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INTERVIEW

Japanese

工藤晴香

2020年11月号掲載

工藤晴香

インタビュアー:三木 あゆみ

声優を中心に様々な分野でマルチに活動してきた"くどはる"こと工藤晴香。近年では、次世代ガールズ・バンド・プロジェクト"バンドリ!"の氷川紗夜役で、Roseliaのギター担当としても活躍し、音楽シーンでもその名を広げている。2020年3月にはソロ・アーティストとしてデビュー。そしてこのたび、2ndミニ・アルバム『POWER CHORD』が完成した。毎日が目まぐるしく動くこんな時代に、彼女自身が感じたことや伝えたいことが詰め込まれた今作は、ポジティヴで力強い思いが表れた作品に。初めてのラップ、作曲にも挑戦した意欲作に彼女が込めた想いとは。

-9月26日に初のネットサイン会を開催されていましたよね。4時間30分以上、オンライン配信をされててびっくりしました。やってみていかがでしたか?

対面でのサイン会は写真集を出したときに経験してたんですけど、オンラインでやるのは初めてだったので、イマドキだなって思いました(笑)。あとはお名前を書くときに、SNSでよく見かける方の名前以外にも、今まで見たことがなかった方のお名前や海外の方のお名前とかもあったので、すごく新鮮でしたね。

-途中のカバンの中身チェックとかも、のほほんとした雰囲気で、見てて楽しかったです。でも、すごい枚数でしたし、大変ではなかったですか?

初めてあんなに枚数書いたので、途中で腕が痺れるんじゃないかなとか思っていたんですけど、元気になんの問題もなくやれたので、全然大丈夫でした。

-貰うファンの方はすごく嬉しいだろうなと思います。そして、工藤さんは10月2日放送の"バズリズム02"に出演するそうですね(※取材は9月下旬)。ソロとしては初のテレビ歌唱だったとのことで、収録はいかがでしたか?

もう、今年イチ緊張しました(笑)。ありがたいことにバンドのほうでは、地上波のテレビにいくつか出させていただいて、楽器の演奏とかもしたことはあったんですけど、ひとりぼっちで、なおかつ歌も歌わなきゃいけないっていうのは、初めてだったんですよ。しかも、ソロでのライヴがまだできてなくて、本当の"初披露"だったので、めちゃめちゃ緊張しました。やったことないことに挑戦するのって、やっぱり緊張するんだなと改めて思いましたね。

-今お話にも少しありましたが、工藤さんは次世代ガールズ・バンド・プロジェクト"バンドリ!"の氷川紗夜役で、Roseliaのギターとしても活躍されていて。声優としてだけでなく様々な分野でマルチに活動されていますが、ソロ・アーティストとしての活動がスタートしたのはどのような経緯だったのか、改めて教えていただけますか?

もともと声優を中心に活動をしていたんですけど、"バンドリ!"さんをきっかけに、音楽に触れる機会が多くなっていって。そんななかで、以前からファンクラブのイベントで、カラオケでアニソンとか自分の好きな曲を歌うっていうのをやっていたんですけど、それをずっとやっていくうちに、オリジナルの曲を作りたいなと考え始めたんです。ファンクラブのファンのみんなに向けてありがとうの気持ちを込めて、オリジナルの曲を作りたいなぁっていうので制作を始めたんですけど、そこから、ありがたいことにソロでやるヴィジョンが徐々に見え始めてきて。自分でも"挑戦したいな"、"やってみたいかも!"と思ったのが、始まるきっかけでしたね。

-様々な活動をされている工藤さんですが、その中でもソロの活動というのはどういう位置づけにあるものなんでしょうか。

例えば、モデルのときは着てる洋服や持っているカバンとかを読者のみなさんに"欲しいな"、"いいな"と思わせるのがお仕事じゃないですか。そして、声優のときは"役者"っていうのを重視して、基本はキャラクターをメインにおいているんですけど、ソロの場合は"工藤晴香をどう見せるか"っていうのを考えなきゃいけないなと思っています。ほかのお仕事に比べて、自分と向き合う時間がすごく長いんですよ。工藤晴香として曲をどう見せるか、ファンのみなさんが曲を聴いて私のことをどう思ってくれるのかとか、セルフ・プロデュースというか、自分自身のことを考えるっていうのがメインにあるのかなと考えていますね。

-そういうものが作詞とかにも表れていそうですね。このたびリリースされる2ndミニ・アルバム『POWER CHORD』は、この激動の時代に工藤さんが感じたことがこの作品に詰まっているそうで。こういう情勢になってから日々どんなことを考えながら過ごしていましたか?

ステイホームで家の中にいるけど、世の中は毎日のように目まぐるしく変化していて、それについていけなくて。昨日起きたことがなかったことになるかのように、次の日にまた新しくとんでもないことが起きてる、みたいな。先が見えない不安の中で、実際にやる予定だったライヴとかイベントとかも延期になってしまって、これから私、どうなっちゃうんだろう。っていうか、世の中どうなっちゃうんだろうって思っていて。もとの生活には戻れないのかな、これがずっと続くのかなって不安を感じていたんですけど、アルバムのリリースが10月に決まっていて、まだ未来があるから、私が伝えたいことや感じたこと、今は苦しいけどポジティヴに進み続けるってことをテーマにして、向き合って歌詞を書いていこうっていうふうに考えていましたね。

-今作はすごく希望が見える作品だなって感じていました。以前から次作は"こういう作品にしたい"みたいなものは考えていたんですか?

2ndミニ・アルバムをどうしますかって話になったときに、ありがたいことに前作(2020年3月リリースの1stミニ・アルバム『KDHR』)の評判がすごく良かったので、前作のテイストを引き継ぐか、まったく違うことをするかってことになって。おんなじことをしたほうがアンパイっちゃアンパイなんですよ。ただ、やっぱり挑戦したいなっていう気持ちがあって、今作はもう少しポップなものにしたいって考えていました。前作は"夜"っていう言葉を結構入れていたりしたんですけど、今作は朝、昼間、夕方くらいの明るい感じにしたいなとぼんやりですけど、頭にはありましたね。

-そうだったんですね。前作『KDHR』に続き今作もバラエティ豊かで、様々なテイストの楽曲が詰まっていて、ミニ・アルバムのいいところというのがすごく生きた作品だと感じました。

やった~、良かった。

-そんな今作の各楽曲についても聞かせてください。「GROOVY MUSIC TAPE」は力強くて、スタジアム・ロックのような感じもして、1曲目からパンチを食らいました。カセットに自分の"好き"を詰め込んでいた、子供の時の感覚を取り戻すという曲だそうですが、この気持ちを書こうと思ったのはどうしてだったんですか?

この曲は今作の中で一番初めにできた曲なんです。1stミニ・アルバムをリリースしたときにインタビューとかで、やっぱりはじめましてのところが多かったので、"音楽やロックを好きになったきっかけってなんですか"っていう質問をたくさんいただいて。その中で話をしているうちに、"あぁ、こういうことあったな"とか、すごい曲に出会ったときに走り出したくなったよな、とか、そういう初期衝動を思い出したんですよ。結構、あのときの気持ちとかを忘れちゃってて。"なんかわけわかんないけどすごいものが来た!"みたいな気持ちって、きっとみんな経験してることだと思うんですけど、私みたいに少し忘れちゃってる人もいるのかな~と考えたんです。そのことを曲にしたらエモい曲ができるんじゃないかなと思って、書きましたね。

-工藤さんの音楽との出会いで、衝撃を受けたエピソードってどんなものがありますか?

一番衝撃を受けたのは......それこそ"なんかすごい人が来た"みたいに思ったのは椎名林檎さんでしたね。「本能」を"Mステ"で披露されていたのを見て、歌の内容とかは当時はわかんなかったんですけど、子供ながらに"なんかすごい、めちゃかっこいいお姉さんが来た......!"って感じて。それはすごく記憶にあります。

-テレビとかでの思いがけない出会いもありますよね。ライナーノーツにもありますが、"カセットテープ"には思い入れがあるのでしょうか。

ギリギリ、カセットテープ世代なんですよ。小学生のとき、よくCDをレンタルしてきてカセットテープにダビングするっていうのをやっていて。それこそ、当時椎名林檎さんを観たあとすぐにCDをレンタルしに行って。小学生のとき、クリスマス・プレゼントにラジカセを貰ったんですけど、それは今でも使っているんです。だからやっぱり思い入れはありますよね。でも、ファンの方はカセットテープ世代ではない人がほとんどだと思うので(笑)、そういう人にもちゃんと伝わるように歌詞を書かなきゃというのは意識しました。

-あと、曲の最後のほうに"Playing my story of Rockstar"と出てきて、次の曲が「ROCK STAR」なのも流れを汲んでいていいなと思いました。ここは意図的に並べたんですか?

そうですね。最後のほうのつぶやいているような部分は、最後の最後まで決まらなかったところで。何か言葉を入れなきゃ......っていろいろ考えていたんですけど、全曲完成して、アルバムのタイトルも決まったので、じゃあ何か関連する言葉をはめていこう! と思って、これになった感じでした。

-そうだったんですね。「ROCK STAR」はまさに今こういう状況だからこそ生まれた曲だと感じました。曲の最後に"I am RockStar!"と言い切ってるのがすごく頼もしくて。

この曲ができたのもステイホーム期間で。今まで経験したことがない世の中になってしまって、自分の部屋から遠く離れた場所では人種差別の問題が起きていたり、身近なところではSNSでの誹謗中傷が問題になっていたり、いろんなことが起きているなかで、"私、なんにもできない......"って思ってしまったんですよね。そんなとき、部屋にTHE BEATLESのポスターが貼ってあるんですけど、それを見て、John Lennon(Vo/Gt)が生きてたらなんて言ってるのかな~とか、どんな曲を作るんだろうな、みたいなことを考えていたら、ちょっと気持ちが楽になったんですよ。そんななかで、私も表現者なんだから、これを音楽にしなきゃいけないんじゃないか! って思って。それから書き始めました。

-たしかに、あの時期ってコロナだけじゃなくて、人種差別とか誹謗中傷の問題などもたくさん取り上げられていましたよね。

SNSとかで"これは問題だ"とか"これはやってはいけない"とか、ただ言うだけなら簡単なんですよね。実際にアクションを起こされてる方もたくさんいますけど、私は臆病だからそれができなくて。だからこそ曲にして、それを伝えたいと思ったんです。あと、タイムラインってすごい勢いで流れていくじゃないですか。だから残るものを作りたいなって。もしかしたら、アナログだなって思われるかもしれないけど、私の想いや未来に伝えたいことを残したくて、この曲を書きました。

-今のお話を聞いて、すごく感動しました。この曲には工藤さんのソロ・アーティストとしての意志みたいなものも表れている気もします。表現者として"こうありたい"というような理想像みたいなものも含まれているのかなって。

"ロック・スターってなんだろう"みたいなことは、すごく考えましたね。ほかのインタビューでもこのお話をさせていただいたんですけど、"珍しいね"って結構言われて。最近のアーティストの方はロック・スターとか言うの逆に恥ずかしいよ、みたいな(笑)。あんまりそこ目指してないよ~と言われて、あぁそうなのかぁって。

-そうなんですか(笑)。

私の中のロック・スターって、THE BEATLESとかNIRVANAとか、自分たちの思いや考えを芸術として残している人たちで。なおかつそれが、今も大切に語り継がれているっていうのは、"めっちゃロックじゃん"って思うんですよ。Marilyn Mansonみたいに、見た目からパンチ強めで、明らかに"ロック・スターだな"って感じる存在もかっこいいと思うんですけど、私自身はどっちかって言うと、そっちの系統なのかなって。なので、意思表明でもあるかもしれないです。"こうなりたいな"みたいな理想というか。