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INTERVIEW

Japanese

アルクリコール

2020年03月号掲載

アルクリコール

アルクリコール

Official Site

メンバー:早坂 コウスケ(Vo/Gt) ワタナベヒロキ(Gt) 五十嵐 ハヤト(Ba) 後藤 フミト(Dr)

インタビュアー:蜂須賀 ちなみ

北海道在住の4ピース・バンド、アルクリコールが初のフル・アルバム『ホワイトブルーとハル』をリリースする。全国流通盤は実に2年ぶり。2018年の全国デビュー時、ここから本格始動かと思っていた身としては正直このブランクが気になっていた。しかし、2年の沈黙は彼らにとって必要なものだった。バンドとして根っこから生まれ変わったことを感じさせる全12曲がそれを物語っている。自分たちがどんなバンドなのか、何を鳴らして生きていきたいのか。目を逸らさず核心と向き合うことにより、悩みの時期を乗り越えたアルクリコール。インタビューを通じて現在の心境を赤裸々に語ってくれた。

-前作『Re:versal』(1stミニ・アルバム)のリリースから2年が経ちますが、その間、バンドにとってどんな時間を過ごしていましたか。

ワタナベ:我々アルクリコールにとって非常に長く険しい期間だったと個人的に思います。『Re:versal』を出したあと本来であれば歩幅を狭めることなく、みなさまにたくさんの作品をお届けするつもりでした。しかし、楽曲を制作するにあたり"我々の伝えたいことはなんなのか"、"アルクリコールらしさとはいったいなんなのか"など、様々な疑問に頭を抱えながら無意識のうちに歩みを止めていたんです。それでも、制作が滞ってはいけない、手を止めている場合ではないと、悪循環から抜け出すための歌ばかりを作っては納得いかずにボツにするという繰り返し。そんな歌だけを描いても、誰かの心には響かないと気づきましたし、何より自分たちらしくないとも思いました。かなり遠回りをしながら、自分たちが伝えたい物事や自分たちらしさについて日々葛藤して過ごしていました。あまりにも長い時間をかけてしまったけれども、自分たち自身と真正面から向き合うことのできた大切な2年間になったとも思います。

-配信シングルや会場限定盤のリリースは行っていたものの、2作目の全国流通盤をリリースするまでに2年期間が空いたのはなぜでしょうか。例えば、この2年間で世間的にストリーミング周りの環境が整った印象がありますが、音楽の聴かれ方が変化するなかで自分たちはどうするべきかを考えた結果でしょうか。それとも、バンドの内部的な事情からでしょうか。

ワタナベ:おっしゃる通り現在、音楽を届ける媒体は多種存在しております。より多くの方に音楽を届けたい場合、今やCDよりも、サブスクリプション・サービスが主流になりつつあることも理解しておりました。そんななか配信リリース(2018年リリースのシングル『日々が零れて』)を行ったことや、『あさやけ.e.p』(2019年リリース)を会場限定にした理由にはそういった計算的な意図はないのです。『Re:versal』リリース直後、我々は次の目標として2作目の全国流通を掲げました。つまり、今作『ホワイトブルーとハル』をリリースするために2年前から動いていたんです。しかし、歩みが停滞してしまい思うように動けなくなっておりました。最中、我々の転機ともなる楽曲「日々が零れて」が完成して、この楽曲が完成した際、まだ、アルバムとして世に広めるほどの楽曲が出揃っておらずでしたが、我々のターニング・ポイントとなったこの楽曲は、いち早くみんなに聴いて欲しいという気持ちから全国流通より先に配信リリース、会場限定EPとして発信させてもらったんです。

-収録曲の内、特に「日々が零れて」はバンドにとって重要な曲なのかなという印象を受けました。手応えを感じたポイントなどがあれば語っていただきたいです。

ワタナベ:この楽曲は長い期間自身と向き合い続けてきた我々のひとつの答えだと思いました。アルクリコールらしさとして初めて胸の張れる楽曲になったと自覚してます。事実、今作『ホワイトブルーとハル』は、「日々が零れて」完成後にほぼすべての楽曲を制作しており、我々の自信に繋がった曲にもなるんです。もともとこの楽曲と「星降る街の僕らは」(『日々が零れて』収録曲)の2曲は、2018年9月に北海道を襲った北海道胆振東部地震について描いた楽曲になります。「星降る街の僕らは」では当時の出来事を鮮明に記している一方、「日々が零れて」は一日一日を噛み締めて過ごすことの大切さを強く記しているんです。時間の経過と共に、「日々が零れて」が様々なシチュエーションに寄り添ってくれる、とても優しい曲だという認識を覚えて、我々自身もこの楽曲に救われることが多く、『ホワイトブルーとハル』には外せない1曲だとメンバー間でも強く思いました。

-収録曲12曲の内「日々が零れて」を除く11曲が今回初収録の新曲です。ニュース・リリースには"バンドとして完全に生まれ変わる1枚"とありますが、そういう作品を作るに至った経緯、背景を教えていただけますでしょうか。

ワタナベ:先述のように、『Re:versal』を出したあと我々は様々な壁にぶつかりました。自分達らしさを模索しているうちに、自分が発する音や言葉への信頼が損なわれていく感覚になり、楽曲制作が日に日に作業的になり始めてきたあたりで、"変わらなければいけない"という感情を覚えたんです。今までは無理に前を向いたり、独りよがりな物事ばかりを綴ってきたりしました。背伸びをしてみたり、身の丈に合わないことをやってみたり。何度も繰り返しているうちに"そうじゃないな"と気づきました。時には当たり前にあるものの心地よさに甘えてみたり、過去にすがってみたり、それでも、たまに前を向こうとしてみたり。常に前向きに生きていくのは難しくて、右往左往しながら生きてきた僕らを等身大で伝えたいなと思いました。今まで隠してきた部分を曝け出そうと。実際にそう思ってから制作した楽曲は個人的に、以前と見違えるほどに鮮明でありのままを見せたものになっていると思います。"バンドとして完全に生まれ変わる1枚"というより、"バンドとして完全に生まれ変わった1枚"と言えるのかもしれません。

-アルクリコールはもともと北海道発のバンドだと名乗っていましたが、今回のアルバムを聴いて、"北海道でバンドをやっているからこその音"を鳴らすことに対するこだわりが、より強くなったのかなと感じました。 

ワタナベ:"北海道でバンドをやっているからこその音"に対するこだわりというのは、実は『Re:versal』を制作した段階で意識しておりました。どちらかというと、こだわりが強くなったというよりは、そのこだわりを形にする術や武器を少しずつ身につけることができたのだと思います。実際に今作は今までよりも、素直に北海道らしい音を再現できたという実感もあるんです。北海道というのはある種特異な地であると思っており、日本で海を隔てて独立しているからこそ、他の街よりもオリジナルに特化している部分が多く感じております。ゆえに、流行が遅れてやってきたり、首都圏との差異が大きかったりもするかと。そんななか、首都圏の背中を真似ても追いつきはしないし、何よりそれではオリジナルではないと思います。我々は9年前に北海道札幌市で活動を開始してから、この土地でたくさんの音楽に触れてきました。この街には先人たちが脈々と受け継いできた音楽が存在します。言葉で説明するのはとても難しいのですが、我々は確かにそれを感じ、吸収しながら育ってきた自覚があります。何より、生まれ育ったこの街への愛が強いゆえに、この街から"北海道でバンドをやっているからこその音"を発信することに対する意味を強く感じており、この地に執着して活動しているのはある種必然なのかと思います。

-今回の制作において特に影響を受けたアーティスト、曲の名前を挙げていただけますか?

ワタナベ:今回の作品はかなり広い範囲からインプット、ヒントをいただいているのですが、強いて言えばMEW、TEAM ME。どちらも北欧のバンドです。MEWに関しては『Re:versal』のときから参考になる部分が多く、継続して我々のバックグラウンドに存在しております。TEAM MEもかなり参考になる部分が多く、北国の音に対する認識をかなり広げてくれたバンドですね。あとはアーティストではないのですが、ヨーロッパの民族音楽であるケルト音楽からもかなり影響を受けたかと思います。

-先ほどの回答で挙げていただいた音楽の方法論をただなぞるだけでは、"北欧の真似"になってしまうだけで"北海道"の音にはならないかと思います。どういったところで北海道らしさ、日本らしさを表現していきましたか?

ワタナベ:上記でお話しした首都圏と北海道の違いと通ずる部分ではあるのですが、我々がいくら"北欧の音楽"をリスペクトし、真似ても、本家本元に勝ることはないと思っております。しかし、北海道と北欧の国々の音楽は当たらずといえども遠からずで、浮かぶ情景や音色に対してどこか親近感が湧くんです。個人的な解釈ですが、おそらく暮らしているフィールドや環境が近しいのも理由のひとつなのではと思います。そこで一番参考にしたのはその音をどう出すのかではなく、情景の浮かぶ音の出し方でした。彼らが北欧の音を出すように、我々が北海道の音を出すことが可能である裏づけになったというか。なので、今作の音色は"北欧的"というよりも、"北海道的"になっているかと個人的に思います。あとは、海外と日本の大きな違いである"曲構成"と"メロディの強さ"。この2点は徹底して制作しました。あくまでジャパニーズ・ポップであるように試行錯誤を重ねています。