Japanese
シイナナルミ
2019年11月号掲載
Interviewer:高橋 美穂
女子の細かい感情を言語化することで、なるみんの世界観ができる
-そして、このたびリリースされる「すきぴホリック」。これを聴いて、歌詞だけではなく、曲もいいと思ったんですよね。
「すきぴホリック」は歌詞重視で、こういう曲がいいですって提案させてもらったんです。歌詞の"恋は盲目"、"中毒性がある"みたいな簡単な内容を送って書いていただきました。
-実際にあがってきたものを聴いて、どう思われました?
"めっちゃ大好き!"って思いました。私の曲の中でもこれは特にお気に入りで、口ずさんじゃうんですよね。いただいた日にサビも8割くらい作詞しちゃいました。この曲のこと、運命だと思っています。
-歌詞でも、女の子の名言と言えるようなフレーズが出てきますよね。特に、"本気で 人の事 好きになる時/全ての非常識さえ 常識になる"。こういう言葉は、どんなところから思いつくんですか?
私、Twitterをしていても、友達と話してても、メモする癖があるんです。感情ストックっていうか。基本的には自分が思ったことを書くようにしていますね。この歌詞は、いろんな意味が込められているんです。第三者から言われる"あんたの彼氏は浮気してるよ"みたいな言葉ってありますけど、彼氏のことを本当に知っているのは私だし、信じたいっていう気持ちがあるっていう。あとはホストに通っている女の子の気持ちとか......。私は、恋は盲目って悪いことじゃないと思うんです。むしろ、盲目になれない恋って本当の恋なのかな? って。人を好きになるときって、条件とかで選ばないですよね。"好きだ!"って思ったら好きだから。そこからその人のことを知るけど、好きになったら嫌いになれないですよね。年収がどれくらいで顔がどうで身長が何センチでとか、理性で選んでいる恋は本物じゃないって私は思うんです。私、歌詞や脚本を書くときにいろいろ調べるんですけど、心理学的な話になると、人を好きになるとドーパミンが出てきて、正しい判断ができなくなるんですよね。だから、焼きもちも焼かない、依存もしないって、本当に好きなのかな? って思う。好きになりすぎても疲れちゃうけど、私はそっちのほうが楽しいし。周りからバカにされても、そういう生き方をしていきたいですね。この歌詞でも、恋は盲目って誇らしいっていう心情を書いています。
-実際に周りから"「多分あなた彼にだまされてるよ」"って言われたこともあるんですか?
うん。でも、自分の考えは変わらなかったです。"でも、好きだし"っていうひと言で終了なんですよね。リスナーさんに聞いても、こう言われたことある女の子は多いですよね。私は所詮、人の恋愛って思っているので、友達の恋愛には口を出さないんですけど。
-すごく自分の考えをしっかり持っているんですね。ブレないというか。
そうですね。そこが原因で疲れたり、つらい思いをしたりすることがあります。こだわりが強いので、人とぶつかることもあるし。
-歌詞を書きながら、ドラマのイメージも膨らませていたんですか?
はい。私の場合、全部が同時進行なので。ひとつの"こういうものを作りたい"っていうのがあって、そこから歌詞や脚本を作って、MVを撮ってっていう感じなんです。思いついたときにやらないといいものができないですから。順番通りにやるっていうよりは、バーッて同時にやりたいんです。
-じゃあ、今メジャー・デビューして、周りにいろいろなスペシャリストがいるなかで活動できているのは、シイナさんにとってはベストなスタイルですよね。
はい、感動しました。私は発想できるけど、形にする技術はプロにかなわないので。自分の100パーセントの発想とスタッフさんの100パーセントの技術が合わさって、200パーセントのものができたと思います。
-そして今作の2曲目「好きな人の好きな人になりたい人生」は、シイナさんの曲の中ではストレートな歌詞のようにも思えるのですが、いかがですか?
"好きな人の好きな人になりたい人生"って、それな! って感じですよね。あえてそういうタイトルにして、これも、"仮面彼氏"の挿入歌なので、世界観とリンクさせているんです。好きな人に好きな人がいないときの片思いって、楽しいじゃないですか。でも、好きな人に明らかに好きな人がいて、なおかつその人が自分と真逆なタイプのときはつらいですよね。そういう感情もあるあるかと思って、作詞しました。ただ、いろんな部分で、ただの片思いの曲じゃないようにしています。"私のことを好きな人を好きになれればよかったのに"とか。
-これ、あるあるですよね!
そうそう。友達にも、自分のことを好きになってくれる人は好きになれなくて、振り向いてくれない人のことばかり好きになっちゃう人がいて。でも、つらいのって、両思いになれないからじゃなくって、その人じゃなきゃダメだからなんですよね。自分のことを好きになってくれる人と付き合っても、自分も好きじゃなかったら、幸せになれないじゃないですか。そういうハッとさせるような表現も入れました。女子の細かい感情を言語化することで、なるみんの世界観ができるというか。
-シイナさん、めちゃくちゃピュアですよね。
恋愛観が17歳くらいで止まっているって言われます(笑)。
-大人になると恋愛も頭で考えがちですけど、シイナさんのように生きていくと、本物の恋愛を捕まえられる気がしますね。
私、打算とかで人を選んだことがないんですよ。最初に60点だと感じている好きなものを100点に好きになることって難しいと思うんですけど、最初から100点だと感じている好きなものは、そのあと120点になるじゃないですか。だからこそ、私は恋愛においても仕事においても妥協は絶対にしたくないんです。それがマイ・ルールなんですよね。告白されたから、好きになれるかな? って思って付き合っても、絶対に好きになれないんですよ。そういう人もいるのかもしれないけれど、私はそういうのでうまくいかないタイプなので、最初に"いい!"と思った人としか恋愛をしないようにしています。
-そう考えると、恋愛って奇跡ですよね。この広い世の中でお互い100点な相手と出会わなきゃいけないわけですから。
そうですね。でも私は、今までそういう恋愛をしてきました。
-だからこそ、こういう歌詞を書けるんですね。このまま純粋でいてほしいなぁ。2~3年後に、急に恋愛の条件とか歌わないでほしい(笑)。
それはないですないです(笑)!
-これから、こういう表現者になっていきたいっていう目標や計画はありますか?
やっぱり人と違うことをやっていきたいですね。まだ誰もやっていないことを私がやって、私がそのジャンルになりたい。それはYouTubeにも楽曲にも言えます。私の持ち味は、全部を自分でプロデュースしていること。YouTube、ドラマ、音楽、すべてをリンクさせて、自ら演じて歌うっていうことをやっている人は、私しかいないだろうなって。他の人が真似しようとしても、できないと思うんですよね。そういうところに特化していきたい。あと、今後はライヴの機会も増えると思いますけど、ライヴが楽しいアーティストになりたいですね。
-シイナさんの発想力だと、ライヴも歌ってMCをして終わるだけじゃなく、セットや演出にもこだわりそうですね。
そうですね。以前は、ドラマを公開していて、最終話をライヴハウスでやるっていう演出をやりました。主人公が女子高生のアイドルで、ずっと名前を出さないまま話が進んでいたんですけど、最終回でアイドルを辞めるところから会場のシーンに切り替わって、"シイナナルミ生誕祭"みたいになる......つまり、主人公は過去の私だったっていう。エンディングは、ドラマの劇中のアイドル・グループで曲を披露して。これからもライヴの楽しさだけではなく、映画も観たような満足感でファンの人をお腹いっぱいにさせたいですね。
-ファンの方は、女性と男性、どちらが多いんですか?
女の子が7割くらいかな? でも、最近は男性のファンも増えていて。男性には、"彼女がファンなので応援しています"って言われることが多いんです。彼女に"なるみんのYouTube、勉強になるから観な!"って言われるって。男の子にもそういう需要があるのかな(笑)。
-他の女性シンガー、アイドルとは違った愛され方ですね。
そうですね。かわいいとかじゃなく、女心を勉強するために見聞きするっていう。
-メンヘラ系って言ってしまうと狭い世界に見えますけど、シイナさんは広い世界に響くことをやっていると思います。
いろんな人に届くといいなと思います。
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