変わらなきゃいけないのかなって。
-withコロナにシフトするという言い方もありますし。
新しい時代ですよね。そうなっても、自分の直球のところはド真ん中のロックンロールだな、と思ったんです。新しい時代にもう一度原点に立ち返る。と同時に、どう自分のロックンロールを鳴らそうかな、みたいなことは考えてました。それが2曲目の「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」に繋がるんです。このコロナの時代をロックンロールで生き延びよう、サヴァイヴしようっていうテーマですけど。この曲ができたときに、もう、これで進めていこう、みたいなのはありました。そこで数秘術に出会ったっていう経過なんです。
-「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」はブラスとピアノをアレンジに加えた、まさに新しい時代を謳歌していくような華やかなロックンロールですね。
このイントロのフレーズは絶対ナマのブラス・セクションで鳴らしたいなと。もともとは「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」が1曲目の予定だったけど、その前に「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」に繋がっていくプロローグ的なものが欲しいなと思って、短いシンプルな「NEW DAYS」を作ってオープニング・ナンバーにしました。
-華やかにではなく、ダークにアルバムの幕を開ける形に変えたと。
そう、あえて1回ダークに始まってみる。そこで歌われてることは、やっぱり「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」と同じテーマです。虐げられたり苦悩したり、イコール、コロナなんですけど、そこで新しい時代を呼び寄せようぜ、みたいな。それは実はコロナだけじゃなくて、ある種普遍的なところもあると思うんですよ。人類の歴史上、革命とかテロとか苦しい時代もあったけど、同時に明日への新しい希望があったはずなので。そういう新たな何かを迎える時代にあてはまるような作品になってほしかったんです。
-アルバムの最後に、「NEW DAYS」とほぼ同じサウンドで歌う「NEXT NEW DAYS (New Days Reprise)」が、エピローグ的に置かれていますね。これはどういう経緯だったんですか?
実はレコーディングが2回に分かれてて、後半のレコーディングが始まったときに「NEW DAYS」を作ったんですけど。その途中で、これが最後にもう1回きたら、リプライズ(反復)して面白いだろうなと思ったんですよ。この2曲は同じトラックなんです。使ってる音は同じでアレンジとか構成を入れ替えて、歌詞だけ全然違うっていう。それが12曲目にあることで、まだ1曲目にループする感じにしたかったんです。
-今回の制作では途中で方向性を変えたり、"これをやりたい"って湧き出てくるアイディアをガンガン詰め込んでいったりするようなことが多かったんですか?
最初は考えて考えてやったつもりだったんですけど、結構行き当たりばったりなところはありましたね(笑)。それも思えば、数秘術で出てくるダブルスリー(33)に影響されてたんだと思います。33って変人なんですよ(笑)。っていうのを知ってたから、それを深く掘り下げていくことにハマっちゃって。普通は数秘術で出る数字は1から9が多いんですね。9のあとは10がなくて、次は11。で、あとは22、33っていうゾロ目の人だけなんです。中でも33が相当レアだと言われていて。
-33には、他にどんな性質があるんですか?
ゾロ目の人はその数字を足した性質も持ってるんです。11だったら2、22だったら4、33だったら6。で、6って調和なんですよ。物事をまとめようとしたり、融合させたりする力ですよね。逆に3は子供っぽさとか天真爛漫の象徴なんです。だから自分の中に相反している2面性があるんですよ。6が3をなだめる。"まぁ、そんないろいろできないでしょ"って。だから、頭の中でものすごい葛藤があるらしくて。きっと僕はずっとそういうのを知らず知らずに感じてたんです。でも自分が33っていうことを知ってしまって以来、そんなにうまく調和させなくていいじゃん、だってソロ・アルバムだから好き勝手やるんだもん、新しい時代だもんって目覚めてしまって(笑)。だから今回のアルバムはあんまり整えてないんです。まぁ、結果的に整ってるんですけどね。どっかに6の要素もあるので。
-それで、自分が33であることをそのままテーマにした、「33 (Double Three)」という曲も生まれてきたわけですね。
そう、自分本位ですね。"俺、こんなやつ?"っていうのはあるんですけど(笑)。
-HEESEYさんは自分が33であることが好きみたいですね(笑)。
そう(笑)。33の人はそうらしいんです。人に"変わってるね"とか言われるのが嬉しい。人によっては"俺は変わってねぇよ"とか思うじゃないですか。でも、33の人は"変わってるでしょ!? 変わってるでしょ!?"ってなる。"天然だねぇ"とか"不思議ちゃんだね"って言われて、"でしょ?"ってなるらしいですね。でも時々いやいや、そんなに超変人になってもダメだから、調和をとろうよっていう6の人もいるんですよ。
-「33 (Double Three)」はサウンドも攻めてますね。90年代とか00年代のUSのオルタナ・ロックっぽい雰囲気があって。そこまでロールはしてない感じというか。
そう、オルタナ・ロック感もあるし、もっと言えば、アレンジが違うだけでわりとユーロビートとかダンスものに通じるものもある。そこが好きなところなんですね。過去のソロの収録曲にも似たような曲があるんですけど、アプローチを変えてるんです。自分の中では必殺技な曲調です。この曲もだし、「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」も、「RALLY ROULETTE ROLL」とかも、前半の曲はレコーディングも前半に作ってるんですよ。
-あ、「RALLY ROULETTE ROLL」は歌詞が面白かったです。
"らりるれろ"を歌ってるっていう(笑)。
-その発想が最初だったんですか?
"らりるれろ"が先です。先っていうか、意味がわかんない歌詞を作りたかったんですよ。いつも歌詞で悩むから。本当はわかりやすい歌詞を書いたほうがいいっていうのはあるんですよね。それは6の人が言ってるんですけど。その"3と3"が、"いいんだよ、歌詞なんかどうでも。たまには洋楽みたいにあまり意味がない歌詞も作ってみようよ"って言ってるんです。
-ええ(笑)。
で、"Let it roll"っていう言葉が自分の中であって。レリローって聴こえるから、"らりるれろ"って仮歌で歌ってたんですよ。最初はそのままでもいいかなと思ったんですけど、英語にあてはまらないかな? っていうのを考えて。"らり"は卓球とか車のRALLY、"るれ"はROULETTEで回るからロールを表せる。で、"らりるれろ"がちゃんと意味になるなって。あと、ルーレットはギャンブルだから、ロックの典型的なところにそういうのがあるじゃないですか。酒と女と博打。今までそういう典型的で気障なロック感はベタすぎるから避けてたんですけど。書いてみたら、面白くなっていって。
-さらに"あいうえお"とか"がぎぐげご"も入れちゃおうっていうことだったんですね。しかもヤンキーみたいな感じの当て字で(笑)。
そうそう、夜露死苦みたいな(笑)。
-でも完全に無意味なんじゃなくて、なんとなく意味ありげな言葉を選んでますよね?
そう、なるべく意味のある漢字にしてます。"さしすせそ"に自分(廣瀬)の瀬の字を入れてみたりね。歌詞とリンクするような、ギスギスした荒くれててやさぐれてる曲調ですね。
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