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INTERVIEW

Japanese

沼倉愛美

2017年02月号掲載

沼倉愛美

Interviewer:吉羽 さおり

-どちらが沼倉さんのヴォーカルの中心なんだろうっていうくらい。

それは、自分も探している途中なんです。声の仕事をしてきて、これまで歌はたくさん歌ってきたんですけど、自分、沼倉愛美としてはまったく歌ってこなくて。私じゃない誰かで歌ってきたんです。だから、自分で歌うことは向いていないと思っていたんですね。今回は私自身の2枚目の作品で、2枚目も「Climber's High!」と「星の降る町」は特殊な立ち位置で、作品の挿入歌でもあるので。果たしてこれは私の曲か? って思ったり、悩んだりもしましたし。なんですけど、「もっと一緒」はそういうのもなく、最後に作ってもらった曲で。バレンタインも近いのでかわいらしい曲にしていただいたんですけど、何も考えずにわりと素直に歌った曲ではあるので、こっちも私だとは思います(笑)。

-そうなんですね。そしてもう1曲の「星の降る町」は、同じくHEDGEHOGSの曲でもあり、バラード調且つ熱い曲でもありますね。

「Climber's High!」と同じHEDGEHOGSの歌なので、こちらもわりと力強く歌い上げてほしいとオーダーはありました。結果、これもすごく希望のある曲になったなと思いましたね。一見、寂しげな雰囲気に聞こえるんですけど、最後はちゃんと前向きに終わる曲なので。今の時期にもぴったりの曲ですしね。

-先ほど、声の仕事をしてきて、自分でない誰かで歌うことが多かったということでしたが、もともと歌手、シンガーになるというのは志していたんですか。

憧れはたしかにありましたね。夢見てこの世界に入ってしばらくは、きっと人気者になったらそういうこともできるのかなと思っていたんですけど。だんだんと演じることに没頭し始めて、自分じゃない人を演じることになったら、そっちが楽しくなったんです。それでさっき言ったように、自分を表現することがよくわからないって思うようになって、自分で歌うことは向いてないって思って。ここ何年かは、興味はあったしできたら素敵だなともずっと思っていたんですけど、縁はないのかなと思っていたところが正直ありました。

-そこに自分が演じるものに歌がついてきて、だんだんと自分の歌を歌うことへの興味も出てきたんですか。

私はデビューが歌モノだったこともあって、歌うこととお仕事は密接な関係にあったんです。でもだんだん、演じて歌うことと自分で歌うことがこんなに違うものなんだ、というのを感じてきて、次第にまったく違うものだと思えてきたんです。ただ周りは、"やらないの?"とか"やればいいじゃない"って言ってくれて。そういうふうに思ってもらえる自分と、自分で向いてないと思う自分は、本当はどっちなのかなとなったときに、試してみようかなとなったのが、最初にこの活動を始めたきっかけだったんです。


"ここにいていいんだ"と認めてもらえたことが、私がやりがいを感じるとても大きな要素なのかな


-自分自身でシンガーとしての何か、大事にするもので掴んでいることはありますか。

1枚目の『叫べ』が出て、リリース・イベントがあって。タイアップはありましたけど、キャラクターがついていない、私だけしかいないイベントをやったんです。そこに来てくださる人がこれだけいるんだと目の当たりにしたときに、ぼんやりしていた"自分で歌う理由"みたいなものが、ちょっとだけ形になって、少し自信が湧いてきました。イベントでも、みなさんの前でそう言わせてもらったんですけど。だからやっぱり、聴いてくれる人や、応援してくれる人をじかに感じられるのは、自分の中で実りのあることだなと思いました。それは、これを始めないと見られなかった景色と言いますか、感じられなかった感触だったと思うので。

-そこに感動というか、喜びがあったんですか。

認めてもらえた、みたいな感じだと思います。"あ、やっていていいんだ"とか、"ここにいていいんだ"とか。それがたぶん、声の仕事もそうですけど、私がやりがいを感じるとても大きな要素なのかなと思って。そういう場があると、すごくやる気になりますね(笑)。

-そうなんですね。今回、「Climber's High」と「星の降る町」はバンド・サウンドとなっていますが、演奏しているのはロック・ファンが思わず湧き上がるメンバーでもあるんですよね。ギターには、編曲も手掛けたMY FIRST STORYのSHOさん、ベースはT$UYO$HIさん(The BONEZ/Pay money To my Pain)、ドラムに高橋宏貴さん(ELLEGARDEN/THE PREDATORS)、そしてピアノに劇伴も手掛ける伊賀拓郎さんと、錚々たるメンバーです。

贅沢だなって思いますね。みなさんにお会いしたのは、ミュージック・ビデオの撮影のときだったんです。そのときはお客さんにも集まっていただいて撮影したんですけど。お客さんに入っていただく前に、リハみたいな感じで軽く演奏するのを聴いていると、やっぱり本物じゃないですか(笑)。レコーディングでのプレイヤーとしてももちろんですけど、パフォーマンスに関しても右に出る者がいない人たちなので、そのオーラに持ち上げてもらって(笑)、私もちょっとだけ伝説感を出せたかな、みたいな。みんなの目をごまかせられたかなと(笑)。でも、実際にみなさんの演奏している姿を見て、こういうふうに見せるんだなとか、本物のパフォーマンスというものを横目で見ながらその場でも学ばせてもらいました。お客さんにも最初はMV撮影とは知らせずに、とある撮影ということで現場に来てもらったんです。それが、このバンドを前にしてみなさん興奮していて。そのお客さんの出す声にもアゲてもらって、MVはすごくいい映像になりました。

-ライヴの臨場感を大事にした撮影だったんですね。

音響や照明も、実際にライヴで仕事をするスタッフさんに来てもらって、カメラも4台くらいで同時に撮ってもらって。だから、「Climber's High!」の大事な要素であるライヴ感を、映像でもきちんと取り入れられたなと思います。