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INTERVIEW

Japanese

工藤晴香

2020年11月号掲載

工藤晴香

Interviewer:三木 あゆみ

-そして、3曲目がリード曲「KEEP THE FAITH」です。今作の中でも特にヘヴィな印象がありましたが、この曲をリード曲にしたのはどうしてだったんですか?

この曲は最後に完成した曲で。それまでは"リード曲どうしようかね"みたいな、ぼんやりした感じだったんですけど、いざ完成してみて、一番強い曲ができたなと感じたのがこの曲だったんです。「KEEP THE FAITH」では初めてラップに挑戦していて、私結構ビビりなので、どういうふうに思われるのかなとかハラハラしてたんですけど、せっかくなら新しいことに挑戦した曲をリード曲にしたほうが、パンチが強いかなとかいろいろ考えた結果、この曲をリード曲にしました。

-たしかに、今作の一番の挑戦と言ったらラップですよね。ラップを入れようとなったのは工藤さんからの希望だったのでしょうか?

そうです。ヒップホップがすごく好きで、"ラップやってみたい"とお伝えしました。

-挑戦してみていかがでしたか?

もう、めっちゃ難しかったですよ(笑)。リリックは韻を踏まなきゃいけないし、レコーディングもそのラップの部分は最後にやったんですけど、テンポとかリズム感とか、そのフローっていうのがめちゃめちゃ難しくて。初心者の私ができるわけなかったわ! みたいに思いましたね。本当に一番難しかったですし、レコーディングもすごく緊張しました。

-でも、すごくかっこいい仕上がりでしたよ。歌詞で書きたかったイメージはどういうものでしたか?

これまでずっと進み続けてきたなかで、年齢や数字というもので可能性の限界を決めつけがちな世の中だなと感じていて。"そんなの関係ないじゃん!"ということを、伝えたいなと。"あの人終わりだよね"とか"あの人はこれが限界だよ"とか、勝手に終わりを決めつけるような理不尽なことに対して、腹が立つこともいっぱいあって。"生きていたらいつでもスタートラインじゃん"って思うんですよ。もし、ひとつのことで失敗したとしても、別の道で再スタート切っている人はいっぱいいるわけで。それが、すごく幸せな人もいるだろうし、人の幸せって人それぞれだし。だから、そういう人たちの背中を押したいなって。それに、自分の曲というのはこれからもずっと歌い続けていくものじゃないですか。私自身も年を重ねてきて、年齢の壁とかに悩むことも増えてきて。そういうなかで、私の背中も押してくれそうな曲だなと思っていますね。

-そうだったんですね。果敢に挑戦していくマインドが見える歌詞だなとも感じました。この「KEEP THE FAITH」はMVのショート・バージョンもすでに公開されていますね。ここにはそれこそカセットテープが出てきたりして、今作との関連も感じられました。

今回、ありがたいことに全6曲分のMVを撮ったんですよ(TYPE-AのM-CARDに収録)。それで、6つのシチュエーションがあったんですけど、実はその全部で「KEEP THE FAITH」を撮ったんです。最終的にそれらをいいとこ取りしてできあがったのがあのMVなんですよ。だから、単体でももちろんまとまっているんですけど、全6曲のMVを通して観たときに"そういうことだったんだ!"ってなるようになっていて。"この曲ってあの曲のシーンじゃん!"みたいな、パズルをはめていくような楽しみ方もできるんです。

-そうだったんですか。それは楽しみです。そして、4曲目の「君へのMHz」は、一転してしっとりしたミドル・バラードですね。これはラジオに関する曲なんですよね?

はい、もともとラジオがすごく好きでよく聴いていて。ステイホーム期間中、テレビとかは収録が難しい時期もあったじゃないですか。でも、ラジオはいつも通り変わらずに放送があって。それで、ラジオを聴いていたときに、パーソナリティさんたちの何気ない会話......例えば"今日ハンバーガー食べた"みたいな、いつもだったら作業をしながら聞き流していたようなことかもしれないですけど、それにすごく感動してしまったんです。"え、フィレオフィッシュ食べたことないの?"みたいな会話とか(笑)。それがすごく愛おしくなったんですよね。この温かい気持ちを表現したくて。なおかつ、ラジオを聴いていて、今の私とおんなじように、この番組を聴いている人が地球上にたくさんいるんだなって思ったときに、ひとりじゃないんだなと感じたんです。そういう気持ちとか、ラジオに対する感謝とかも歌詞にしたいなって思って書き始めたのがこの曲ですね。

-すごく温かく優しい空気を感じました。ヴォーカルもすごく柔らかい印象で。そこは意識されていましたか?

やっぱりバラードなので、優しさとか、ちょっとささやいているような感じとかは意識しましたね。あとは、あんまり強く感情を入れすぎちゃうと、ねっとりしちゃうというか、聴いている人も疲れてしまうと思ったので、そこはうっすらと入れるような感じにして。朗読とかに近いイメージだったかもしれないです。

-なるほど。そして、「Magic Love」は工藤さんが初めて作曲をした曲だそうですね。曲自体はどうやって作り始めていったんでしょう。

"よし作ろう!"ってなってからはまず、ギターでコードを弾きながら鼻歌で歌ってみて......という感じでした。楽器とかに詳しいスタッフさんに、"作曲に挑戦したいんですけど、何かコツってありますか?"と聞いたときに、まずはサビを量産したほうがいいよって言われて。Aメロ~Bメロみたいに作っていくんじゃなくて、サビをとにかく作って、その中から"これがサビだ"っていうものが出てきたら、今まで作ってきたサビの中からAメロ、Bメロが見つかっていくからって言われたんですよ。なので、最初はひたすらサビばっかり作ってました。でも、ほんとにいいアドバイスだったなって思います。

-この曲は、純粋な子供時代のことを描いた曲だそうですが、歌詞のイメージは最初から浮かんでいたんですか?

そうですね。作曲の段階で言葉も浮かんでいて、書き留めていたんですよ。

-歌詞のインスピレーションはどんなところから?

ステイホームで家の中にいることが多かったんですけど、外で無邪気に遊んでいる子供たちの声が家の中まで聞こえてくるんですよ。子供って元気だなぁ~とか思って。ステイホーム期間中で、世の中でこんなに大変なことが起きているのに、そんなことお構いなしで、この子たちはいつ家に帰るんだろう? っていうくらいずーっと遊んでいるんですよ(笑)。でも、自分もそういう時代があったよな~って思ったんです。公園でひとつの空き缶だけで5時間くらい遊んだりして。あのころのピュアな時代に戻りたい、子供時代に戻りたい! ってなったんですよね。それで、自分に"子供"を降臨させて、"私は子供!"って(笑)。

-(笑)

そういうふうに"子供になったつもりで曲を書いてみよう"って思ったのがきっかけで、できていった曲です。毎日が新しくて、毎日が冒険で、なんてことないことにも感動して、子供って最高だなと思いましたね(笑)。

-歌詞の中には工藤さんの子供時代のことも表れていそうですね。

子供のころ、めっちゃ早起きしてたんですよ。親も嫌がるくらい(笑)。今すぐにでも遊びにいきたい! って思ってて。朝6時くらいに友達が遊ぼうって来るんですよ(笑)。"大人たちより早起きしたら 飛び出そう!!"とか、そういう無邪気な気持ちを入れていますね。

-朝6時は早いですね(笑)。今後も作曲には挑戦していきたいと考えていますか?

作曲、ほんとにめっちゃ難しくて、今回一番時間かかったんですよ。けど、やれるんだったらやってみたいですね。次はこういうのもやりたいとか、欲も出てきますし。機会があったら次も挑戦してみたいです。

-工藤さんが全部作曲したアルバムがもしかしたら出てくるかもしれないですね。

わぁ~~大変だぁ(笑)。でも、いつかやってみたいですね。

-最後の曲は「My Story My Life」です。"未来は自由なんだ"、"代わりなんていない"という言葉には背中を押される感じがあって、すごくまっすぐな曲だなと思いましたが、この曲にはどういう思いが込められていますか?

私、小説もすごく好きなんですよ。主人公の人生を自分も同じように小説の中で辿ることができて、主人公と同じように悲しくなったり、嬉しくなったり、追体験できるっていうところが小説の好きなところなんですけど。電車とかで目の前にいる知らないおじさんや、女性の方などを見て、この人たちも私が経験したことないことを経験しているんだろうなって考えたときに、この人たちの人生もひとつの小説みたいなものなのかなと思って。そしてきっと私の人生も小説なんだろうなって感じて、このことを曲にしたいなと思ったんですよね。

-なるほど。ということはこの曲の主人公は工藤さん自身?

私自身でもあり、この曲を聴いてる"あなた"自身でもあり、その"あなた"の友達や両親かもしれないし。誰しもに当てはまることなのかな~という気はしますね。

-では、改めて今作を振り返ってみて、どういう作品になったと感じていますか?

全体を通して、すごくポジティヴな内容になったと思ってます。「GROOVY MUSIC TAPE」や「My Story My Life」、「Magic Love」とかもそうだと思うんですけど、きっと誰しもが通ってきた道、だけど大人になって忘れてしまったこと、忘れかけてたピュアな気持ちを、みんなが思い出すきっかけみたいなものになったらいいなと考えています。なおかつ、先が見えない不安の中で、それでも進んでいくんだと、背中を押せるような1枚になったんじゃないかなと感じていますね。

-本当にこういう時期だからこそ心に届く作品になっていると思います。最後に、今後のソロ活動での目標や、挑戦してみたいことがあったら教えてください。

やっぱりまだライヴができてないので、ライヴをやりたいなっていうのはありますね。結構ファンレターやSNSでもメッセージを貰うんですけど、全国各地にファンのみなさんがいるということで、ライヴができなかったとしても、イベントとかでいろんな場所を訪れたいです。それで、ファンのみなさんに会えたらいいなって思っています!