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INTERVIEW

Japanese

Little Parade

2021年12月号掲載

Little Parade

Interviewer:山口 哲生

-今回の収録曲の中でも「501 with oneself」は、サウンド的にジャズ風味で渋さもある感じになっていますね。

初めてこういう曲にチャレンジしました。作っていたときのコードがそっち寄りで、いわゆるポップスのコード進行ではなかったから、その畑の人にアレンジをお願いしたいなと思って、臼井(ミトン)君に頼みました。今はどうしても打ち込みの時代になってしまっているけど、全部生で録ってくれて。やっぱり温かみがありますよね。

-気持ち良かったです。曲としては、こんな感じのコードの曲を作ってみたいな、というところが出発点だったと。

そうですね。今まで自分が使っていないコードを探していたので。でも、結局俺が歌うと、ネオソウルとかジャズとかそっちにはならずに、自分らしい音楽になるなって思いました。アレンジした臼井君も、"そこが新しくていいと思った"と言ってくれて。昨日、ライヴのリハをやったんですけど、この曲がやっていて一番気持ち良かったんですよ。こういう音楽って、歌もアレンジを加えられるから楽しいんですよね。こういうのにハマっていく入り口なのかなってちょっと思っちゃったぐらい気持ち良くて。聴いてくれる人がどう取るのかは楽しみでもありますけど。

-初めて挑戦したタイプの曲ではありますけど、歌詞はスムーズに出てきました?

そもそも歌詞はそこまで悩まないほうなんです。1曲に何日もかけるということもなくて、パっと書く感じですね。メロディとコードのほうに時間をかけます。

-サウンド的には、歌詞を性愛的な方向に持っていくこともありだと思うんですけど、メッセージ・ソングになってますよね。

最終的にはそうなりましたね。たぶんそこは自分のクセだと思うし、年を増すごとに若者を励ましたいっていう欲求が強くなってるなぁって(笑)。せっかくだからって思っちゃうんですよね。最近はAqua Timezを聴いてきた20代の子がミュージシャンとして頑張っていたり、水泳の池江璃花子選手が「決意の朝に」(Aqua Timez)を聴いてくれていたりして。あのときは自分のことを内省して歌っていただけだけど、自分を曝け出すと、それを光にしてくれる人もいるから、やっぱりメッセージのない音楽は、俺にはあんまり似合わないのかなと。何かひと言でもね、優しい歌になるための言葉を選びがちというか。そういうところはありますね。

-メッセージを直接的に伝えるものもあれば、「置き去りの鉛筆」のような情景描写の中にご自身の気持ちが滲み出ている歌詞もあって。

この曲も、メロディやコード感がこういう歌詞を書かせた感じでしたね。リハで歌っていてもちゃんと状況が浮かんできたし、演奏しているみんなもきっとそうだったと思うんです。でも、そのときに思い浮かべている画は全員違うと思うんですよね。そのズレがまたいいなって。MVにしたときに怖いのって、ひとつの画に固定されちゃうんですよ。それぞれの解釈の数だけ違った画があると思うから、1回覗いてみたいです。その人の頭の中で浮かべている"渡り鳥の影が一瞬で 走り去ってった床"は、どんな質感の床なんだろうなとか。

-たしかに色だけじゃなくて質感も違うでしょうね。自分の中では白だと思ってました。

僕、茶色なんですよ(笑)。木っぽい感じ。やっぱり人によって違うんですよね。そういうところは音楽をやっていて面白いなと思います。

-「long slow distance」は、先ほどお話にもあった、若い子にメッセージを届けたいという気持ちが強く出ている印象がありました。

これはもう若いというよりは、幼い頃の自分に投げ掛けている曲です。それが結果、誰かの励ましになればいいなって。実際に歌詞を書いているときにいろいろ思い出したんです。僕はソフトボールのスポーツ少年団に入っていたんですけど、"腰で打て"って監督に言われて、全然意味がわからなくて(笑)。"いや、腕じゃん"ってみんなで言っていたんだけど。でも、大人になってみるとわかるんですよね。なるほどな、軸があって、そこから飛ばすってことなのか。ちゃんと地に足をつけて振れって意味だったんだなとか。

-まさに今だからこそわかることですね。

そうですね。ボイトレとかも"後頭部から声を出せ"って言われるんだけど、いや、出ないんだけどな......とか(笑)。

-やっぱり最初はそういう感じなんですね(笑)。

僕、秋山(竜次/ロバート)さんの"クリエイターズ・ファイル"が好きで。結構的確なんですよね。"歌おうとするな"とか。ダンスを教えるときも"踊ろうとするな"って。その場合は本当に踊らないんだけど。でも、合ってるんですよ。ちょっとだけ真実っていうか。"声を出そうとするな、出るから"とか、たしかにそうだなぁって。

-実は真理をついているから面白いんでしょうね(笑)。そして、1曲目の「風の斬り方」は、過去のことではなく、まさに今のことを歌っていて。

そうですね。1曲目はぶっとい音にしたいなと思ったし、ラップも入れたくて。ラッパーとかヒップホップの人って特に自分のこと、現在のことを歌うし、そういう音楽だと思うんですよね。だからラップをするときは、自分が今思っていること、こうなっていきたいっていうものを書こうと思っていて、自然とこの形になりました。

-楽器隊のグルーヴ感とアンサンブルのパンチ力がとにかくすごいですよね。

僕も気持ち良かったですね、楽器陣がとにかくうまくて。最初はもっとおとなしい感じだったんです。でも、ミックスも相当こだわって、ベースとかもゴリゴリにしました。実際にリハでやってみたら、みんなで騒げる音楽だから、コロナ禍じゃなかったらなぁって思いました。そこは今の時代仕方のないところもあるんですが......。でも、コロナ禍であろうとなかろうと、こういう曲は自分のやりたい音楽の中のひとつなので。Aqua Timezの頃からこういう音楽はやってきたけど、またこういう曲が作れて良かったなと思います。

-あと"音楽は魔法だ"と言われることもありますけど、ゲームに出てくる魔法の名前を歌詞に入れてしまうのも面白いなと思いました。

"ドラゴンクエスト"を1番、"ファイナルファンタジー"を2番で分けて入れています。ラップってそういう遊び心を取り入れやすいんです。だから、どちらのファンにも届くように......というか、ひとつに絞れませんでした(笑)。

-(笑)ゲームのことが出てきたのは、それこそ昔やっていたことを思い出したからだったりするんですか?

いや、"ドラクエ(ドラゴンクエスト)""FF(ファイナルファンタジー)"も制作中にやっていたんです。だから、完全にそのときの日常ですね。感慨深いなと思ったんですけど、昔"「ドラクエIII(ドラゴンクエストIII そして伝説へ...)」欲しいな"って言っていたら、発売日におばあちゃんが並んで買ってきてくれたんですよ。俺が小学校に行っている間に。それが今はスマホでできちゃうから、ばあちゃん見たらびっくりするだろうなと。あのとき買ってきてくれたゲームが俺の手のひらの中にあるんだよ! しかもわざわざ買いに行ってないんだよ! って(笑)。

-はははは(笑)。間違いなく驚かれますよね。現在と過去が入り交じった作品を作ったことで、未来が見えてきたりもしました?

いやぁ、やっぱり未来だけは本当に予測できないですね。今ってスピード感がすごいじゃないですか。音楽も代謝が活発で、いろんな曲も新しい子たちもどんどん出てくるし。だから、1年後のことはまったく予想できないというか。そこはコロナ禍というのもあるけど。ただ、自分はずっと音楽を続けていくという意志は強く持ってます。やっぱり音楽が好きで、楽曲ができたときの達成感は、自分にとっては最高のものなので。きっとこれをずっとやっていくんだろうなっていう気持ちはありますね。

-あと、今回のミニ・アルバムに封入されているエッセイに関してですが、書いてみようと思ったきっかけというと?

やっぱりCDを手に取ってくれた方に何か特典があるといいかなというなかで、自分のことをちゃんと書いてみようかなと思って。昔は、自分が抱えてきたものを武器にはしたくなかったんですよ。だけど、今なら別にもう、CDを買ってくれるファンの子だけに打ち明けることだし、自分の抱えていたものをすべて出してスッキリしたいなという気持ちもあったので、結構赤裸々に書きました。

-かなり赤裸々ですよね。読んだ人が驚いてしまう内容もありそうな。

そうなんですよね。自分がそういうものを背負いながら舞台に立っていたことを思い浮かべて、悲しんでしまう子もいるのかなって心配は、ちょっとあるんですよ。でも、あのときの俺にはそれが必要だったんですよね。それがなかったら、俺は何もできなかったから。それでもこうやって生きているし、俺のことを見たら頑張れるでしょ? っていう気持ちのほうが強かったので、それじゃあもう書いてしまおうって。

-このエッセイがそれこそひとつのメッセージになっているところはありますしね。

"自分のいいところを探そう"って言う人もいるけど、"自分の欠点や悩みに目を向けるといい"っていうコーチングもあるみたいなんですよ。コンプレックスでも、人知れず持っている病でもなんでもいいんですが、こんな自分だったとしても、今まで生きてきたってことはすごいことなんじゃない? って。そういう自分の褒め方があるっていうのを本で読んで、まさにそうだなと思ったんです。俺もそれを言いわけに使うためではなくて、こんなことがあったのにここまで生きてきて、まだ音楽をやっていると思うことで自己肯定感が上がったというか。だから、もし今悩んでいる人がいたら、その悩みがあっても生きていることのすごさを俺はやっぱり伝えていきたいし、そういう気持ちにみんななってくれたらいいなって思ってます。

-そして、先ほどリハのお話も出てきましたが、ライヴについてはどういう心持ちで臨んでいますか?

やることは変わらないんだけど、絶対にコロナ禍以前のようなライヴにはまだならないと思っていて。やっぱりライヴってお客さんと一緒に作るものだし、そうやってきましたからね。俺が歌詞を飛ばしたらファンの子が歌ってくれてたし(笑)。そういうのもできないですから。

-少しずつ緩和はされてきていますけど、今はまだ難しいですね。

バンドの頃にメンバーともよく話していたんだけど、やっぱりライヴっていろんな珍事件がたくさんあって(笑)。"熊本で太志がベルト切れて、ズボンが落ちちゃって、1回はけたよね"とか。今までずっと大丈夫だったのに本番でいきなり切れるってすごいな! って思いましたけど(笑)。で、1回中断して、"もう1回やらして!"って言ったら、すごい喜んでくれたとか。そういうことが思い出に残っていたりするんですよね。そういったその場でしか起きないことっていうのが、やっぱりライヴなので。

-その場でしか起きないこと、その場でしか見られないものという。

だから、今リハでやっていることがどう転ぶか、そこは自分も楽しみだし、まだ大声は出せないかもしれないけど、くすっと笑うことは許されると思うし、歌はもちろんのことですけど、MCでみんなに話し掛けたいこともたくさんあるので。相当緊張するとは思うんですけどね。ガイドラインに沿ってやることもそうだし、バンド形式でライヴをやるのは2018年の解散ライヴ以来なので。

-コロナ禍以前のライヴではないかもしれないけれど、実際にライヴをやってみることで自分に返ってくるものも多そうですね。

そこはやっぱりあると思いますね。ライヴがあることで、自分の日常のテンションも変わると思うんです。もうちょっとこういうことを頑張ろうって思うことが増えるかもしれないし、それができるように特化して頑張ってみようとか。もっと曲数を増やしたいと思うかもしれないし、少なくてももっと濃厚な曲を作りたいと思うかもしれないし。そうやって日常が変わっていきそうで楽しみです。