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INTERVIEW

Japanese

17歳とベルリンの壁

2020年08月号掲載

17歳とベルリンの壁

Member:Yusei Tsuruta(Vo/Gt/Syn)

Interviewer:山口 智男

-わかりました(笑)。ところで、15年7月にリリースした1stミニ・アルバム『Aspect』を皮切りに、タイトルの末尾がct縛りのミニ・アルバムをリリースしてきて、今回の『Abstract』で4作目になるのですが、シリーズ最終作だそうですね。『Aspect』をリリースしたときから、末尾ctシリーズで何枚か出そうと考えていたのでしょうか?

『Aspect』を出したときは考えてなかったです。2作目の『Reflect』(2017年リリース)を出したあとに考えました。というのも、『Aspect』を出したあとに当時のギターとドラムが抜けてしまい、そのあとも活動を続けられるかどうかわからなかったんです。でも、『Reflect』を出してから、次の作品とその次の作品のヴィジョンが見えてきて、4部作でいこうと考えました。

-『Object』(2018年リリースの3rdミニ・アルバム)をリリースしてから、今回は2年空いています。ほぼ1年半おきにミニ・アルバムをリリースしながら活動を続けてきたわけですが、今振り返ってみて、どんな手応えがありますか?

音源はいいものが録れたと思っています。とは言え、手応えと言えるようなやってやったぞみたいな感覚は特にありません。ただ昔のアルバムよりも、今のアルバムのほうがいいと僕はあまり思っていなくて。

-え、そうなんですか?

はい。単純に方向性が違う作品を4枚作ったという認識なんです。今回の作品はたまたまエレクトロニックっぽいものを作りましたけど、ギター・ロックっぽいものなら『Aspect』はいいものができたと思っています。聴く人それぞれに好きな作品は違うんじゃないかという意味で、これまでのミニ・アルバムはいい作品を残せたと考えています。

-最高傑作を常に更新したいと考えるバンドもいますが、17歳とベルリンの壁の場合、どの作品もその作品における方向性においては、最高傑作と言えるものになっているということですね。とはいえ、活動を続けてきて、バンドとしては技術が上がるということも含め、以前よりは、いいバンドになっているというところもあるのではないでしょうか?

そうですね。ライヴで昔の曲をやった場合は、当時より今のほうがいい演奏ができていると思います。

-これまでリリースしてきた作品のセルフ・ライナーノーツを拝読して、作品を作るときには方向性、あるいはコンセプトを、あらかじめ決めたうえで作っているんじゃないかと想像したのですが。

そうですね。感覚的に作るということはまずないと思います。どういう曲を作りたいか、頭で考えてから動くタイプです。

-どういう曲を作りたいかについても、漠然と考えているわけではなくて、音楽的にしっかりしたコンセプトを立てているようですね。曲作りはどんなふうにやっているのですか?

好きな曲があったら覚えるじゃないですか。そういう曲が10曲とか20曲とか溜まってくると、自分が好きだと思うこの曲のこの要素と、あの曲のあの要素を掛け合わせたら面白いんじゃないかというふうに考えるんです。あくまでもこれは例えなのですが、「天体観測」1曲だけ聴いて、「天体観測」みたいな曲を作るのは危険だと思うんですけど、それと全然違う曲からも着想を得てみたいな作り方をしていますね。

-セルフ・ライナーノーツの中で、インスピレーションになったバンドや曲を包み隠さずに書かれているじゃないですか。僕の知っているかぎり、アーティストの方々って、どういうものに影響を受けたかあまり語りたがらないものなのですが。

結構、語る方と語らない方で二極化しているイメージがありますね。

-そうですね。Tsurutaさんが躊躇なく明かせるのは、それを明かしたとしても、それとは全然違うオリジナルなものになっているという自信があるからなのでしょうか?

うーん、自信があるかないかは関係ないです。単純に僕が中学生や、高校生の頃にASIAN KUNG-FU GENERATIONが参照元のバンドをわりと言ってくれていたんですよ。アジカンの後藤(正文/Vo/Gt)さんが例えば、WEEZERとか、OASISとかを口に出してくれたことで、自分の聴く音楽の幅も広がっていきました。僕もそういうことを――17歳とベルリンの壁が好きだったら、こういうバンドも好きになるかもしれないよみたいなことを、下の世代にしたいというか、もっと音楽を好きになってもらいたいというか、そういう意図があります。それに"参照元のバンドがいなくても、あなたはこの曲が作れましたか?"と尋ねられたら、答えはノーなんですよ。SUPERCAR、THE PAINS OF BEING PURE AT HEARTを聴いたうえでのアウトプットであることは、間違いない事実だと思うので、完全なオリジナルではないと思っています。

-そんなふうに作った曲を、バンドとしてどんなふうにアレンジしていくんですか?

僕が9割5分完成させたものを持っていくのですが、曲が3曲ぐらい溜まったら、LINEでメンバーに投げて、やりたい曲を選んでもらうんです。

-選んでもらう? "この曲をやるぞ"と自分で決めちゃわないのは、なぜなんですか?

これまでミニ・アルバムを4枚作ってきて、自分からやろうって言った曲もあるんですけど、なぜメンバーに選んでもらうのかというと、ポップ成分のフィルターみたいな役割を、メンバーが担ってくれるのかなと考えているからです。ひとりで曲を作っていると、ギミックやアイディアみたいなものばかりに注意が向いてしまうことがあるんです。複雑なリフをやりたいとか、こういう音響のものをやりたいとか。でも、冒頭の話に戻るんですけど、メロディがポップじゃないと自分はいいと思えないという前提があるにもかかわらず、ギミックやアイディアにこだわりすぎると、その前提を見失った曲になってしまいがちなんです。そんなとき、メンバーがそういうポップじゃない曲を除外してくれます。メンバーがいいと思うなら、ポップな要素があってちゃんと届く何かがあるんだろうというところで、毎回僕は納得しています。

-ここで改めて聞きたいのですが、Tsurutaさんが考えるポップなメロディ、いい曲というのは?

退屈じゃないものとか、肉体的に踊れるものとか、何かしらワクワクする要素があるものがポップだと思います。

-17歳とベルリンの壁は、どの曲にもそういう要素が必ず入っていると?

僕はあると思っています。