Japanese
"ファビュラスナイト"大塚剛央×立花慎之介×堤 健一郎(MASTERHOOD/音楽P)
2021年06月号掲載
音楽×声優によるメディア・ミックス・コンテンツの人気が拡大している。"BanG Dream!(バンドリ!)"や"ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-"を筆頭に、その世界観はアイドルから学園、戦国時代もので広がりを見せると同時に、辣腕の音楽プロデューサーが参加することで、音楽的にもハイクオリティな作品が数多くリリースされるようになった。そんななか、"ホストもの"の新プロジェクトとして始動したのが"ファビュラスナイト"だ。眠らない街"ミセランド"を舞台に、個性豊かなホストたちがNo.1を目指す。音楽的にはダンス・ミュージックが基盤となるが、これまでのキャラソンの概念を打ち破る挑戦的なアプローチが、このコンテンツの大きな特徴だ。Skream!では、そんな"ファビュラスナイト"の音楽プロデューサーを務める堤 健一郎氏を迎えて、ギルガメッシュ役の声優 大塚剛央、同じく千極兆司役の立花慎之介と共に、今作の"挑戦"について語ってもらった。
大塚 剛央(ギルガメッシュ)
立花 慎之介(千極 兆司)
音楽プロデューサー:堤 健一郎(MASTERHOOD)
インタビュアー:秦 理絵
キャラクターのプロフィールに月収が書いてあるんですよ。それがイカれた金額なんです。とんでもねぇ企画だなと思いました(笑)
-"ファビュラスナイト"は、いわゆる"ホストもの"と言われるコンテンツですけど、最初にこの作品と出会ったときは、どんな印象を抱きましたか?
堤:初期の打ち合わせを重ねたところで、この作品におけるホストは、世間一般のストレオタイプな意味でのホストとは違うんだなっていうのは強く感じました。舞台となる"ミセランド"の世界において、ホストというのは極上の、ファビュラスな男たちであり、特別な存在なんだと。
大塚:僕もそうですね。この世界のホストは、今僕たちが生きている世界のホストのイメージとは少し違いました。言い方が合っているのかわからないですけど、ホストがすごく市民権を得ているというか。
-みんなに憧れられるような存在なんですよね。
大塚:そうですね。そういう存在の人たちが本気でトップを目指していく。そこに生きる男たちの物語が色濃く描かれている作品ですね。
立花:"ホストもの"のこういう作品って、今までもあったとは思うんですけど、ひとつのホストクラブの中だけの話とか、ホスト=イケメン集団みたいなざっくりした感じだったんですね。でもこの作品って、僕が貰った資料を読んだら、キャラクターのプロフィールに月収が書いてあるんですよ。
堤:あははは!
立花:しかも、それがイカれた金額なんです(笑)。
-例えば、立花さん演じる兆司であれば、月収1億円とか。
立花:そう。とんでもねぇ企画だなと思いました(笑)。
スタッフ:ありがとうございます。
一同:あはははは!
立花:最初に資料を読んだ段階で、尖り切った作品なんだろうなっていうのはわかったし、この作品のスタッフ陣とは他の作品でご一緒させていただいたこともあって。みんな尖った人たちなんです(笑)。そういう意味でも、いろいろな期待はありましたね。
-最近では、"ファビュラスナイト"のような、人気声優と音楽を絡めたメディア・ミックス・コンテンツの人気が高まってますけど、そのあたりはどう感じていますか?
堤:音楽から始まるコンテンツというか、キャラクター・ソングがあってスタートする作品は、最近取り沙汰されてますけど、決して最近始まったことではなくて、少なくとも私がこの世界に入った四半世紀前ぐらいから脈々とあるコンテンツだとは思うんです。それが積み重なって、広く受け入れられる環境が整ってきた気はします。"ファビュラスナイト"に関しても、これまでのキャラクター・コンテンツとは異なり、アイドルの文脈ではない展開を考えています。
-アイドルの文脈というと?
堤:"応援しました"、"ありがとう"っていう関係性が今私が言うところの"アイドルの文脈"なのですが。男性向けでも女性向けでも、プレイヤーや視聴者/読者がプロデューサーだったり、マネージャーだったり、シナリオ・ライターになるっていう設定のうえで、アイドルを応援する。ただ、"ファビュラスナイト"は主役がホストなので、応援されても、"ありがとう"と言わない。"ありがとう"ではなく、いったい何を返すのだろうと考えています。それがホストなんじゃないかなっていうことは考えてるんです。
-応援してくれる人に対しても、いい意味で媚びない。
堤:それを音楽に反映していくために、すごく狭い分野の音楽で戦っていこうと思ってます。キャラクターものって、だいたいジャンル論になっていくんです。このキャラにはこのジャンルの音楽が合うんじゃないかとか。でも、"ファビュラスナイト"はジャンルでキャラを説明することなく、極上のダンス・ミュージックを次から次へと出していく予定なんです。
-あえてジャンルを限定させるんですね。
堤:そうです。その音楽も意図的に難解にしようと思ってます。パっと聴いたときに、"これはAメロなの? Bメロなの? まだサビじゃないよね?"みたいな構成をとっていて。難易度が高いと言うと、不躾な言い方かもしれないですけど。入り口としてはちょっと重いドアを設定している感じですね。だから、キャストの方々にも、とても難解なことをお願いしていて。申し訳ございませんっていうのを、この場を借りてお伝えしたいです。
大塚&立花:(笑)
-大塚さん、立花さんは、実際レコーディングでは楽曲の難しさは感じましたか?
大塚:そうですね。僕はまだ全部のレコーディングが終わったわけじゃないのですが、難しさは感じました。まだ歴も浅かったりするので、いろいろなものを総動員しながら、なんとか必死に作り上げてる感じです。
立花:難しい以外の何ものでもないですよ。
大塚:(笑)
立花:言葉で説明するのが難しいんですけど、感覚的にアニメ・ソングとアーティストの歌って聴くと明確に違うんですよ。例えば、コンビニとかで流れたときに、知らない曲でも"あ、これはアニソンだなぁ"ってわかるというか。その原因が曲調なのか、メロなのか、使われてる楽器なのかはわからないですけど。
-ええ、おっしゃってる意味はわかります。
立花:で、僕が仕事としてやっているものはアニソンや、キャラクター・ソングが多いんですけど、まれにアーティストさんの曲を歌わせてもらうこともあって。今回はそれに近いんです。今までの僕らの業界でやっていたリズムとは明らかに違う。でも、それが仕上がると、すごくかっこいいものになるし、アニソンっぽくないところが出るので。難しいけど、そういうものに挑戦できるのは楽しいです。
-堤さんは、"ファビュラスナイト"のプロジェクトにおいて、あえてアニソンっぽくないものを目指したいという想いはあったんですか?
堤:その話で言うと、私はだいたい20年ぐらいこの仕事をやってきたんですけど、アニソンだけど、アニソンっぽくないものを作ろうっていう想いでずっとやってきたんです。ヘヴィ・メタルの延長だったアニソンにその当時はやってなかったもの、例えば、ラップやオルタナティヴなものを取り入れていくとか。そういうことにチャレンジしてきたんですけど。アニソンは音楽ジャンルではなくてカテゴリーだと私は思っていますが、歌詞なのか曲なのかアレンジなのかミックスなのか、"これがアニソンの様式美"というジャンルとしての存在を二十数年前同様に感じています。そういうのも変えていきたいのはありますよね。あんまり押しつけがましくはしたくないんですけど。
-"ファビュラスナイト"という作品において、アニソンっぽくない聴こえ方にするためには、どんなことを意識してるんですか?
堤:普段声優の方に歌ってもらうアニソンに関しては、"声の聴こえ方"を一番大事にしてるんです。特にキャラクター・ソングは声を中心にアレンジとミックスをしてもらう。キャラクターを感じてもらうために声を前面に出すことを常に第一に考えてきたんですけど、"ファビュラスナイト"では、サウンドのひとつとしてお声も扱わせてもらうっていうのはあります。それも"キャラクターを感じてもらう"という意図のひとつの在り方として。
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