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INTERVIEW

Japanese

juJoe

2020年02月号掲載

juJoe

Member:平井 拓郎(Vo/Gt) 菅 ひであき(Ba/Cho) 佐藤 ユウスケ(Dr/Cho)

Interviewer:秦 理絵

-まずは、「馬鹿」とか「灰」から作っていったんですか?

菅:最初にスタジオに入ったときには、もう「閃光」以外がデモとしてあったんですよ。

佐藤:一気に1~2週間ぐらいで仕上げていった感じでしたね。

-基本はスタジオで曲ができていくイメージですか?

平井:そうです。持ち帰って練ってとかじゃなくて、どんどん決まっていくんです。相当な理由がなかったら、それぞれが出すフレーズに反対もしなかったので。

佐藤:みんなジャッジが早いんですよ。バンドによっては、このまますんなり決めるよりも、いろいろ試したいから、"ちょっと違うんじゃない?"みたいな代案を出したりもすることもあるけど、そういうのが全然なくて。

-その時点でアルバムとして出すことも見据えてたんですか?

平井:あんまり......。

-世に出るものにする前提もなく、ただ曲を作ってる状態だったと。

平井:そうです。QOOLANDのときは、当たり前ですけど、やっぱり音楽ビジネスとして成立させなきゃいけないっていう状態だったんですよね。でも、このバンドで最初にスタジオに入った頃はリハビリの一環みたいな感じで、音楽的に素晴らしい作品を作らなきゃいけないっていうのは、まったく思ってなかった。それが良かったんです。

-結果として、アルバムとしてリリースすることにはなりましたけど。そういう出発だったから、『juJoe』は、あえて作品としてのバランスも整えてないんですね。

平井:そう。そこはもう"全部の曲調が一緒でもいいじゃん"っていう話をしたんです。RAMONESだって全部一緒だし。

佐藤:実際僕、曲を覚えるまでタイトルを言われても、どれがどれだかわからなかったですからね(笑)。結構似てる曲が多くて。

平井:QOOLANDの頃は、曲が似てたら幼女殺しの罪ぐらいに言われてたけど。

菅:あはははは!

佐藤:それ、相当な罪だよね(笑)。

平井:でも、今は似てても良くない? っていう感じですね。

-「三十路」は"うつになった"と歌い出しますけど、これは平井さん自身のことですか?

平井:そうです。

-さっきアルコール依存症になった話も出ましたけど、そういう病名とか、自分の弱い部分ってあまり知られたくなかったりもすると思うんです。でも、平井さんがそれを包み隠さずに表現しようと思うのはどうしてでしょう?

平井:去年亡くなった"COMING KOBE"の(実行委員長)松原さんの影響が強いかもしれないです。地元の先輩なので。関西人ってしんどいことをある程度ギャグにしてやっていくんですよ。大事なことほど深刻に言わない傾向にある。松原さんの通夜とかは、ずっと笑ってましたからね。結局しんどいことをしんどいって言っても暗いし、ユーモアの中に逃げるしかないじゃないですか。あったことを隠してもしゃあないし。僕は恥をかくのは構わないんですよ。恥をかくのを嫌うやつが一番滑ってるかなって思うので、自分の恥は思いきり晒してやりたいっていうのはありますね。

-「三十路」では、"死にたい"と"生きたい"の間で揺れている自分の中の迷いを徹底的に歌っていますよね。「馬鹿」あたりの曲もそうかな。

平井:"全然死にたくないよ"って言う人はたぶんあんまりいないと思うんです。逆にそれは危ない状態なんじゃないかなって(笑)。普通に人間をやってたら、そのうち死にたいはずなんですよ。僕はちゃんときれいに死にたいなと思うんです。そういう意味では、QOOLANDは自然消滅じゃなくて、ちゃんと死んだので。

菅:まぁ、往生ってことだよね。

平井:そう、大往生したい。

-それで「三十路」では最後に"逝きたいとも思うしな"と歌ってるんですね。バンドでも人でも"どう死ぬか"を考えることが"どう生きるか"に直結するから。

平井:そういうことだと思います。このバンドが始まって、どういう形で終わるかはわからないけど、なんとなくライフワークになっていきそうな雰囲気があるんですよ。もちろんメンバーの健康面の問題で続けられなくなることがあるかもしれないし、当然僕が死んだら解散するだろうし、そういう終わり方が理想かもしれないと思うんです。LINKIN PARKみたいに。変な感じでだらしなく終わりたくはないですね。

-菅さんは「灰」を聴いて、もう一度バンドを続ける決意をしたそうですけど、この曲のどの部分に心を動かされたんですか?

菅:歌詞を聴いて"ちゃんと生きて死のう"っていう感じが好きだなと思ったんです。あと、"あしたのジョー"が好きなので。

-「灰」では"あしたのジョー"の生き方への憧れが歌われてますもんね。これがバンド名の由来にも繋がるわけですよね?

平井:そうです。Juはスウェーデン語で、"This is"とか、"It is"っていう意味らしくて。"juJoe"は"This is 矢吹 丈"なんです。

-具体的に矢吹 丈のどういう部分に惹かれるんですか?

菅:デートのシーンでしょ?

平井:そう。矢吹 丈が好きな女の子とデートするシーンがあるんですけど、そこで"矢吹君の青春は暗すぎる"って言われるんです。10代とか20代の同じ世代の人たちは青春を謳歌してるのに、丈はトレーニングとか減量ばっかりしてるって。でも、丈は、俺はこれで満足してる。リングの中で燃え尽きるまで、血みどろになって殴り合う充実感が好きなんだって言うと、女の子には"私、矢吹君のそういうところについていけそうにない"って言われちゃうんです。結局その女の子は別の人と付き合うことになるんですけど、ああいう丈の飢餓感がかっこいいんですよね。

-ひたすら我が道を貫く感じに男としてロマンを感じるというか。

菅:孤独を愛する男ですよね。

平井:まぁ、善人ではないんでしょうけどね(笑)。ちょっと話が逸れるけど、僕たち今30代前半ぐらいなんですけど、最近になって"いいやつ"って褒め言葉じゃないと思うようになってて。"平井さんってどういう人なの?"って言われたときに"いい人だよ"って言われたら侮辱されてるような気がするんですよ。

菅:自分がいないところで"あの人、いい人だよ"って言われるのは気持ち悪いよね。

平井:だから、僕はかなりイカれてる人間として紹介されたいんですよね。

-わかる気がします(笑)。アルバムの話に戻すと、1曲目の「閃光」は解散したバンドのことを歌ってますね。QOOLANDのことにも他のバンドのことにも受け取れたのですが。

平井:これはシリカっていう神戸の友達のバンドのことも書いてるんです。メンバーの脱退があってシリカが動けなくなったときに、ずっとメンバーと電話をしてたんですよ。そのときに"いつ次のやつ作るん?"って聞いたら、"もうできへんかも......でも、やりたいな。どうやったらできるかなぁ"って言ってたりして。それを歌にしたんです。友達の活動も難しくなってるし、自分も解散した。それでも、ほんの少しだけど、20代でバンドをやりながら暮らせて良かったなっていうことを歌ってるんです。

菅:これ、もともとは"解散"っていうタイトルだったんですよ。

平井:それは縁起でもないから(笑)。

菅:一瞬で消えていくものとして"閃光"っていうタイトルにしたんです。この曲は今うちのバンドで一番テンポが速くて短い曲ですね。

-「閃光」にはTHURSDAY'S YOUTHの篠山(浩生)さん、ircleの河内(健悟)さん、GOOD ON THE REELの千野(隆尋)さんなどなど、総勢8名のゲスト・ヴォーカリストを迎えたバージョンのミュージック・ビデオが公開されています。

菅:これは「閃光」のミュージック・ビデオを撮りたいってなったときに、なんか面白くしたいなっていうので、友達をいっぱい呼んで歌ってもらうことにしたんです。

-全員がjuJoeに近いシーンで闘っているバンドマンだからこそ、この曲が本来持っているもの以上に新しい熱が加わった感じがしました。

菅:みんなタフな音楽をやってる連中ではありますからね。

平井:かっこいいやつらですよね。