Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Droog

2016年08月号掲載

Droog

Member:カタヤマヒロキ(Vo) 荒金 祐太朗(Gt)

Interviewer:岡本 貴之

-「終点」は"蝶のように舞う"、"蜂のように刺す"という、先日亡くなったMuhammad Aliさんの名ゼリフが出てきますね。この曲にはどんな思いがありますか?

荒金:もともと、この『命題』の曲は、去年のクリスマス、自主レーベルを発表したときに出した新しいアー写を見ながら昔の自分たちのことを思い出して、これから僕らはどうしていこうというのを考えつつ、そういうイメージで全部作っていったんです。昔やりたかったけどできなかったものが自分の中に溜まっていて、それをクリアにしないと次にいけないなと思って。そういう昔の怨念を成仏しようということで(笑)、全部曲にしていったんですよ。「終点」は順番的には真ん中くらいにできた曲なんですけど、やっと雰囲気とか自分が考えてた先のこととか思い出とか、形じゃないものを曲として表現できたなと思っているんです。そういう新しいエッセンスをやっと曲に込められた、ひとつ進化したなという曲です。

-ギター・プレイとしてはいかがでしたか? この曲のイントロは何を使った音なんでしょうか。

荒金:あぁ、あれはコーラスをすごくエグくかけているんです。以前は、ギターを練習して覚えたテクニックを使いたいという気持ちがあったんですけど、今回はそういうのが一切ないです。自分で鳴らした音をやっただけというか、簡単なことしかしていないし、ギタリストとして一歩上に行こうという思考はまったくないです、今回に関しては(笑)。

-潔く、自分を出した?

荒金:そうです、今自分にある能力だけで。とりあえずもう時間もないしという(笑)。手癖で弾いているわけではないんですけど、テクニックじゃなくて音で変化をつけた感じですね。

-基本的には荒金さんが曲を書いて、カタヤマさんが詞を書くというのは昔から一緒ですか?

カタヤマ:それは変わらないですね。詞は書き溜めているんですけど、その曲に一番合った言葉を選んでそこから書きます。"終点"というタイトルが出たときは、"おっ! やった!"と思いました。このアルバムは、僕たちが18歳で出した1stミニ・アルバム『Droog』(2010年リリース)と対になっている部分があって。だから今作を"1stアルバム"って言っているというのもあるんです。『Droog』の1曲目「いざさらば 書を捨てよ」では"バイバイ"って言ってるんですけど("いざさらば書を捨てよ 今こそが別れの時だ")、「終点」では"最後まで一緒に行こうぜ"("終点まで道づれさ")って言ってるんですよ。それが、18歳から今24歳になった心境の変化なのかなって。今作はそういう対になる部分がいっぱいあるんですよ。

-『Droog』では騒乱の中で歌っているような印象ですけど、今作は歌いまわしがかなり違いますよね。そのあたりの変化について教えてもらえますか?

カタヤマ:もともと、叫ぶスタイルのヴォーカルがすごく好きで。最初に好きになったのがSEX PISTOLSで、ヴォーカリストだとNIRVANAのKurt Cobainみたいな、ああやって喉を絞って歌うのがロックだと思ってすごく真似して、そして1stアルバムができたんですけど、何か物足りないなとは思っていたんですよ。いろんなバンドと対バンして、みんないろんな表現の仕方、歌いまわしを持っている中で、俺にはなんでそれがないんだろう、もっと歌えるようになりたいと思ったんですよね。俺の伝えたいことは叫ぶだけじゃ伝わらないと思ったんで、練習してなるべく歌が立つようにしようというのはありました。

-「終点」はコブシが回ってますよね、昭和歌謡的な。

カタヤマ:はい、それは実はTHE YELLOW MONKEYを聴いた影響で。後追いで好きになったんですけど、復活ライヴも観に行きました。

-荒金さんはそういうカタヤマさんの歌い方の変化ってどう感じていますか?

荒金:ずっと一緒にいるので、あんまりわからないんですよね。ちょっとずつ変わっていってると思うんですけど。

カタヤマ:家族の声変わりに気がつかないみたいな感じ(笑)。

-あぁ、なるほど(笑)。実際、声変わりする前から一緒にいるんですもんね。

荒金:ただ、昔のライヴを観ると違うなって思います。でも実感はないんですよね。

-音作りに関しては、これまでと違うものを作ろうという意識はありましたか?

荒金:今まで作ったものも、120パーセント自分たちの好きなことができたかっていうと、そうじゃない作品もたくさんあったんです。最初のアルバムは高校生のときにやっていたものを録っただけなので、自分の中で悔しさがあって。それ以降、自分らしいものが120パーセントできていたのかなっていう思いがずっとあったんですよね。今作を作るとき、テーマとしてあったのが、原点回帰じゃなくて"原点奪還"なんですよね。それは、1stのころに戻りたいということじゃなくて、アイデンティティを確立したいという意味で原点奪還というイメージがあって。今までは誰かになろうとしていたんですけど、今回は"ちゃんとDroogになろう"ってずっと思っていました。

カタヤマ:だから、あえて今までと違うことをしようというのは全然考えてなくて。ただ自分たちが大好きなことを妥協せずにやろう、というのがありました。

-今作には"「生」と「死」"というテーマもあるそうですね。例えばTrack.2「夜明け前」には"きみが望むのならば/事切れたっていい"という歌詞が出てきますが、こうした言葉は意識的に選んでいる?

カタヤマ:いや、意識は全然していなかったんです。全部できあがってミックスが終わったあと、帰りに車の中で聴いていたら"あ、全部「生」と「死」が入ってるな"と思ったんですよ。でもまぁそれは、2年前に母が亡くなったので、自ずとそうなったんだろうなって。

-歌詞を書いて、後々ご自分で気づくことも多いですか。

カタヤマ:ありますね。やっぱり歌詞を書いてる人って、どんなテーマであれ少なからずそのときの心情が出ると思うんですよ。僕の歌詞にはその時々の僕が出ています。