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INTERVIEW

Japanese

ヤなことそっとミュート

2020年11月号掲載

ヤなことそっとミュート

Member:なでしこ 間宮まに 南一花

Interviewer:宮﨑 大樹

-今回のメジャー2ndシングル『フィラメント』は、コロナ禍の期間に制作されたんですか?

まに:曲の制作は自粛期間みたいです。レコーディングはわりと最近で8月とか。

-曲について聞く前に、あえてヴィジュアル面から話を聞いていきたいんです。というのも、今回のジャケットが温かくてエモーショナルで、とてもいいんですよね。衣装も新衣装になって、耳元の白い花でミュートしているような感じになっています。

まに:今までのアー写でも耳を塞いでいるポーズはあったんですけど、今回は全員の耳をわかりやすくミュートするようになっていて気に入ってます。ジャケ写はオフショット的な動画がYouTubeで上がっているんですけど、なかなかすごいことに......(笑)。

なでしこ:水上アクティヴィティで使うような大きいビニールのボール(バブルボール)の中に入って、どんどん酸素が薄くなっていくみたいな(笑)。

まに:曇ってくるので中から拭いてました(笑)。

-バブルボールを装飾して、人が入るほどの巨大な電球に見立てているんですよね。

なでしこ:電球の部品も手作りで作ってくださっていて、ここまで大きな道具を使ったジャケ写の撮影は初めてだったので単純にすごいなと思いました。実際は過酷な撮影でしたけど、温かみのある曲調に合った、見ただけで心がホッとするような素敵なジャケットになりましたね。

-表題曲の「フィラメント」は、ジャケ写から受ける印象通りの、温かみのあるロック・バラードに仕上がっています。

なでしこ:初めて歌詞を読んだときに、コロナが起こる前と、起こってからの状況を振り返ってるみたいな感じがして。"振り返れば 思ったよりも遠い昨日"とか、そういうのを想像しながらレコーディングに挑みました。サビでは"きっとあなたと結んだから"とか、この状況のなかで応援してくださっているみなさんとの繋がりを感じるなって思った歌詞でしたね。レコーディングしているときも、応援してくださっているみなさんのことを想像しながら、温かい気持ちを持って、包み込むような母性というか、そういう気持ちを意識しながら歌いました。

一花:なでしこさんも言っていたように、コロナ時期でっていうのもあって"なるほどな"と思いました、私はワードとか比喩が好きで。"五線譜に鳥たちの影法師"っていう歌詞があるんですけど、そこの歌詞がめちゃくちゃ好きなんです。レコーディングでは1曲全部歌って、そのあとに歌割りが決まってサビ頭の担当になったんですけど、もう1回録り直したんですよ。最初に歌ったときは"強い!"って感じだったので、私も包み込む母性みたいな感じで録り直しました。

まに:私も最初に印象的だったのはやっぱり歌詞で。ふたりが言ったように、今のご時世のことを歌っているかのような歌詞だなと思ったのが大きかったですね。歌とかレコーディングに関しては、私は母性というよりも子供寄りというか、そういう純粋な感じの表現を意識しながら歌っていたかもしれないです。

-もちろん歌詞の解釈は人それぞれだとは思うんですけど、みなさんの中では共通認識がありそうですね。ヤナミューって轟音の中で歌う曲のイメージが強いと思うんですけど、「フィラメント」は歌をサウンドで支えて、歌詞を届ける意識が強い気もしました。

まに:落ちサビは私のパートなんですけど、ほとんど後ろの音がないというか、静かな感じですし、歌の割合が多めな曲なのかもしれないなと思います。とは言いつつ後ろの音は歪んでいて。

なでしこ:私も歌を聴かせる曲だなっていう印象はあるんですけど、まにさんが言ったように楽器の音をよく聴いてみるとえぐめのゴリっとした音が鳴っていて。根本的なヤナミューらしさみたいなものは、なくなっていない印象ですね。それと、ライヴの終盤とかで歌われていくような曲だなっていうイメージはありますし、ただの妄想なんですけど、夕方の野外で歌ったらすごく素敵な曲だなと思います。いつかやりたいなって。

-カップリングの「Passenger」は、後半になるにつれて音数が増えて、だんだんと力強くなっていくドラマチックな曲です。インストでもかなり聴き応えがありました。

まに:好きです。最初に仮歌をいただいて聴いたときに"あっ、こう来たか!"みたいにまず思って。メジャー・デビュー以降では初めてのJ. ogさんの曲なんですけど、J. ogさんの曲って、毎回"こう来たか!"っていう驚きがあるんですよ。「Passenger」でも本当にそれを感じました。ヤナミューらしい轟音のバンド・サウンドっていう共通点もありつつ、また新たなヤナミューの一面が加わったというか、今までにない感じの曲。こんなに歌詞が詰まっている曲もなかったですし。

なでしこ:私もすごく好きな曲で、J. og節というか、J. ogさんのゴリゴリで変態的なギター・サウンドが鳴っていて最高だなと。歌詞は、"行けよ 走れよ"とか、"窓を開けよう/今日を越えろ/不安定だけど/次へ繋ごう"とか、めちゃくちゃ男らしい歌詞だなと思って。周りからも言われるんですけど、自分って男勝りっぽい性格なんです。強い女になりたいんですよ。だから自分と重なる部分があるなと思って、レコーディングがすごく楽しかったんです。空想上の敵みたいな、見えない何かと闘うような気持ちで、レコーディングでも拳を突き上げながら歌ったところとかあって(笑)。いい意味で、あんまり考えずに歌ったというか、ありのままの自分の感じ、自然体で歌えました。できあがった音源を聴いたら自分的にも満足のいくようなできあがりだったので、これは早く聴いてもらいたいなと。すごくカッコいい曲です。

一花:私は聴いたときに今っぽい曲だなと思いました。J. og節が出ていて、すごくいい曲です。"思い出と記憶と感情と 何が僕を作るんだろう"っていう歌詞が、自粛期間中に自分を見つめ直した私にとってはすごく突き刺さる歌詞で。「Passenger」もワードのチョイスが本当に好きなんです。まにさんも言ってましたけど、歌詞が詰まっているじゃないですか? 日本語の発声が苦手なので、レコーディングのときにめちゃくちゃ噛みまくったりして苦戦した記憶はあるんですけど、私もめちゃくちゃ好きな曲です。

-「フィラメント」とはまた違う方向で、今の時代に重なる感じはしました。メロディや歌声もサウンドに合わせて力強くなっていく感じがして、コーラスやハモリも心地いいです。

まに:私はサビの下ハモを歌っているんですけど、ハモリも"このサビでこういう下ハモが来るんだ!"という意外性がいいなって思いながら歌っていました。

なでしこ:ラスサビの"行き先は未定だから さあ"っていうところのハモリがえぐくて。意味わからないメロディで、初めて聴いたときにビックリしました。レコーディングのときもJ. ogさん本人が"誰だこのメロディ考えたやつ"とか言うくらい、すごく変態的なメロディで大変だったんですけど(笑)、そこは注目して聴いてほしいですね。

-では、改めて本作の完成を迎えての気持ちを聞かせていただけますか?

まに:コロナ以降ガラッと社会全体が変わって、音楽に関わる人にとっても厳しい環境が続いていたなかで、ヤナミューが出すメジャー2ndシングルということになります。温かみのあるどこか懐かしい空気感を持ったジャケットですし、「フィラメント」は歌詞も曲調も温かい。コロナで全員疲弊しているじゃないですか? そんななかで「フィラメント」という曲を出すことに意味があると感じています。「フィラメント」は包み込むような温かい曲だと思うんですけど、「Passenger」はむしろ鬱憤を晴らすような、空気を吹き飛ばすみたいな、そういうパワーと爽快さみたいなものがある曲という側面もあって。ヤナミューなりのコロナ情勢に対するひとつの答えというか、そういうものになったのではないかなと個人的には思いますね。

なでしこ:私も、今だからこそ響くものが多い2曲なんじゃないかなと感じていて。「フィラメント」の包み込むような優しさと、「Passenger」の全部吹き飛ばして突き進んでいく強さ、今の状況を受けた人たちに必要な要素が詰まったシングルです。この時代に対するヤナミューなりのアンサー・ソングだなと。ヤナミューが出してきた曲の中で、今の時代とか世の中に対してハッキリと提示していくものは初めてだと思うんです。ヤナミューを知らなかった方の耳にもこの2曲が入ることがあるとするならば、どう感じるのかみたいなのはすごく気になりますね。

一花:『Afterglow / beyond the blue.』のリリースから半年以上経ちますけど、新しい音源を出すことができて、このインタビューもそうですし、ヤナミューからいろいろな発信をできるっていうのが嬉しいです。MVも近々公開されると思うので、ありきたりな言葉にはなってしまうんですけど、多くの人に聴いていただきたいですね。

-メジャー1stシングル、2ndシングルと続くと、アルバムに期待する声も増えそうですね。私自身も楽しみにしていますし。

一同:ふふふ(笑)。ありがとうございます!