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INTERVIEW

Japanese

ЯeaL

2017年05月号掲載

ЯeaL

Member:Ryoko(Vo/Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

-ちゃんと自分が映ってるからこその、恥ずかしさですね。そしてアルバムのラストが「スタートライン」(Track.11)となりました。この曲は1stシングル『秒速エモーション』(2016年3月リリース)に収録されたカップリング曲でもありますが、あえてこの曲を最後にというのはどんな思いからだったのでしょう。

デビュー前に私たち大きなケンカをして、でもそれで大人になれたと思ってこの曲を書いたんです。デビューをして、ワンマン・ライヴをして、きっと何か変わるだろうという気持ちで書いたんですけど、何も変わらなかったんですよね。自分の心境も、周りの環境も。だから、シングル『秒速エモーション』でのツアーでは、「スタートライン」もやっていたんですけど、なんだか自分たちの等身大じゃない気がして、そのあとこの曲をやらなくなっていたんです。でも、「カゲロウ」を経て、心に余裕が出てきた今だからこそ、この曲に自分たちが追いついた感覚があるんです。デビューから1年かけていろいろ経験してきたからこそ、等身大で歌えるようになったなと思って。他の曲は、書いたときの気持ちとあまり変わっていないんですけど、この曲だけは捉え方が変わったし。『19.』という今までのЯeaLが詰まった作品の中で、次への"スタートライン"になるかなと思った。「ナンセンス」と「スタートライン」という2曲があるからこそ、次への可能性や期待が見せられるかなと思いますね。

-この「スタートライン」が、言ってみれば一番バンドらしい曲で。荒削りな曲でもあるんですよね。どちらかというと、これまではRyokoさんの視点からの世界だったり、感情が描かれることが多かったですが、この曲は4人の感じ、凸凹なりに突っ走っている感じが出ている曲ですね。最後に持ってくることで、ちゃんと、ここから次にという意味合いが強くなっています。

第1章のピリオドが打てたかなと思う。毎回シングルでも、"このシングルが最高傑作です、もう次作書けません"というくらいのテンションで(笑)。今回も、"このアルバム売れないと、私バンドやめます"くらいの意気込みでやっていたんです。アレンジャーさんとレコーディングしていても、"最高傑作なので、マジでこれでバンドやめます"ってくらいの勢いやったし、これ以上の作品は書けないなと思いながらやっていたんですけど。アルバムができて改めて聴いたときに、"あぁ、私まだまだ大丈夫やな"って思えたんです。まだまだやりたいことがあるし、まだまだ伝えたいことがあって。

-いい手応えですね。

「ナンセンス」みたいな曲が書けたことで、絶対にポップでキャッチーで詰め詰めの曲じゃないといけないという概念を、自分で壊せたというか。歌詞も、言い方悪いですけど、インディーズ感とメジャー感があるとして、メジャー感のあるものに寄せがちやったんです。でもそうじゃなくて、ちゃんと自分の伝えたい言葉で伝えられて。ЯeaLの5年間が、いい意味でこのアルバムで崩せたかなと思うんです。これまでの終わりであり新たな始まりとして、今、いろんなものが書きたいなと思っていて。もう次のアルバムできるんじゃないかくらいの、曲数を書いていたりするんですよ(笑)。

-それは、気が早すぎますけど(笑)。

今までは、"これで終わり! 死ぬ!"くらいだったんですけど。これを踏まえて、さらに高いところにいけそうというか。ちゃんと地が固まったなって思う。いつでもここに戻ってこれる1枚ができたんじゃないかなって思います。

-ここから、どんなところにでも行けそうですからね。改めてЯeaLって、女の子の4人のバンドとしてはあまりいないタイプで。泥臭いことを、超ポップにやってしまうし(笑)。でも、汗水鼻水もちゃんと感じるっていうか。

はははは(笑)。間違いないと思います。私はカリスマ的なアーティストにはなれないなって思っているんです。アーティストである前に人間っていうか。私自身、アーティストって憧れの存在やったんですけど、それって憧れであって、自分のつらいときに寄り添ってくれる存在ではなかったんです。

-遠すぎてしまう?

そうなんです。私はみんなのそばにいたいって思うし、人間やからこそ、みんなの気持ちをリアルにわかってあげられるんじゃないかって。私はバンドで音楽をやっているけれど、学校でも仕事でも同じで、キラキラとした人の裏には苦労があるわけで。キラキラしているアーティストも私は好きですけど、私自身はすべて曝け出して、苦しいことも、つらいこともあるけど、こうやって進んでいることが伝われば、みんなも頑張ろうと思えるんじゃないかなっていう。それで、隠すことをやめました。昔は、あまり苦労を人に見せなかったんです。でも友達同士でも、相手のことを救ってあげたいと思ったら、まずは自分が心を開かないとわかり合えないですよね。バンドもそうやなって思って。だから歌詞も嘘偽りなく書くようになったし、ライヴのMCもそのときに思ったことを、たとえそれが語弊を生んだとしても、"自分たちはこうだ"って伝えるようになったし。それで誰かが感動してくれて、好きだと言ってくれるなら、その人のために何かをしたいなって気持ちにもなれたというか。だからこそ、アーティストというよりも人間としてこのバンドは成長していきたいなって思いますね。

-近い存在としては、メンバーに対しては最初から心を開いていたんですか。

それこそほんま最近ですね。完璧主義者なので、できてないところを人に見せたくないし、つらいとかも言いたくなくて。でも、それでメンバーとケンカしたり、反発したりとか、何も伝わってなかったというのがあったんです。ちゃんと言葉にしないと、伝わらないことがあるなって。漠然と、メンバーはそばにおるからわかってくれてるだろうとか、改めて口に出すのはこっ恥ずかしいとかもあると思うんですけど。それだと何も始まらないなって経験をしたからこそ、メンバーにも少しずつではあるんですけど、ちゃんと言うようにもなったし。プライベートはもう少し時間がかかりそうですけどね(笑)。

-人にあまり頼れない感じだ。

そうなんです。でもそれって、相手を悲しい気持ちにさせるんやなって。

-はい、頼られない寂しさがあると思う。

頼らないことが正義やと思っていたんです。でも、人の気持ちを考えられるようになったのも、デビューしてから変わったことだと思いますね。いろんな人に感謝できるようになったし。メンバーも、この私の性格をわかったうえで、"好きにやっていいよ"って言ってくれるようになって。"RyokoはRyokoのままでいいし、それがЯeaLの未来にも関わってくるから。私たちが大人になるし、強くなるから"って言ってくれたんですよね。それがすごく嬉しくて。ぶつかっていろいろ言ってきて、バンドになったなって思います。