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INTERVIEW

Japanese

あたらよ

2021年10月号掲載

あたらよ

Member:ひとみ(Vo/Gt) まーしー(Gt) たけお(Ba) たなぱい(Dr)

Interviewer:秦 理絵

言葉では言えないことが歌だったら言える――歌を通じて自分の気持ちを整理するところはあると思います


-今作はギター、ベース、ドラムのバンド・サウンドを大事にしたいわゆるギター・ロックな曲が中心ですけど、「夏霞」はピアノのアレンジが印象的でした。

ひとみ:「夏霞」は、最初はギターの弾き語りから作ったんですけど、途中でピアノのイントロが合う曲だなと思ったんです。私は4歳からピアノをやってたっていうのもあって。ピアノとアコギと歌のデモを作って、メンバーに聴かせたんです。

まーしー:最初に聴いたとき、単純にピアノ上手いなって思いました。

ひとみ:ピアノ・ヴォーカルもやってたからね。

-どこか和っぽい雰囲気もありますけど、そこは意識したんですか?

ひとみ:意識はしてないんですよ。MVを作ってくれたサカグチ(ヤマト)さんも、特に打ち合わせのときに、こういうスタジオを使ってくださいみたいな話はしてなかったのに、和室のスタジオで撮ってくれて。それはサカグチさんも感じとってくれたみたいですね。

たけお:ピアノが入るだけで、今までとはガラッと変わった新鮮な感じになりました。

-"今までとガラッと変わる"と言えば、「祥月」もロックで疾走感のあるアプローチで、あたらよとしては新しいんじゃないかなと。

ひとみ:「祥月」と「晴るる」の2曲は、デモをまーしーが作っていて。私が作る曲よりもロック・サウンドになるというか、疾走感のある曲が多いんです。まーしーはドラム、ベース、ギターが入ったカラオケ音源みたいなものを作ってくれるんですよ。

まーしー:携帯のGarageBandで作ってます。

ひとみ:"メロと歌詞を好きに入れていいよ"っていう状態で送ってくれて。素直に頭に浮かんだ言葉とメロディで作ったので、若干テイストが変わってますね。

-ひとみさんから、まーしーさんに"曲を作ってよ"みたいなお願いをしたんですか?

まーしー:いや、作りたくて作りました。ボツだろうなと思って返したら"あ、これなら私できるよ"って言ってもらって。さすがにロックすぎたかなと思ってたけど、ひとみの声が入ったら、あたらよになる。それで俺も作っていいんだと思えたんです。

ひとみ:まーしーの曲って、聴いたらすぐメロディと情景が浮かぶから作りやすいんです。

-あたらよは、「10月無口な君を忘れる」でバラードのイメージが強い人も多いと思うけど、「祥月」みたいな曲があると、バンドとしてのかっこ良さも感じてもらえますよね。

まーしー:ただ、最初は僕らのイメージと違いすぎて、"大丈夫かな"っていう怖さもあって。どんなふうに受け止めてもらえるか、ドキドキしてるところはありますね。

たなぱい:そういう意味で、この間のライヴの感想をSNSでエゴサしてみたら、"「祥月」は今までと違ってかっこ良かった"とか、"こういうのもできるんだ、あたらよ"って書いてくれてる人がいて。それは嬉しかったですね。

-「祥月」は、故人が亡くなった月を指す言葉ですけど、なぜこのタイトルなんですか?

ひとみ:故人を思って書いた曲というか。月を見て、その人を思い出す、みたいなことが歌詞になっているので。

-身近な人が亡くなったんですか?

ひとみ:そうですね。ひいおばあちゃんとか。あと、身近な人ではないけど、自分が好きだったアーティストが亡くなったり、自殺をしてしまったり。そういうなかで、月を見てふとその人を思い出す瞬間があるというか。そういう気持ちを詞にしました。

-大切な人がいなくなるって信じられない悲しみじゃないですか。もう二度と会えないし。それを曲にすることで、ひとみさんの気持ちも整理されるところがあるんですか?

ひとみ:ありますね。すべての曲に言えることがあるんですけど、言葉では言えないことが歌だったら言えるっていうところがあって。普段、私は身近な人ほど自分の想いを言えないタイプなんです。そういう気持ちを、歌を通じて言うことで、自分の気持ちを整理する、みたいなところはあると思います。

-今作は悲しみの曲が大半ですけど、「晴るる」は、その悲しみに終止符を打って次の季節に向かおうとする歌のように感じました。

ひとみ:物事には始まりがあれば、終わりがあると思ってるんです。人はその終わりを悲しみとして捉えることが多いと思うんですけど。別に悲しい終わりだけじゃないなと考えていて。つらいことにもいつかは終わりがくる。だから、「晴るる」は、いろいろな終わりを、聴き手の中で想像しながら聴いてくれたらいいなっていう想いで書きました。

-そこに寄り添うバンドのアレンジも晴れやかで素敵ですよね。さっきの話だと、デモはまーしーさんが作ったものということですけど。

まーしー:この曲を作ったときに兄貴に息子さんが生まれたんです。それがめっちゃ嬉しくて。頭の中でイントロのギターのフレーズがパッて出てきたんです。12月だったんですけど、冬の晴れたときって雲がなくてきれいじゃないですか。そこから"晴れ"をとったのと、その子の名前に"晴"っていう文字も入ってて、"あ、これにしよう"と思って。とりあえず、"晴るる"っていうタイトルを付けてひとみに送りました。

ひとみ:"これに合わせて詞を書け"って言わんばかりの圧を感じました(笑)。普通、歌詞を決めてから、タイトルを付けるじゃないですか。でも、曲調と題名からインスピレーションを受けて出てきた歌詞が、うまくマッチしたのは良かったなと思いますね。

-この晴れやかな曲調はEPのひとつのバリエーションにもなってますよね。

まーしー:自分は明るい曲をずっと聴いてきて、歌詞は暗いけど、サウンドは明るいみたいな音楽が好きなんですよね。ポップ・パンクとか。

-ELLEGARDENの影響を受けているそうですね。

まーしー:エルレ(ELLEGARDEN)もそうですし、海外だと、SIMPLE PLANとか。NEW FOUND GLORYとかをずっと聴いてたので。サウンドは明るくなってしまいがちですね、激しく速くなる、みたいな。

ひとみ:本当に私が書けないジャンルをまーしーが書くんです。

まーしー:逆に俺はひとみみたいな曲は書けない。

たなぱい:まーしーが作ってきたデモのイメージは、嬉しいことっていうイメージが強かったと思うんですよ。でも、ひとみがそれにあてがった歌詞は、悲しみが結構あったんですよね、どちらかと言うと。

ひとみ:そういう意味でも、作り手がふたりいることで幅も広がるし。長い目でバンドを見たときに、すごく強みなのかなと思っています。

-そのとおりだと思います。"夜明け前"というEPのタイトルは最後に決めたんですか?

ひとみ:はい。"明けるのが惜しいほどの夜"っていう意味のバンド名を背負った人たちが、明けていく夜、夜明けに立つっていうことでこれからがスタート、始まりっていう意味を込めてこの言葉にしました。これは、みんなで話し合って決めましたね。

-最後に、今後あたらよはどんなバンドになっていきたいですか?

ひとみ:全国ツアーをまわれるようなバンドになりたいですね。

たなぱい:僕たちはSNSで広がったのが大きいから、音源で聴いてくれてる人が多いと思うんですけど、やっぱり生の音を聴いてほしいっていうのがあって。ひとみが感情を叫んだら、それをガッと生の演奏で押すし。そういうのを体現できるバンドになっていきたいですね。どんどんキャパが大きいところでやれるようになっていきたいです。

まーしー:ライヴは一番ダイレクトに感情が伝わると思うんですよね。恋愛もそうですけど、電話越しより、会ったほうがいいっていうのもあるし(笑)。いろいろな人に聴いてもらって、同じ悲しみを持った人を救ったりできたらいいなって思います。

たけお:やっぱりバンドである以上、たくさんあたらよの音楽を届けていきたいですね。

-今のあたらよはライヴへの想いが強そうですね。

たなぱい:コロナでライヴができなかったので、その鬱憤はデカいかもしれない。

まーしー:たしかにね(笑)。あとは、あと音源で言うなら、聴く人にとって生活のメインではないけど、ちゃんと寄り添ってくれるような音楽を作り出せるバンドになりたいです。