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INTERVIEW

Japanese

清 竜人

2019年05月号掲載

清 竜人

インタビュアー:石角 友香

昨年リリースの『平成の男』、吉澤嘉代子とのデュエットも話題になった『目が醒めるまで』で、ファンのみならず清 竜人という表現者の変幻自在ぶりに驚かされたが、平成から令和という時代を迎える今、平成元年生まれの彼が、正統派の歌モノに挑んだ集大成がアルバム『REIWA』だ。ニュー・ミュージックや歌謡曲の大御所アレンジャーを共同制作者に迎え、またその世界観に通じるセルフ・プロデュース曲も収録した全12曲は、先入観を外して素直に聴けば、今を生きる男性にとっても女性にとっても、ニュートラルで粋な恋愛や人生の情景に心打たれるはず。名作を完成させた清 竜人に、本作に対するスタンスを軸に訊いた。

-新元号が令和って決まった瞬間にアルバム・タイトルをツイートされていましたね。

(笑)スタンバってましたよ。

-タイトルが委ねられてるわけじゃないですか(笑)。

そうですね、政府に委ねられてました(笑)。結果、響きも美しいし、ジャケットのデザインもローマ字にしたときにデザインしやすい長さだったし、助かりましたけど。

-意味がどうとかは言えないですからね。

そうですね。ただ、2019年の4月末から5月頭あたりのリリースという予定は前から組んでたんです。で、もともと元号が変わるって話はあったので、昭和から活躍してるような方たち、業界にずっといて未だに第一線で活躍されてるようなベテランのクリエイターたちと、平成元年に生まれて平成とともに生きてきて、現在進行形でアーティストをやってる僕とがコラボレーションをして、次の時代への橋渡しになるような作品をこのタイミングでリリースしたいっていうのが、コンセプトでもあり、テーマでもあったんですね。

-はい。

なので、5月1日に元号が変わるってアナウンスがあったときに、すぐ曜日を調べたんですね。そうしたら水曜日で。で、これは何かの縁だなと思って5月1日リリースに決めて、そこからアルバムを制作していきました。それに、印刷物等々、制作スケジュールが間に合うのであれば、新元号が決定する4月1日にアルバムについて発表できるじゃないですか。なので、新元号を表題にするっていうのが、いろんな意味合いで美しいのではないかなというところから決まっていきましたね。まぁ、エンターテイメント性からも。

-あまりにもバチっとハマりましたね。去年7月リリースのシングル『平成の男』の段階から、王道の歌モノをやることはもうおっしゃっていて。アルバムは想像以上に美しい作品になったなと思いました。

ありがとうございます。嬉しいな。いわゆる時代は変わってもあり続けたい普遍的なもの、J-POPに本来備わるべき普遍的な要素みたいなものはもちろん維持しつつ、プラスアルファ、現代だからこそ奏でる意味のある要素ももちろん落とし込んで、新しい時代の歌謡曲の形――海外の人には伝わらなくても、日本人の琴線に触れるような、日本人がこれを聴いてすごく心がキュっとなるような作品にはしたいなと思ったので。

-全体的にゴージャスでサウンドはリッチなんですけど、竜人さんの歌詞は平成元年生まれの人の価値観であって。そのバランスがすごく面白いです。

そうですね。歌詞は結構こだわったというか、バランスはとったつもりで。いわゆる哀愁とか郷愁みたいなものを感じさせるようなものにしたかったんです。でもそれは"切ない"って言葉を直接的に訳せる英語があまりないように、やっぱり日本人ならではの感覚で。日本人の琴線に触れるようなシチュエーションって、J-POPには必要不可欠だなと考えていて、それを演出するときに、ただ昭和から平成初期の作品の世界観を模倣するだけではまったく意味がないと思ったので、歌詞の世界観は今の僕だけど、言葉遣いは丁寧にしたいなという気持ちで作りましたね。

-「平成の男」はシングル曲でもありましたが、この作品全体をひとつ象徴するものではありますか? 平成が終わるときにこの人物像の存在は大きいかと思うんですが。

「平成の男」は、たしかにそういう側面がありますね。今の男の生き様っていうのを、現代の道徳観にのっとって美しく描けたかなとは思ってるので。他の楽曲も合わせてアルバム・トータルで言うと、歌詞で何かものすごく強いメッセージを伝えたいとかっていうのは、このアルバムに関してはそこまでなくて。というよりかは、パッとフレーズを聴いたときに切なくなるとか、良くも悪くも過去の思い出が蘇るとか、そういうふうなものにしたいなと思ったんです。


昔も今もエネルギーのある人はいるんです。ただ放出の仕方が変わった。もっと言えば民度が上がったんだと思う


-竜人さんが描いてる男性はみんな、やせ我慢して女性を遠くから愛しく見つめているようなところもあるけど、それは前の時代とは違ってて、素直な部分もすごくあると思うんですよ。

そうですね。「平成の男」もそうですけど、「Love Letter」って楽曲とかも、現代の、それこそ僕と同世代の人たちが、たぶんこういうもどかしさのなかで生きて、もがいたり戦っていたりするんだろうなというような世界観の楽曲にしたところもあります。ただ僕はたぶん職業的にもライフスタイル的にも浮世離れしてると思うんで(笑)、そこまでこう真意を伝えるのは難しいかもしれないですけど。

-いやいや、リアルですよ? 昔みたいにガンガンいく男性像ではないですし、洗練されてはいますけど。昔に比べるとコンプライアンスの問題があったりして大変! っていう現代の男性像だと思います。

エネルギーみたいなものは、昔も今も、男性、女性にかかわらず、変わらず持ってると思うんですね。ただその放出の仕方が変わってきて、単純に民度が上がっただけだと考えているんです。で、その道徳観がいい意味で時代が変わるごとに変化していってる。だからエネルギー量とかモチベーションとか、同世代でももちろん熱い人はいっぱいいるし、ただその放出の仕方がより道徳的になってきたって感覚はあるかもしれないですね。

-大人っぽい音像ですが、今20代後半から30代前半あたりの男女にはしっくりくると思います。そして長く第一線で活躍されているクリエイター、ミッキー吉野さんや星 勝さん、原田真二さんや井上 鑑さん、瀬尾一三さんとの実作業はいかがでしたか?

もちろん勉強になったし、自分の課題も見つかったし、逆に自信に繋がることもあったし、様々な意味ですごく意義のあることでした。有意義な時間が過ごせましたね。レコーディングに関してもアレンジの手法や音楽的なセンスに関しても、教わって感謝することがいっぱいあったし、技術的な意味でも現場ですごく勉強になることもあったし。

-課題はなんでしたか?

言葉にしづらいですけど、単純にヴォーカルをより引き立てるようなアレンジメントについて、"あ、こういうやり方もあるか"って、自分はその域にはまだまだ達せてないなと思うところが節々であったり、逆に"あ、ここは俺の方が長けてるな"と思うこともあったりっていう感じですかね。

-なるほど。今作は竜人さんが歌うからこその面白みもありますね。玉置浩二さんとか井上陽水さんが歌うのとまた違うわけじゃないですか。その面白さがあるというか。

昭和から平成初期にかけてのシンガーたち、松崎しげるさんとか布施 明さんとか、ああいうものすごい歌唱力で圧倒するみたいなものを僕がやっても、やっぱりあんまり面白くないし、ただのパロディになっちゃうので意味がないんです。逆に歌唱に関しては、今の僕があまり飾らず、そのまま歌う方がすごく意義のある作品になるんじゃないなというのは思っていたので、ニュートラルに歌うように意識していましたね。パロディになるようなことは避けなければいけないと考えてました。