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INTERVIEW

Japanese

anzu

2019年03月号掲載

anzu

Interviewer:石角 友香

anzuという女性シンガー・ソングライターのソロ・プロジェクトによるアルバム『未来展望』が、昨年12月のリリース以降、じわじわ注目を集めている。彼女のアコースティック・ギターのサウンドを軸に、ピアノとドラムが有機的に交わり、時にはそのオーガニックなニュアンスを微妙に変位させるエレクトロなサウンドや環境音が加わり、ポップ且つエッジのある世界観を作り出している。加えて、ジャケットのアートワークや、細かい手作業によるストップ・モーション・アニメのミュージック・ビデオも本人が制作。Twitterに時々アップされる漫画にはユーモラスな視点も。あらゆる創作を楽しむanzuのスタンスをひもとく。


目の前にいるお客さんの反応で原点に立ち返って、音楽はもちろん絵やMVとかを自分で箱庭的に作っていくのが一番いいのかなって


-12月にリリースした2ndミニ・アルバム『未来展望』の評判が広がっている実感はありますか?

そうですね。1作目(2017年リリースの1stミニ・アルバム『Northern Dancer』)は内向的な作品だったので、その反動で外に開けた少しポップなものを作りたいなと思って始まったのがこの作品でした。なので、こちらの作品の方がライヴでも楽しんでもらえるし、音源も"いい"って言ってもらえることが徐々に多くなってきたという実感はあります。

-以前はバンド(シグナルスプーンというふたり組として)活動もされていましたが、そもそも音楽活動はいつから始められたのでしょうか?

中学生のときにメジャー・レーベルの新人育成期間でいろんなプレゼンに出していただいたりしていました。そういうところを経て、高校卒業と同時に事務所が決まって、CDは出させてもらってたんですけど、メジャーという形にはならなくて。いろいろとやらせていただきながらも表立ったいい形にはできなかったんです。で、そこから離れて今度は自分の好きなように始めたいなと思って、バンドをやったりして。今回は、anzuというソロ・プロジェクトの名前に変えて、ひとつひとつチームでものづくりをしていくというスタンスで始めました。

-"Player"誌にアコースティック・ギターとともに取り上げられていましたね。打ち込みの音楽というと鍵盤にいく人もいると思うんですけど、anzuさんの場合はアコギだったと。

そうですね。ソロ・プロジェクトを始めた当初はDTMであったり鍵盤に力を入れていたころもあったのですが、anzuとしての音楽性が固まっていくうちに、やはりもともと演奏してきたアコースティック・ギターが大切なキーだと思って。そこからはよりアコギのフレーズであったり響きを重視した楽曲にしていきました。

-anzuさんは、ジャケットやMVもご自分で作っていますが、DIYで世界観をまとめるというか、そういうスタンスは根本にあるんですか?

活動を始めて間もないころは、いろいろと言ってくれる大人がいたり、育成の環境もあったりして、"売れるもの"とか"今はこういうものがいいんじゃないか"とか、そういうことに目を向けることが多かったんです。けど、いろんな活動を経て、例えばSNSで繋がってくれてる人とか、ライヴを観に来てくれて"いいね"と言ってくれるお客さんとか、実際に反応をくれる人たちに対して作品を届けた方がシンプルに楽しんでもらえるんじゃないか? って、原点に立ち返ったというか。なので、そういう反応が多かったものをできるだけ出していったり、音楽だけじゃなくてジャケットを作ったり、いろんなものを描いたりして楽しんでもらうっていうところにどんどん戻っていったんです。自分で箱庭的に作っていくっていう方法が一番いいのかな、って今は思ってますね。

-Twitterに投稿している漫画は緩い笑いがいいですね。

そういうのもたまに上げるとみんなが面白がってくれるので、SNSも日々見てて楽しいものの方がいいから、ちょっとした楽しみを届けられたらいいなと思って描いてます。そういうことも含めて、ようやく自分とanzuという人と聴いてくれる方とのバランスがいい感じになっていきそうだなという気がしてます。今回はanzuのソロ・ユニットということで、比較的自由で好きにやらせてもらえることが多かったので、"こうしなきゃ、ああしなきゃ"っていう感覚がいったん緩まったことで、楽しいものを見つけられた気がします。

-anzuさんには弾き語りという軸になるものがあると思うんですが、今回の『未来展望』のサウンド・プロダクションはどうやって決めていったんですか?

共同で作ってくれているアレンジャーの豊田(泰孝)さんという方がいるのですが、私がデモのような軽く打ち込みを入れたものをその方に投げて、キャッチボールしながら構築していきました。曲の尺や歌詞がしっかりできてから"これをアレンジしてください"と渡すというよりは、早い段階からキャッチボールを始めて、徐々に作っていくという曲の作り方をしています。前作も同じプロデューサーの方と制作したんですけど、今作は前作よりも少し明るく作りたいなというところで、"J-POPのイメージはあまりしっくりこない"とか、"フレンチ・ポップに近いものだったらしっくりくるな、楽しそうだな"とか、そういう意見を投げながらひとつひとつ作っていくという感じでした。

-豊田さんはJ-POPの仕事も多い方ですが(※音楽プロデューサー 亀田誠治の事務所に所属し、JUJU、いきものがかり、平井 堅などの作品にマニピュレーターとして参加)、その中でもそれぞれのアーティストのオルタナティヴな面を引き出すのが上手な方なのかなと。

そうですね。お仕事ではJ-POPもやってるんですけど、オルタナティヴや、少しマイナーな音楽で好きな部分が共通していたので、強く伝えなくても"そこだよね"っていうポイントがわかり合える方で、とてもマッチしているなと思ってます。

-エヴァーグリーンな曲調と音像で、THE BEATLESやCARPENTERS、先ほどおっしゃっていたフランスの映画音楽とか、あとFEISTなどのイメージがありました。

嬉しいです。

-1曲ごとに完結させていくタイプですか? それとも集まったところでテーマを決めるのでしょうか?

今作は全体的なバランス、1枚としてどうかっていうところを重視していて。前作は一曲一曲で完結させて、いざ集めてみたらすごいカロリーが高いというか(笑)、やりたいことは入れられたんですけど、1枚の作品としては結構ボリュームのあるものだったんですね。今回はアルバム全部を通して、バリエーションもあってさらっと聴けるものにしたいと思ったので、全体のバランスとストーリーを見て、タイトルも関連づけたもので作りました。

-でも、曲の主人公は必ずしも同じキャラクターではないような気がします。

そうですね。それはそれぞれイメージがあって。絵をモチーフにした曲もあれば、あえて観たことない映画の予告を観て、その人みたいにしようとか、いろんな主人公を立てました。自分じゃない主人公にいてもらうことによって、自分の感情の部分が素直に出せたりすることが多いので、そういうふうにストーリーを作っていきますね。