Japanese
THE君に話すよ
2017年08月号掲載
Member:片野 メランコリー(Vo/Gt) 小野くん(Ba/Cho) よてろう(Dr/Cho)
Interviewer:岡本 貴之
7月26日に1stフル・アルバム『この耳鳴りに出会うまでのすべて』をリリースするロック・バンド"THE君に話すよ"。その楽曲の軸になっているのは、サンボマスターやTHE BLUE HEARTS、忌野清志郎など、日本語ロックの系譜を感じさせる、繊細で叙情的なニュアンスとリズムを持った言葉たちだ。作詞作曲を手掛ける片野メランコリー(Vo/Gt)を中心に、彼らはどのような思いで音楽を作り出しているのだろう。メンバーの3人に話を訊いた。
-"THE君に話すよ"ってすごく個性的なバンド名ですよね。2011年に片野さんを中心に結成したそうですが。
片野:具体的に活動を始めたのは、2012年の1月くらいからですね。それからメンバーが替わりつつ、最初からずっとこのバンド名でやってます。サンボマスターさんがすごく好きで中高時代にどっぷりハマっていたんですけど、2ndアルバム『サンボマスターは君に語りかける』から少し拝借してつけました。それと、THE BLUE HEARTSも好きなので、"THE"はそこから付けたんです。
-今はサポート・ギターのバシリサさんを含めて4人で活動しているようですが、現体制になったのはどんな経緯なんですか。
片野:最初期のメンバーは就活で辞めてしまって、僕はひとりでバンド活動をしていたんです。そのときに出会ったのが、友達の友達だったよてろうで。小野君は高校時代からずっと先輩後輩の仲で、他のバンドをやっていたところをサポートで入ってもらって、正式メンバーになりました。
-よてろうさんと小野さんは、どんなところに魅力を感じてバンドに加わろうと思ったんですか?
小野:片野メランコリーは高校時代から面白いことばかりしてたので、一緒にいたら楽しいかなって。音楽の趣味も合いますし。
よてろう:僕は最初に、友達経由で繋いでもらって、そのときに「府中本町ノスタルジック」っていう初期の曲を聴いて。それがすごく良い曲だったので一緒にやろうと思いました。
片野:へぇ~そうだったんだ(笑)。
-片野さんご自身は、最初にどんな音楽をやりたいと思って始めたんでしょうか。
片野:"こういう音楽がしたくてバンドを始めた"というよりは"こういう言葉を書きたくて音楽をやっている"という方が先のような気がします。僕が今まで一番音楽に可能性、高鳴りを感じたものはすべて言葉が先だったので、言葉はすごく大切にしています。
-それは"この耳鳴りに出会うまでのすべて"というタイトルにも象徴されていますね。今回はどんな1枚にしようと思いましたか。
片野:そもそも、コンセプトからではないんですよね。自分の中の集大成というのは、節目節目で必要なものだと思っていて。その時点での一番最高のものを作りたいというところから始まったものです。曲を作ってレコーディングをしてっていう流れで制作していました。もともとシングルで発売した曲も入っていますし、"これいいじゃん!"っていうのを録って、というのを繰り返していって。
よてろう:そうやって溜めてきたものを一気に出した感じですね。
-曲は常に作っているんですか? やっぱり言葉が先?
片野:言葉が先の方が多いですね。5年ぐらい毎日ずっと日記を書いているんですよ。そこから話を抜き出したりすることもあります。
小野:読んでたら気が狂いそうになるっていうか、"この暗闇はいつ終わるんだ"っていう(笑)。
-あ、日記を公開しているんですか?
片野:いや、勝手に読まれたんですよ(笑)。自分のコンプレックスや、人や物に対して思うことを何も考えずにバーッと書くんですけど、言ってしまえば歌の歌詞も日記といえば日記だし、小説でもあるし映画といえば映画だし。まず言葉をズラーッと書いて、音に合わせて言葉を削ったり増やしたりというのが最近自分の中では多いですね。リズムと言葉の合致が一番大事だと思うので、リズムが合わなければ言葉を全部捨てて最初から考え直すこともあります。でも、メッセージ性はブレないですね。"これを伝えたい"というものが一番先にあって、そこに付随する言葉があるんですけど、それとリズムの兼ね合いというか。伝えたいことは1曲ずつ違うんですけど、そこは絶対ブレないです。
-最初から"今日も上手くは生きられなかった"(「この街にはあまり行くところがない」)っていう歌詞がまさに日記のようですよね。でも、これは曲になっているわけじゃないですか? 日記は見られたくないけど、曲は聴いてほしいわけですよね。日記から歌詞になる区切りって片野さんの中にはあるんですか。
片野:結局、自分の日記ではあるんですけど、自分自身が平凡だと思っているので、そもそも自分の考えとか言葉って、別に俺だけに当てはまることじゃないのかなっていうのは常々思っていて。自分のことを書いている日記ですけど、他の人にも当てはまることがあるんじゃないかなって。それが曲になっている感じです。
-それをバンドで形にするうえで、片野さんがメンバーに対して求めていることってどんなことですか。
片野:サウンドはもちろんのこと、人間性がすごく大事だと思っていて。バンドのグルーヴって、人間性が合うか合わないかが重要だと思うんですよ。"こいつのサウンドはすごく好き"みたいなことで集まって結局喧嘩別れしてしまった経験があって。今はサポート・メンバーを含めて、一番グルーヴがすごいと思っています。
-それは人として波長が合うっていうこと?
片野:人間としての波長が合うっていうのは第一なんですけど、一番それを感じるのがライヴ中で。演奏中にメンバーとよく目が合うので。しっかり表現できているときは、グルーヴが高まっている、波長があっている状態なのかなって思います。
よてろう:たしかに、波長はすごく合うと思っています。ライヴ中のコミュニケーションが増えたと思うし、無理に合わせなくてもちゃんと合わせられるし、みんなが伸び伸びできていますね。
小野:片野の考えていることをある程度読み取れる人間じゃないとやっていけない気がする(笑)。
片野:あぁ~たしかに。感覚的だなって思う。"ここは宇宙のイメージで"とか(笑)。
小野:"あぁ、宇宙の感じね"って。
片野:それでできるんですよ(笑)。
小野:ただ、あまりにも注文が抽象的すぎて。"銀河っぽく"とか言われてもわからないときもありますね(笑)。
片野:ははははは。でも、それで返ってくるものは最高なので。信頼してます、すごく。
-先ほど"これを伝えたい"というものがある、とおっしゃいましたけど、伝えたい相手というのは曲ごとに明確にあるんですか?
片野:どの曲にも必ず、モデルになる人が存在しています。伝えたい人というよりは、その人に対して思っていることとか、その人がこんな顔をしていた、とか。自分が人に出会って感じたこと、そのときの空気感を言葉にするっていうのが一番の自分の役目だと思っているので。めちゃくちゃつらいことなんかも経験して、それも全部言葉にしていくのが役目というか。
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