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INTERVIEW

Japanese

Rei

 

Rei

Interviewer:石角 友香

-今回はシンガー・ソングライター&ギタリストである以上に、ヴォーカリストとしての側面が強く感じられて。

ありがとうございます。

-人間いろんな感情の側面と同じように声もいろいろありますからね。

そうですね。そういう自分のいろんな声色を、実験しながらレコーディングしていた部分もありますし、これまでで一番テイクを重ねた曲もありました。

-ちなみにどれですか?

「Today!」って曲は1節のために70テイクとかしたんです。

-1節にですか。すごいなぁ。

ちょっと気が狂ってるなと振り返って思います(笑)。口当たりは軽い曲なんですけど、それほどまでに歌にはこだわりたいと思って作ったので。苦しかったですけどね。納得のいく歌が録れた作品だと思います。

-70回のテイクとかどれが良かったのかわからなくなってきませんか?

いやもうわかんないですよ(笑)。"1stテイクが良かったね"っていうのが70テイク目の気づきです。

-でも、やってみないとわからない?

そうです。納得いくまで歌わせてもらったのは環境のおかげだったので、それにつきあってくれたスタッフのみなさんにすごく感謝しました。

-突き詰めないと気が済まないと。

重複になりますけど、突き詰めさせてくれる環境には感謝だなと思いました。もちろんレーベルの方もそうですけど、一緒にレコーディングしてくださった方とか、やっぱりその環境がないとこだわりっていうのは突き通せない部分があるので、それは本当にありがたかったです。こだわりっていうことで言いますと今回、"Limited Edition"には映像作品がついています。その映像作品は私が半分ライフワークとして作っているものなんですけど、[MUSIC FILM #4 "Days of Honey"]ってふうに名付けていて、去年の夏から今年の秋までのドキュメンタリー作品になっているんです。それがほんとにこだわりを突き通した作品で。スペインでのライヴ映像だったり、ミュージック・ビデオを作ってる過程だったり、そういうものをドキュメントしながら、すごく赤裸々に語ったインタビュー映像とか、さらにその映像のために書き下ろしたインスト曲とか、たくさん収録されているんですよ。ただのMVの寄せ集めじゃないDVDなので、そういうこだわりもぜひ感じてほしいです。

-たしかに今、CDを買うモチベーションとしてその特別な要素はひとつありますよね。Reiさんがどういう表情で何を話してるか観てわかることもあると思うし。

そうですね。遠隔でできることがこんなにもあったんだって気づきがあった一方で、人と合わないと、そしてCDとか、ものを手に取らないとわからない価値があるんだという気づきもあったと思います。なので、今回はフィジカルである意味をものすごく考えて、歌詞カードとかもデザインを切り絵で作りました。ただピクセルで歌詞がずらずらっと並んでるだけじゃなくて、文字にもちゃんと色をつけたり背景にはデザインを入れたり、サブスクリプションで聴いてくださる方にも楽しんでいただきたいですけど、CDを買った人だけが楽しめる要素も盛り込んだので。本当にフィジカルでも買ってほしいです。

-ほんとにものづくりだったんですね。

ほんとに! ものづくりでした。

-いろいろ作る、棚も作る(笑)。

棚も作る、CDも作る、絵も描く。ペーパー・クラフトも作る(笑)。

-自分が作って形として残るのはひとつの証明みたいな気持ちになりますね。

そうです。"証明"っていうキーワードはとても意識してました。なので、みなさんも何になるかわからなくても、形に残すっていうことをしてみてはいかがですか?

-という提案ですね。プロからの提案ですが(笑)、やってみたいです。

振り返るときっといい思い出になると思うんですよ、この作品も。思い出は宝物になるんだなって思いましたし、今こういう苦しい状況も記録に残しておけば、それを乗り越えたときの幸せな日々っていうのが、より際立って輝くと思うので。

-また収録曲のお話に戻るんですが、さらっと作ったようで鮮烈さがあったのが「matatakuma」で。歌詞の"またたくまに"と"またたたくま"ってところが(笑)、3連符フロウみたいで楽しいですね。

一緒にシンガロングしてもらいたいなと思って。

-リズム隊のおふたりが卓越してらっしゃるので、そのあたりのビートもさらっと消化していて。

そうですね。この曲はいろんなアレンジを経て、最終的にシンプルなバンド編成になった曲です。メトロノームを聴きながら整頓されたテンポで録音することもできたんですけど、私たちの人間らしさや、揺らぎが封入されたらいいなと思って、メトロノームを聴かずにみんなでせーので録ったので、そういう人肌感が感じられる曲になってると思います。

-この歌詞のような実感を持ったと思うんですよね。時間の経過が早くて夏がなかったような気持ちというか。

はい。時間の捉え方っていうのも、みなさん価値観が変わったんじゃないでしょうか。

-そして、アルバム全体を束ねる言葉がタイトルでもある"HONEY"なのかなと思いました。ラヴリーな恋愛における言葉にも受け取れますけど、全体を聴いたうえだとちょっと違う感覚を覚えます。

ありがとうございます。恋とか、そういうものに限らず、愛について深く考えた作品だと思います。それは自己愛でもあるし、大切な人への愛情だとも考えています。密に生きたいってことですよね。水で薄めたような感じじゃなくて、濃度の濃い日々を送りたいってことでもありますし、自分の愛する人やものに対して、ちゃんと親密に向き合っていきたいという気持ちでもあります。

-セルフ・ラヴって最近よく言われることですけど、大事なことですね。

私にとって自己愛というのはすごく難しいテーマで、鏡の中の自分を見て、"またお前か!"みたいな気持ちになるわけですよね(笑)。

-誰でも自分のことはそう思いますよね(笑)。

なんですけど、だったら愛してもいいかなと思えるような自分に変わっていかなければいけないし、逆にそういう自分の弱さとかを許さなきゃいけない部分もあるし、両面あると思います。

-全体を通してすごくアルバムらしいアルバムで。しかも、2020年の春から夏にどんな気持ちだったのかなというのも、まだコロナ自体は渦中ですけど、思い出せそうです。

お守りになればいいなって。聴いてるだけで少し安心できるようなお守りになったらいいなと思いながら歌っていました。

-Reiさんご自身にとっても心にひとつ持っておけるものなのでは?

うん、そうですね。そうなりました。新しい表現の扉を開いた感じもあったし、その表現の扉を開いたことによって、新しいリスナーに出会えたらいいなっていうふうに思います。