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INTERVIEW

Japanese

有安杏果

2017年10月号掲載

有安杏果

Interviewer:吉羽 さおり

-アルバムの全体的な音の感触としては、ピアノを使われている曲が多いですよね。そういう音的な面でのこだわりはありましたか。

特にピアノでいくぞって思ったわけではなかったんですけど、単純にピアノのジャジーなロックや、ピアノ・サウンドが好きなんです。普段聴く音楽も──ギターの曲も聴くんですけど、気づいたらピアノが多いです。

-そのピアノの音色とヴォーカルがいいハーモニーを奏でているのが「小さな勇気」で。こちらもまた、胸に響く曲になりましたね。

ちょうどその前の「遠吠え」までが、横アリをする前に作った曲なんですよね。その横アリが終わって、大分でもう1回ライヴ(2016年11月にB-Con Plazaで開催した"ココロノセンリツ ~Feel a heartbeat~ Vol.0.5")をやらせてもらうことになりまして。横アリまではとにかくがむしゃらに、初めて曲を書くし、書き溜めていたノートから言葉を使いながら、自分の思っていることに共感してもらえたらいいなっていう気持ちで書いていたんです。でも横アリが終わってからは、やっぱりそれだけでは自己満足だなと思って。自分がやっている意味を考えたときに、誰かひとりでもいいから、勇気づけられたらいいなと思ったんです。大分でのライヴは、そういう自分の想いが強かったのもあって、自分のためじゃなく、誰かのために曲を書きたいなって思って。それで初めて作ったのが「小さな勇気」です。就活やお仕事や恋愛、失恋とか、家族と喧嘩をしたりとか、震災や災害だったり......いろんなことで苦しんだり、悩んだりしている人の背中を、少しでも押せるような曲を書けたらいいなと思って、初めて書いた曲でした。

-アレンジが繊細で美しい仕上がりですが、どんなイメージを伝えたんですか。

アレンジャーの河野(伸)さんと一緒に、コード感はこれでいい? とか綿密に打ち合わせをさせてもらいながら作っていきました。周りから、"何でそこにそんなにこだわってるの?"って言われたのが冒頭の部分で。イントロの前に、ピアノの単音で始まるんですけど、その音は最初なかったんです。でもこの曲は、最初はひとりしかいないけど、少しずつみんなの声や力が集まって手を繋ぐようなイメージで曲を作っていたので、曲自身も、そういう世界観で始められたらなというのがあったんです。ピアノは触ったこともないし、よくわからないけれど、レコーディング当日、河野さんに"ここらへんの音を、ポンポンって弾いてほしいです"ってお願いして(笑)。ちょっとした間があるパターンとか、その場で様々なパターンを試しながら、これだねって決めたこだわりポイントでした。

-後半の「色えんぴつ」は、アンビエントで空間的なアレンジが印象的です。雰囲気のある曲に仕上がりましたが、どんなイメージを持っていた曲だったのでしょうか。

「色えんぴつ」と「ヒカリの声」が今年に入って作った曲で、小谷さんの「裸」という曲は、自分の曲の中でもいいスパイスになっているなというのがあったので、自分でもまた違ったアプローチで、そういう世界観を持った曲を作りたいなと思っていたんです。中学生のころから書き溜めていた作詞ノートに、"色えんぴつは大事な色からなくなっちゃう"というメモがずっと残っていて。"色えんぴつ"というタイトルでいつか曲を書きたいというのは、去年から思っていたこともあり、じゃあ作ってみようと思った曲でした。そこから、アレンジャーさんは誰にしようかと探していたとき、たまたまYouTubeで大森靖子さんが歌っているポッキーのCMソングを聞いて(ラジオCM ポッキーを食べながらシリーズ"メッセージ"篇)、その世界観がどストライクで。"なんだこれは! この感じがいい"と思って、誰がやっているんだろうって調べたらTokyo Recordingsで。それでプロデューサーさんに、Tokyo Recordingsの小島裕規さんにお願いしたいですって言ったんです。

-自分でアレンジャーさんを見つけたんですね。

そうですね。プロデューサーさんがこの人どう? って、私が言ったイメージに合う方を見つけてきてくれることもあるし、「色えんぴつ」のように自分から今回はこの人がいいってお願いしてみることもあるしという感じでした。

-そしてラストが、「ヒカリの声」という強い曲で、晴れやかにポジティヴに終わるのが、アルバムのストーリー性としてもとてもいいなと思いました。この作品とともに、またソロでのライヴや活動も精力的にしていくのですか。

もともと昨年、横アリでソロ・コンサートをやらせてもらったときは、もしかしたら、これが1回だけかもしれないし、一生で最後かもしれないという意気込みでいたので、そこからまさか1年後の6~7月に、東名阪ツアー("ココロノセンリツ ~Feel a heartbeat~ Vol.1")をやらせてもらえるとは思っていなかったんです。この夏のツアーは、本当に自分としても大きな財産になったなと思っているし。10月には、仙台サンプラザホールと日本武道館でやらせてもらうことも決まって、もう今は頭がそのことでいっぱいいっぱいで。横アリでやって、武道館でもやらせてもらえる人生なんて、本当に、"大丈夫私!? これから人生どん底しか待ってないんじゃない?"っていうくらい(笑)、幸せすぎて、怖くなるんですけど。今はその幸せを噛み締めながら、最後まで妥協せずにできることをいっぱい詰め込んで、仙台と武道館のライヴでみんなに届けられたらなと思っています。