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LIVE REPORT

Japanese

Rei

Skream! マガジン 2022年06月号掲載

2022.05.21 @EX THEATER ROPPONGI

Writer 石角 友香 Photo by 垂水佳菜

東京で活動してきた10年の自分の音楽を見て、聴いてくれていた人たちとのコラボレーション――細野晴臣や渡辺香津美らベテランから、CHAIやRyohuら友達と呼べる仲間まで、多彩な楽曲をクリエイトした新作『QUILT』。その音楽性の振り幅から、リリース・ツアーはどう表現するのか? がフォーカス・ポイントだったのだが、ものの見事に"バンド、Rei"として昇華したステージを見せてくれた。今回はツアー・ファイナルの模様をレポートする。

椅子席だが、EX THEATER ROPPONGIのフロアには若いオーディエンスも増えた印象で、ステージ上に横1列に並んだ楽器とセンターのお立ち台に、今日のステージを想像して静かな期待が高まる。澤村一平(Dr/SANABAGUN.)、中西道彦(Ba/Yasei Collective)、TAIHEI(Key/Suchmos/賽(SAI))が現れ、スピーディなスワンプといったノリのセッションが始まると、Reiが最後に登場。ライヴ・スタートの口上とメンバー紹介も兼ねたライヴ・アレンジの「QUILT」で始まった。バンド・メンバーのレペゼン感がすごい。そのままフューチャリスティックなファンク・アレンジに変身した「CRAZY! CRAZY!」、澤村のデッドなスネアや中西のパーカッシヴなベースが音源の多彩なギター・アンサンブルを解体/再構築したスリリングな「BPM」と、序盤から"カッコいい......"という呟きしか出てこない。ツボに入るセンスあふれるオブリガートを弾きながらヘッドセットで自由に動きながら歌うReiを見ていると、ジャンルこそ違えど現在の女性シンガー・ソングライター/ギタリストでは彼女かST. VINCENTか? というぐらいキャラが際立っている。

「COLORS」ではTAIHEIがプロフェットだろうか? YMO(YELLOW MAGIC ORCHESTRA)オマージュを感じさせるフレーズ、「COCOA」では中西のシンベ(シンセ・ベース)が重低音で攻め、まるでDISCLOSUREのようなダンス・アクトを想起させる。ファンクもエレクトロニックなダンス・チューンも、Reiのブルージーなギターとそれに拮抗する3人のプレイで、特定のジャンルにハマらない自由度とアグレッシヴさで攻める。とてつもない熱量が4人の間で炸裂しているのだ。

今回の『QUILT』のコンセプトをライヴで具現化する際、頭にすぐ浮かんだのが今回のメンバーだと言い、京都と岡山のライヴに参加したCHAIのユナ(Dr/Cho)に話が及び、たまたま岡山でCHAIと遭遇した際には、"ピンクの砂糖菓子が移動しているような存在感"にメンバー全員が圧倒され、且つ愉快な気分になったと、のちのMCで話し、妙に納得。実にバンドのツアー、ミュージシャンの生活らしいMCに、水を得た魚のような様子が窺えた。

アコギに持ち替えての演奏は豊穣なギターのイントロを加えた「Smile!」、グラス・ミュージックをルーツに感じる「Stay Awake」と、オーガニックで温かな曲調が続く。「Stay Awake」ではソロ回しもあり、TAIHEIがTHE BEATLESの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」のワンフレーズを弾いたり、澤村がSonny Rollinsの「St. Thomas」のドラムだけを聴かせたりしつつ、自分でも"ベースとキーボードがないとわからないよね"と、メンバーのツッコミに返していたが、"なるほど~"とばかりに起こる拍手にファン層の厚さを感じた。

先程のCHAIのユニークネスや存在感の話から、CHAIとガッツリ、コラボした「CHOTTO CHOTTO」を男たち(笑)でカバー。にぎやかなガヤはさすがにSEだったが、全員がキュートで愛に溢れた音を出していたのも見ものだった。また、細野晴臣とのコラボ曲「ぎゅ」はリラックスしたスワンプ・ロック調。"ぎゅ"の歌詞に合わせて小さく跳びながら演奏するReiの楽しそうなこと。ボーダレスに合奏の楽しさが広がっていく。そしてインスト・バンドのセッション・プレイ的なイントロダクションから、前アルバム『HONEY』の中でもとびきりパーソナルな「Categorizing Me」を披露。TAIHEIのシンセに80年代っぽさがあったり、アップデートされたアレンジだったのだが、なんといってもアウトロで渾身のギター・ソロを弾き、途中からお立ち台にのぼり身体を折り曲げて、まるで魂を放出するように奏でられた音色にもはや涙を止められなかった。"誰のために息をしているの Baby"という自問に対する答えは音楽に昇華されていたのだ。こんなにその人そのもののソロがあるのだろうか。間違いなくこの日のハイライトだったと思う。

会場全体が打ち震えるムードを一転させるようにホワイトファルコンのロッキンなサウンドの「Lonely Dance Club」、シュアなカッティングが冴える、どこかジプシー音楽っぽい「ORIGINALS」を続け、張り詰める緊張感にバンドの熱がどんどん上昇してくのがわかるなか、Original Loveのトリビュート・アルバムに参加した際にカバーした「JUMPIN' JACK JIVE」を投下。モダンなジャンプ・ブルースを体現するのにぴったりな4人が熱量のこもったプレイでバトルする。声は出せないものの心の中で"エーオ!"のコール&レスポンスを口パクで楽しんだ人も多いことだろう。ネオ・ソウルやジャズを経由してきたプレイヤーが放つロックンロールといった感じで、新しいグルーヴがこの場で生まれる醍醐味に終始圧倒された。

終盤はおなじみのナンバーをこのバンドでアップデートした怒濤のグルーヴが渦巻く。中西のスラップにReiのカッティング、すべてがパーカッシヴですごい厚みの「BLACK BANANA」。ソロまわしで中西が背面弾きをするも、Reiが"そういう飛び道具じゃなくてさ!"と促され、卓越したフレーズを弾く場面も。もうバッチバチである。ギターが身体と一体化した印象は「What Do You Want?」でさらに高まり、人力ダンス・ミュージックを得意とするリズム隊はアグレッシヴなビートを叩き出す。Reiのロッキンなギターも、ダンス・ミュージックのうねりを増す一要素として駆動するイメージで、4人の抜き差しとせめぎ合いが、体感したことのないダンス・ミュージックをその場で発生させた「LAZY LOSER」でフィニッシュ。あっという間の本編90分が終了した。

アンコールでは9月に開催するゲストを迎えての"Reiny Friday(Reiny Friday -Rei & Friends- Vol. 14 "with QUILT friends")"を彼女のキャリア最大キャパであるLINE CUBE SHIBUYAで開催することを発表。そして"共生"をテーマに作った『QUILT』を通して、より生きることの深さを実感したと話す。大きな会場でのライヴはチャレンジだが、挑戦する姿勢や生き様を今は見てほしいという。そして"別れがあるから今が大事という曲をやります"と、アコギの弾き語りで「Don't Mind Baby」を披露。そしてメンバーを呼び込んで、ツアーの感想を聞いたのだが、"いいバンドになった"というTAIHEIのひと言に尽きるのだろうと思った。ラストは"QUILT -reprise-"と称したリアレンジ・バージョンで、音源でのRyohuのラップ部分も痛快にキックし、しかも"ハマ(ハマ・オカモト/OKAMOTO'S/Ba)"を"ミッチー(中西)"にアレンジ。コロコロ、ジャンル感の変わるこの曲に『QUILT』の世界観とツアーの充実が凝縮されていた。どんどん存在感を増すReiのヒューマン・パワーに、ぜひ多くの人に触れてほしいと心から願う。

Rei
TOUR INFORMATION

Rei Release Tour 2022 "QUILT" set list
2022年4月22日より全国8箇所にて開催したRei Release Tour 2022 "QUILT"のセットリストを公開!
Spotify Apple

LIVE INFORMATION

Reiny Friday -Rei & Friends- Vol. 14 "with QUILT friends"
2022年9 月23 日(金) 東京 LINE CUBE SHIBUYA
開場/17:00/18:00
チケット料金:6,000円(税込/全席指定)
主催:J-WAVE
お問い合わせ(HOT STUFF PROMOTION ):03-5720-9999(平日12:00〜15:00)

RELEASE INFORMATION

Rei『QUILT』 in store
Reiny/ユニバーサル ミュージック

QUILT_Limited_Edition.jpg
【Limited Edition】(SHM-CD+DVD)
UCCJ-9238/¥3,960(税込)

QUILT_Standard_Edition.jpg
【Standard Edition】(SHM-CD)
UCCJ-2205/¥3,080(税込)
配信はこちら

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